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講演集であるため、同じ内容が延々と繰り返される。内容も過去の文庫本に書かれているものばかりで、旧作を読まれている方には目新しいものはなし。
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繰り返しになるエピソードも毎回表現が違い心地よい。途中の写真にも心奪われます。
僕の育った街、アラスカ。また直ぐにでも行きたい。そんな気持ちにさせてくれる一冊です。
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“浅き川も深く渡れ”これは著者が、小学校の卒業文集に書いた文章である。物事は表面的な部分では推し図れないもっと無限の可能性に満ちているのだろうか…と、勝手に解釈するが、とても小学生とは思えない重さを感じる。読み進めていくと、すでにこの頃からそうした探求心というか冒険心の芽生えが、あったのだろうと思える。
この本はアラスカに魅せられそこの人々と暮らした写真家でエッセイストの著者が1987年から1996年にわたり講演で語った10本を収めたものである。
自然を愛した彼は、古本屋で一冊のアラスカの本を見つける。あるエスキモーの村を空撮にした写真。小さな集落がポツンと真ん中にあり、どうしてこんな荒涼とした大地に人が住んでるのだろうかと、行ってみたくなり、英語で手紙を出しアラスカへ訪れるきっかけになった経緯やカリブーの大移動の様子、厳冬地でのオーロラの撮影、クマの生態、クジラ漁に賭けるエスキモーの人たちの想いなどのエピソードを通して、自然や生へのメッセージが散りばめられている。
小林誠子著『ラストシーン』で、彼の写真展に纏わるエピソードが触れられていたのを思い出した。ある女性が暫く佇んで涙を流していた。こんな光景を写真展で目にしたのは、初めてだと書かれていた。まさに文章が紡ぎだす言葉からそれが頷ける。
「人間にとって大切な自然は二つある。一つは生活圏にある身近な自然。もう一つは、そこには一生行けないかも知れないけれども、いつも気持ちの中にある遠い自然。」だと云う。
1996年8月8日、ロシアのカムチャッカ半島でヒグマに襲われ急逝してしまう。当時の事故については、よく知らないが、本書の中でクマの生態を熟知し、危険性については、充分注意を払っていた事が随所に窺える。自然の状態ではクマは向こうから自然な距離を保っていて、人間がたくさん入り込んでくると、その距離が狂って事故になりやすいと、自然界のルールを守らない危うさを何度も語っていたのである。
巻末の池沢夏樹氏解説に、「一度にたくさん読んではいけない。彼は本当に大事なことしか言わなかった。そして本当に大事なことは何度も言った」と、その忠告に反し一気に読んでしまった。クジラ漁の話しでは、食べるという行為は生き物それぞれの時間と付き合っているのだろう…様々な想いが心に去来する読後感だ。
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アラスカに魅せられ、その自然を、動植物を、人々の暮らしを撮り続けた星野道夫さん。本著は、星野さんの日本での講演10本を集めたもの。自らの体験を、さながら、むかし話やおとぎ話のごとくに語りかけてくれる。
白夜のある夏と、真逆の冬、太陽が人々の暮らしに密接に関わっていること。伝統的なクジラ漁。ザトウクジラのダイナミックな採食行動。カリブーの大群の季節移動。川から溢れんばかりに集まるサケ。それを捕食するクマ。ブルーベリーやクランベリーなどの木の実の収穫。イヌイットのおばさんと一緒に、エスキモーポテトという植物の根を採りに出掛けたときのエピソード、ユーコン川の雪融けならぬ氷融けの場面…。
いずれもが、この目で確かめたいと思わせるような光景ばかりだ。アラスカ=寒い・暗い、というイメージしかなかった僕にはとても興味を惹きつけられる話ばかりだった。思わず想像する。何十メートルもあるような巨体を躍らせるクジラを、大勢のイヌイットたちで引き揚げるシーンを。何十万頭ものカリブーの大群が広大な氷原を駆け抜けていくシーンを。
最も心に残った言葉がある。本著の第7章、星野さんはアラスカに惹かれる理由を、適当な言葉ではないかもしれないがと断ったうえで、こう述べている。「アラスカには、意味のない自然の巨大さがあるから」と。
現代・資本主義の世界を生きる僕たちは、何かと効率であるとか要領であるとか、何をするにも理由や意味を求めがちだ。それは強迫観念といってもよいだろう。そんな僕たちからすれば、クジラやカリブーを仲間たちで狩り、太陽の日周運動に心動かされ、氷と雪に覆われた厳しい環境の中で、しかし、必死に生きているアラスカの人々は、なんと眩しく映って見えることだろう。彼らは自然とともに、「ただ生きている」だけなのである。そこに意味はない。自然
とともに生きることこそがすべてなのである。なんと豊かな暮らしであろうか。
星野道夫さんは、5年ほどアラスカを撮影したら、他の国に行こうと考えていたらしい。しかし、星野さんは亡くなるまで、アラスカに住み続けた。それはきっと、アラスカの自然とともに生きる人々の姿が、日本の都会で生まれ育った星野さんには眩しすぎたからに違いない。
収録されている10本の講演内容には重複が多いのだが、それはむしろ、まだ文字が発明されていなかったはるか昔の人々が、大切なことを子々孫々へと伝えていくための記憶として蓄積されていった、「伝承」の継承として解釈できるし、星野さんは貴重な体験談を伝える「語り部」であったと云えるだろう。
この本を読まれる方においては、1章ずつ、月日の間隔をあけながら、じっくりと読んでいただきたい。星野さんの言葉が、僕らの心や体へ少しずつ、しかし、着実に浸透していくように。
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星野道夫の講演集を1冊にまとめたものなので、同じエピソードが何度も繰り返されるのを読むことになるのだが、不思議なことに、その一つ一つが新鮮。ほんとうに魔法のことば。
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星野道夫氏の講演集。実際に語りかけられているようで、氏が伝えたかったエッセンスが自然に伝わってくる。過去に何冊が著書を読んだこともあるが、正直いまひとつピンとこなかった。星野道夫という人物をまるごと味わうには、推敲を重ねられたきれいな文章より、こちらの方が好ましいように感じた。そして、この本の魅力をさらにひきたてるのが、池澤夏樹によるあとがき。ただの解説ではなく、この本の重要な一部だといってもいいほど素晴らしい。
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星野さんがアラスカに興味を持って旅立った経緯や伝えたいことがよくわかりました。みんながアラスカに行って雄大な自然を体験できる訳ではないけれど、そこに今も存在しているということが大切で守らないといけない"遠い自然"なんです。知り合いの方がアラスカを訪れザトウクジラの大きなブリーチングに出会い、その後日本で忙しく仕事をされているときにふとそれを思い出すそうで、著者はそれが大事だと語っていました。自分が生きている今、広い世界の中でクジラがブリーチングしたり、熊が鮭を捕っていたりしているんだと想像できること、それはとても豊かなことです。自然に限ったことではなく人や国においてもこのように想像できれば互いに尊重し合えていい関係が築ける様な気がしました。
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講演でのお話をまとめたものゆえ、同様のエピソードも多かったが、そのおかげか、記憶に鮮明に残る。自然観、二つの自然、というのと、時間についての見方、過去との繋がりの線軸についてのコメントは、新鮮そのもの。壮大な自然に身をおいて始めて感じる感覚なのだろう。
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アラスカという情熱の対象を持っている星野さんがものすごくうらやましい。
動物写真家だからアラスカの自然が好きなんだと思っていたけど、アラスカに人がいるからこそ魅了されている、という星野さんの言葉がとても印象的だった。
「自分がせわしい都会であわただしい毎日を送っているのと同時に、ベーリング海峡で鯨がブリーチングしている、と想像できる」といった星野さんの友人の言葉も印象的だった。
アラスカの無意味に巨大な自然について、誰に見られることもないカリブーの季節移動や狼が「そこに存在する」と想像することが豊かなんだ、という言葉がとても胸に響いた。
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二つの自然のエピソードが印象に残った。たかだか人間の役に立つかどうかで判断されるのは残念なことだと思う。
自分とはほとんど無関係に世界はあるし、自分が消えても世界は続いていく。
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ご存知のとおり、星野道夫氏はアラスカを本拠に、特に大自然を対象とした印象的な作品を撮り続けた写真家として有名です。とはいえ、当初、星野氏にとっての写真はアラスカで暮らすための手段に過ぎませんでした。
アラスカの人口密度を東京都に当てはめた場合、都下には100人弱しか住んでいない計算になるとか・・・。星野氏がこよなく愛したアラスカ、クジラを追う海もカリブーが旅する陸も、ともかくその自然のスケールは桁違いのようです。
アラスカの自然と人々の暮らしに魅了された星野氏の優しい語り口がとても心地よい講演集です。
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一日一章。かみしめながら、流さないように読むこと。もっとゆっくり読んでもよかったなぁ。
読んでると…まるで雄大な自然の中にいるような不思議な気持ちに。池澤夏樹さんのまえがきとあとがきが素敵です。
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アラスカに魅せられ、逝った星野氏という人の本。講演録であるため、同じ内容が繰り返し収録されている。解説者はゆっくり時間をかけて読めと説くが、むしろ何度も繰り返し読むのが良い。確かにすんなりと通読できてしまうので、その言葉の奥の凄い深みと世界に想いを馳せるのが難しい場合はある。が、繰り返し読むことでそれが少しずつ見える、感じられるようになるような気がする。
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写真家 星野道夫さんの講演をまとめた1冊。
アラスカの自然や文化に対する優しい眼差しが、心を温めます。
このジンワリする気持ちは、星野さんの穏やかな語り口だからこそ。
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講演の内容をまとめたものなので、何度も同じ話が出てきます。それが最初は目障り(?)だったのですが、読み進めるにつれて、いろいろな体験が星野さんの中でも消化されていっているのかなというようなことも感じられました。ゆっくりした気持ちで読む本です。