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写真家・白石ちえこさんのモノクロ写真を元に、三崎さんが紡ぎ出す9つの不思議な世界。見慣れているはずの日常の中に潜む異界が、急に浮き上がってくる驚き。「遊園地の幽霊」、「海に沈んだ町」、「団地船」、「朝の来ない町」、「影」、「ペア」、「橋」、「巣箱」、「ニュータウン」の9編を収録。 イメージのしりとりとでも言うような、写真と文章のコラボレーションだ。最初の数編を読むだけでは、写真が先に撮影されているのか文章が先に出来ていたのかはっきりしない。読み進めるうちに、なるほどこれは写真から触発されたイメージを元に、想像力で紡ぎあげた白日夢のようなものなのだと納得。 海に浮かぶ団地船や、いつまでも午前4時8分の朝の来ない町、そして他人と自分の影が入れ替わってしまう世界などなど。唐突に不条理の世界が目の前に広がるところは、まさに不条理の世界だ。しかし、道先案内人のような写真があるので、生み出される不思議なストーリーへの違和感はあまりない。どことなく終末感を漂わせるようなシュールな筆致が、時に読み手を不安にさせ、あるいは切ない気持ちにさせていく。それにしても白石さんの写真が切り取るシーンの不思議で見事なこと。写真ならではの表現力だと思う。
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何もこんな未曾有の津波災害の時に読まなくても…と思いつつ、読んでしまった。今までの喪失した町シリーズの中で一番しっくりと読める物語だったと思う。静かに哀しくて、夢幻の世界と現実がうまい具合に交叉していて。白石さんの白黒写真も、この三崎さんの描くどこかふわふわした世界を巧みに奥行きのあるものにしてくれたと思うし。ただ・・・せっかくの佳品なのに、あまりにも津波の恐ろしさとリンクしていて、きちんとした評価がなされないような気がする。本当だったら来年度の本屋大賞の候補になってもいいような本のような気がするのだけど、やはり、読んでいて、東北の被災者の皆さんのことを思わずにはいられず、私はこんな風に本なんか読んでいていいんだろうか・・・と、かなり後ろめたい気持ちにとらわれてしまったし。
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現実とは感覚が少し違って、現実とは日常が大きく違う世界。この人の小説は感想が難しいんだよな。ぴったりしっくりくる感想が書けないです…。
今回は、話の合間に写真が入っている。作中の街を本当に撮ってきたかのよう。コラージュじゃないのよね。私的にはぴったりし過ぎて、逆に違和感を感じました。
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一度読み始めて、読み切れなかった。。。
今回は、一気に読み切った。
一言でいうと、読みにくいけど、読みやすい。
世界観がちょっとずれていて慣れないうちは駄目だけど、ある一定のところで、すんなり入ってくる。
入ってきたら、もう次から次へと読んでいける。
この方の持っている切なさって、なんとなく共感できる。
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9編の短編集。思いつき、小手先に見えて比喩に気づく。三崎ワンダーワールドとは違うが、似てる部分もあり。好きだったのは「四時八分」と「ニュータウン」、やや不満が「ペア」と「巣箱」。けっこう写真が小説に合わせて活きている。でも・・もしかしたら三崎作品ってのはホラーなのかも(笑)
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三崎さんの今度の短篇集もまた記憶に残る本だ。淡々と語られるから現実のような気がして油断しているとまんまと三崎ワールドへ連れて行かれる。その圧倒的なリアリティと語りのよどみなさは過去の作品以上だ。町の興亡、衰退というおなじみのモチーフを扱いつつも、これまでとは、そこに含まれる「愛」の匙加減が変わってきた気がする。その形は、男女の出会いであったり、見知らぬ人とのつながりであったり、夫婦の絆であったり、様々だけれど、どの話もせつなく心に響いてくる。抗いようのない暗い日常の中でのかすかな希望であり、そこに射す一筋の光のようだ。
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三崎亜紀氏の本、初。
短編集。
良かったです。他のも図書館で借りようと思います。
大震災・原発前に描かれた、なんの関連もない作品なんですが、
3.11前と後で、わたし(みつき自身)が、軸を中心にクルり、と視界が変わったというか、考え方、見方が変わったというか・・・
3.11前に読んでいたら、また違った感想をもらしていたんだろうな。
と思える短編が盛りだくさんです。
独特の世界も堪能できるし、これは一読の価値があると思います。
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三崎ワールド!
個人的に原点に戻ったような気がしてとても好き!
特に団地船の話が好き!
写真は取り方次第で、切り出し方次第で
どんな風にも景色を捉えられるんだなあて当然なんだけど実感
三崎さんの本また読み返したい
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白石ちえこの写真からのインスピレーション~遊園地の幽霊・海に沈んだ町・団地船・四時八分・彼の影・ペア・橋・巣箱・ニュータウン~ここの図書館は帯(昔の言い方では腰巻き)の部分を見返しに貼り付けている。最近は捨ててしまうには惜しいものがあるし,本のデザインの一部になっているからねぇ。写真から凄い発想をするものだ。海に沈んだ町は,閉鎖的であるために町を捨ててしまう人が多かったため沈没した町で,団地船は人口に比例して配分される補助金を狙う手口として使われたが廃墟と化していて,廃墟となると光が丘などのニュータウンが思い出される。確かにニュータウンも物理的に閉鎖的で,外に通じる道の数が少ないので在との交流が限定的だ。外に開かずにその内側だけの価値を求めても高齢化すると廃墟になる。人口減少に転じた日本では極めて現実的
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『となり町戦争』の三崎亜記の連作短編集。
「町」をテーマに、それぞれがゆるやかな繋がりを持って描かれる。
この本を読んで感じたのは、三崎亜記は、「現代の星新一」ではないか、ということだ。
この物語には、奇想天外の設定と、シュールな展開、そして、人間の本質的な愚かさが描かれている。
「大量発生した巣箱」「政府から保護指定を受けたニュータウン」などは、まさに「星新一的SF」と言える。
それに加え、三崎亜記が書く小説には、心の動きがある。
それは、明文化はされなくても、読む人の心を微かに振るわせてくれる。
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読み終わってからしばらく経ってじわじわと来る系かな(これを書いている今も、読み終わって半年位経っている)。「団地船」の世界観とかは自分好み。でも、三崎氏の作品の中ではやはり、「コロヨシ」と「失われた町」がダントツだなぁ。自分の中では。
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9編の連作短編集。
『本の雑誌』のガイドにあったように、わたしも「団地船」が良かった。
三崎さんならではの発想が楽しい。
物語は、もの寂しい。
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三崎ワールドとも呼ばれているらしい独特の世界観。じっくりと推理を楽しんだりするようなジャンルではないのだろうが、その斬新な設定は驚きを通り越して感心してしまった
。
これまで、この作者を知らなかったのは非常に悔やまれる。
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遊園地の幽霊
海に沈んだ町/団地船/四時八分/彼の影/ペア/橋/巣箱/ニュータウンの九作品。
写真がすごく効果的に使われている。モノクロで物悲しい雰囲気が作品にぴったりでした。表題作と団地船の話がすき。
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すぐそこの未来でもありどこにも無い世界でもある不思議な空間、心奥の風景。全ての短編に名状しがたい風が吹いている、心地よい物であるか、心寒からしむる物であるか、、いずれにしても魂に届く物語。