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紙の本
ふたつの世界
2010/02/05 08:45
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:蒼空猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
素敵な表紙に惹かれ、本屋でこの本にひとめぼれをした。
そのよる、こどもと二つの世界を堪能した。
夜の秘密。夜の不思議。夜寝ている間に何が起こるかは誰もしらない。
あなたも遠いむかし、一度はこの本のような想像をしたことがなかっただろうか?
いつもの家。いつもの場所。私達の世界。
けれど、明かりを消したとたん・・・・そこはいつもの場所であり、いつもの場所ではない。私達だけの世界ではなくなる。
カラフルな彩色なのにうるさくなく、細部までこだわり丁寧に描かれた画もとても魅力的。
ティーカップがおっぱいに見立ててあったり、柱時計が大きなあくびをしたり・・・なぜかトイレにうがい薬をいれていたり・・・遊びにあふれた絵本である。ラストのおちもきいていて面白い。
明かりを消す前と消したあと。その変化にページをめくるたびワクワクし、思わずにやりとしてしまう。
主人公の子ねこは、まっくらがこわいのかぎゅっと親の服のすそをつかんであるく。けれど、なにが起こるかきになり、こわいものみたさで振り向いてる姿がなんともこどもらしい。
いまでは大人の多くは夜型になり、電気が消えている時間も長くなくなってしまった。家も一軒屋からマンションへ・・外では何時でもネオンがきらめき、喧騒が聞こえ神秘的な夜にはほど遠い。
それでも子ども達が夜の世界に魅入られるのは、知らない世界を知りたいからだろう。私もこの本の世界なら是非体験したいと思うが、「知らない」からこその楽しさが確かにそこにあるのだ。
本書は2007年に出版された、こばやしゆかこ氏の第一作目であるが、次回作もとても楽しみで期待している。
紙の本
あなたの家の2つの世界
2009/07/22 21:47
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
満月の夜、森の中にお城のような家がある。
中を見てみると、パパとママとふたりのこども。
ねこさん一家の団らんが終わるところ。
みんなであくびをしてるんだ。
明かりを消して、リビングを出ると・・・。
あれ!?
キッチンを点検して、明かりを消すと・・・。
わぉ!?
歯を磨いて、トイレも済ませて、明かりを消すと・・・。
なあんだ、なんにも、おこらない。
と思って、扉を閉めると・・・。
うわ!?
お城のような家だから、ろうかも長いし、
絵がいっぱいかかっているし、よろいまであったりする。
絵もよろいもユーモラスなんだけど、
こどもたちはちょっと怖がっていて、
ママの服をぎゅっとつかんでいたりする。
明かりを消して、振り向くと、なんか見られているような気がする。
おやおや!?
寝室まではまだまだ長い。階段ホールもいわくありげ。
明かりを消して、上に上がると・・・。
あらら!?
最後に残ったこども部屋の明かりと
パパとママの部屋の明かりを消すと・・・。
そうきたか!!
***
本書は、読み聞かせに最適の本である。
最後まで行ったら、子どもたちは、最初に戻りたがるかもしれない。
表紙の絵も裏表紙の絵も象徴的だ。
パパとママと下の子はもう前を向いていて、
次の部屋に入ろうとしているのだが、
いつも上の子だけが振り返っている。
表紙でも上の子は振り返っていて、他のみんなは次を見ているから後姿。
そして、裏表紙には上の子だけの後姿。
そう、あなたのその背中で何かが起こっているんだな。
「あかりを けすと・・・」がサイン。
次のページへのめくり方は、読み手の腕の見せ所。
パッとめくる? そろそろそろっとめくる?
明かりがついている世界と明かりが消えた世界は、
もう、まるで、別物なのである。
ここでは説明できない明かりが消えた世界は、擬音にしてみた。
黙読しているときの私の頭の中はこんな反応だったので・・・。
ふたつをじっくり比べてみるのもおもしろい。
間違い探しじゃないけれど、違いがいくつ見つかるか。
このお話が描いているのは、いつ頃なんだろうか。
もう同じ部屋で家族団らんして、同じテレビ番組を見て、
なんてこともなくなってしまったな。
家族全員が寝入っている時間なんて、短いかもね。
それでも、明かりが完全に消えている時間は、あなたの家にもあるはずだ。
そんなとき、昼の住人とは違う夜の住人が
目を覚ましているのかもしれない。
***
本書は、著者・こばやしゆかこ氏の最初の絵本である。
著者には、マルチメディアDAISY図書の
『蜘蛛の糸』と『賢者の贈りもの』の絵を描いていただいている。
その作品も、怖さと温かさが共存する絵だと感じたことを思い出した。
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