紙の本
現代人の究極の欲求「自分の代役やってほしい」
2011/03/26 17:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
役者稼業で食い詰めて、「誰かの代役」を果たす仕事についたマキ。
代表の狸親父が受ける仕事は、葬儀での死体、
夫との親戚づきあいを嫌う新妻、
セレブ社長の坊ちゃんの母親、偽婚約者と多彩。
自分を殺し、人になりきり、騙しおおせる。
それが「たぶらかし屋」。
シナリオもなく、演出家もいない、その場でのアドリブが求められ
しかも依頼者の理想像を演じます。
綱引きギリギリのそれぞれの話も読ませます。
面倒なことは避け、自分のやりたいことだけをやりたい。
ワガママいっぱいの現代人の欲求は尽きることを知りません。
それに振り回されながらも、なんとか問題解決していくマキを
とっても楽しめます。
そんな騙しの稼業も5年目にもなると
マキは日々、淡々と仕事をこなすようになります。
しかし、同じ役者のモンゾウと名乗る男が
弟子入りすることになり、ちょっと調子が狂ってきます。
すでに39歳になっているマキは
恋愛や結婚には興味を失っていますが
友人の婚活を見れば、心穏やかではいられません。
欠点は、話が単調になりがちなことと
クライマックスの弱さ。
坊ちゃんの家出騒動のおさめ方も、
政治家の代役・一身専属も予定調和的で
これだけの舞台の仕掛けをつくったのにもったいない。
しかし独特の文体、パワフルで豊かな語彙、
独創性、そして社会を眺める冷静な目。
安田依央には怪しい魅力があります。
小説すばる新人賞にしては、毒のある小説なのも頼もしい。
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依頼を受けて誰かになりすます仕事をする女性の話。小説すばる新人賞受賞作。
ひとことで言って、まるでTVの2時間ドラマのようなお話だ。
必要以上に芝居がかった、登場人物たちのキャラクターや会話、全体の語り口には少々辟易させられたが、2時間枠のTVドラマと思えばストーリーとしては悪くない。
ところどころ、回想が入ったり物事の説明にあたる場面が後から組み込まれたりしており、その場面転換には違和感が少なく読みやすかったものの、しゃべり言葉のみならず語りの部分ですら、ちょっと癖の強すぎる言葉選びがいちいち引っかかる。主人公の人物設定もあってのことかもしれないのだが。
ただ、それを差し引いても、次回作を読んでみたい作家さんではあるかも。
マキとモンゾウと隆久のクリスマスパーティーのシーンがよかった。
最後は、やや安易に展開しすぎの感もあるが…まあ、こんなもんかな。
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第23回小説すばる新人賞受賞作。
小すばで抄録を読んで、面白そうだったから買いました。
期待通り、面白かったです! 洒脱な文体、テンポのよさも手伝って、一気に読み終わりました。
市井の人々の中で誰かの「代役」を演ずる役者、という設定は、『プライベート・アクトレス』を彷彿とさせるけど、主題は別の所にあるし、笑いの中に毒も盛ってるし、楽しめました。
次回作も楽しみな新人小説家さんです。
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第23回小説すばる新人賞受賞作。オビの
コメントには大御所宮部みゆきさん!
読み易く、随所にユーモアもあり、
更に作家さん自信のキャラクターもありそうで
今後、知名度をあげてきそうな気配がしますw。
舞台...役者という事に思い入れを持ち続けた結果
社会の枠から、気がついたらドロップアウトした
独身アラフォー女性が、思わぬきっかけで働く事に
なった謎の役者事務所「ORコーポレーション」。
そこで演じる事になる役は日常の社会生活に
於ける一般の人間の代役。葬儀場での死体、訳ありの
新婚妻、セレブ女社長の母親としての代役...etc。
そういった代役を務めることで人との繋がりや
距離感、社会の中の自分の役割...これまで逃げてきた
主人公の「マキ」が痛切していく過程を描いています。
個人的にはさほど眼を見張るような感じはないですが、
何か別のテーマと展開次第では化けそうな予感...も。
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マキは、市井の人々の中で誰かの「代役」を演ずる役者。
花嫁や母親の代行から、果ては死体役まで・・・。
依頼人たちの身勝手さに苛立ちながらも、淡々と仕事をこなしていたマキの前に、ある日、謎の男が現れて・・・。
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2011/3/1読了。まぁ、こんなかんじかな。マキの言葉遣いが終始気になるけど。あとなんであんな爽やかに終わるかな?
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39歳のマキは、市井の人々の中で、誰かの「代役」を演ずる役者。ワケあり葬儀での死体役、多忙なセレブ社長の子息の母親役、夫の親戚との付き合いを厭う新妻役など、役柄は多岐にわたる。依頼人たちの身勝手さに苛立ちながらも、プロとして淡々と仕事をこなす日々。ある日、ニセの依頼をしてきた謎の男・モンゾウに、無理やり弟子入りされて…。第23回小説すばる新人賞受賞作。
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依頼者のその場しのぎの身勝手さには苛々させられるが、代役請負会社・OR社の面々――全容を窺い知ることはできないが――の仕事に際するプロ根性は感嘆するところである。主人公・マキの役者ぶりと、これでいいのかと常に煩悶する姿も生々しく、だからこそ好感が持てる。気持ちの深いところにじわりと働きかけてくるような一冊である。
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現実社会で誰かを演じる役者という設定が面白い。
展開が読めないだけに面白く読めたけれど、マキの古くさい?言葉遣いや、ところどころ表現が現代っぽくなくて引っ掛かった。
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39歳のマキは、市井の人々の中で、誰かの「代役」を演ずる役者。ワケあり葬儀での死体役、多忙なセレブ社長の子息の母親役、夫の親戚との付き合いを厭う新妻役など、役柄は多岐にわたる。依頼人たちの身勝手さに苛立ちながらも、プロとして淡々と仕事をこなす日々。ある日、ニセの依頼をしてきた謎の男・モンゾウに、無理やり弟子入りされて…。第23回小説すばる新人賞受賞作。
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マキとモンゾウの味わい深い関係や個性のはっきりした登場人物があり得ない行動をして面白い。人生は役を演じる役者のようなものというのが、すとんと腑に落ちる。
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主人公のマキは依頼をうけて「役」を演じる役者。死体の役、婚約者の役・・・。ただふつうの役者と違うのはマキが演じるのは舞台の上ではなく、日常の中でということ・・。
題材的には面白そう。文章、キャラクターも悪くない。もう少しかな。作者さんがこなれてきたらもっと面白く描いてくれそうです。これからに期待したいです。
それにしても、もう少し表紙(装丁)に力を入れてあげてほしかったなぁと思うのは私だけ?
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主人公のマキは独身39才で小劇団を主宰していた元女優。劇団が解散してみつけた仕事は様々な人の「代役」だった。
ちょっとごちゃっとしたところも感じたのですが訳ありの人々の代役業のエピソードはひねりも効いて面白く読めました。
モンゾウのキャラがいいアクセントになっています。
ただ主人公マキのキャラのせいかも知れませんが読み終わったあとこの物語は結局なにが言いたかったのかがよくわからずでした。すばる文学新人賞受賞作として期待しすぎたかな。
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飛行機に乗る機会があって、空港の本屋さんで見つけました。
面白くて羽田から那覇までの間に読み終わってしまいました。
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元舞台役者がプロの代役として、普通に暮らす人たちの間で役柄を演じる。葬式での死体とか、PTAの母親とか、旦那の実家に行く嫁とか、ありそうな設定が面白い。
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市井の人々の中で誰かの「代役」を演ずるという設定自体はP.Aという漫画を知っていたのでさほど真新しさを感じなかった。というか最後の方の認知症老人の孫の役とかはおもいきりP.Aぽいと思った。
でも作品そのものはまったく異なり、中年女性の孤独(?)とか演劇とはといった内容が描かれている。
ただ、親戚に挨拶する嫁の役とか、小学校の受験で母親役をやるとか……今後何年も関わっていくのに代行なんて頼むかな??という違和感が拭い去れず、どうにも物語に入れなかった。
あとクセの強い文章が自分にはあまり合わなかったらしい。
濃いキャラばかりで映像化しやすそうだなと感じた。
そしてモンゾウのクリスマスの件はなるほどと思った。