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苦役列車 みんなのレビュー

144(2010下半期)芥川賞 受賞作品

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みんなのレビュー356件

みんなの評価3.5

評価内訳

348 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

女性からのシンパシーは得がたい

2011/02/02 18:23

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 芥川賞受賞直後のインタビュー風景が強烈な印象を残した。片や良家のご令嬢風の朝吹さん。片や異形な風貌の西村賢太氏。そつなく出版関係の人に感謝を述べる朝吹さんはどこまでもお嬢様。家柄からしてすごい。父は詩人で仏文学者の朝吹亮二さん、大叔母はサガンの翻訳で知られる朝吹登水子(とみこ)さんという“文学一家”に生まれたという生え抜きのお嬢様である。
 一方、西村賢太氏といえば、「ちょうど風俗に行こうと思っていたところへ受賞の知らせがあった。出かけなくて良かった」と苦笑させる。

 読了後の印象は強烈なインパクトがのこる私小説だと思った。著者によれば九割は自分のことだと述懐する。
 中卒の主人公北町貫多は物流倉庫で働く日雇い。父は性犯罪者という過去を持つ。母は父と離婚し、貫太は中卒のまま日雇い労務者となる。怠惰な性格と性犯罪者の子供と言う生涯付きまとうレッテルを憎悪しながら投げやりな人生が連綿と続く。恋人もなく、日々の酒代と性風俗通いの金のためにだけ働く貫太は、人並みはずれた劣等感から生じる、ねたみや、そねみに自我を侵食され、己の人生がずっと続くかと思うとこの世がひどく息苦しく感じる。それは一個の苦役にも等しく感じる。

 古臭い、もう聞くこともないような言葉、「結句」がやたらと出てくる。「黽勉(びんべん)たる」とか、「孜々(しし)」の心がけ」などの古風な語句を使いながら独自の文体をかもし出しているのが面白かった。
 春の野菜はえぐみが強いものがあるが、そのえぐみが味わいにもなる。それと似て本書のえぐみは強烈であり、特異な個性を放っている。女性からのシンパシーは得がたいように思った。
 泥臭くどこまでもえぐるように地べたを這う者の生活を描いて見せた作品。
 無頼派の登場を思わせる作家の生い立ちと生活自体が小説といってよい。 材料にことかかないほどの生い立ちと生活ぶりは強烈な武器である。
 えぐい読後感。
 心酔している藤澤 清造の全集を受賞で得た賞金すべてを注ぎ込んで出版するという。

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紙の本

私小説であることをどう考えるべきか

2011/03/04 12:12

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今年の芥川賞は、あまりにもタイプの違う二人が同時受賞ということで話題になった。こちらは赤裸々な我が身の事実を小説にした、いわゆる私小説。
 こういう作品を評価するのは難しい。つまるところ私小説というものをどう捉えるか、という問題だろうか。
 インタビューなどからして作者は相当荒れた生活を送ってきた人らしい。大元には、父親の性犯罪による家庭崩壊がある。そこからの転落人生の途中で私小説に出会って救われ、自分でも作家の道に入った、ということらしい。そしてこの小説は、その事実のままの主人公が、中卒後、主に荷役の仕事をしながら過ごした数年の話。孤独な中で友人もできかかるが、持ち前の偏屈と僻み根性でこれを失う様子が描かれている。
 普通なら、作家と作品は別というのが現代批評の立場だろう。○○と書いてあってもそれが作者の考えというのは誤り、というわけだ。だが最初から、これは実際の自分の人生です、として自分を曝け出した小説をどう捉えればいいのか。それは開き直りのようでもあり、同時に、逃げ場のない者の唯一の救いでもあるようなのだが。
 仮にこれが事実とは無縁の単なる小説としたらどうなのか。逆に言えば、事実を書いているからどうなのか。その辺はあまり考えなくていいことなのかどうか。しかし我々は既に、これが私小説であり、ストーリーが事実であることを知らされている。すると、この小説に面白さを感じるとして、それはまず起こった事実の面白さかもしれない。手記やルポルタージュに対する興味と同じである。だがそれなら小説にする意味は何か。
 ほとんど実体験を書いているらしいとはいえ、けっこう凝った古風な文体で、自分でもある主人公を突き放し、こき下ろす。たしか新聞の評などでも言っていたと思うが、そのギャップによる距離感が、ユーモラスな味を生み出してもいて、その点はいいと思う。
 しかし読み進めると、いささか辟易もする。けっこう生々しいし、主人公の貫多には、このままなら付き合うのはちょっと、というものはたしかにある。いわゆる成長小説のようなものではないから、一般的には感情移入はしにくいと思うが、読者は自分の中にある弱さと響き合うものを見出して共感するだろうか。作家のインタビューを読むと、そういう読者があれば嬉しいというようにも言っている。
 だがそれがこの類の私小説の唯一の読み方なのか。とすれば誰もが読める小説ではないと思う。いっそ笑いや風刺で徹底して突き放す手もあるだろうが、そういうところへは行ってはいないし、かといって同情や共感を誘うことを目指しているとも思えない。そう思うと中途半端な気もする。しかし、むしろそれがありのままを描く私小説の本来の姿だとでも言われれば、そうかもしれないからまたややこしい。
 とりあえず読者が満足するかどうかは、最後は感覚的になじむかどうか、あるいはもっと単純に言えば好みの問題だけになってしまうような気もする。

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紙の本

生き続ける為に書き続ける。

2011/06/26 17:39

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

苦役列車 西村賢太 新潮社

 「苦役列車」の意味は最後までわからずじまいでした。列車イコール主人公貫太の人生なのだろうか。のう時北町(のうはとてもむずかしい字です)というのは苗字(みょうじ)なのだろうかと首をかしげながらの読み始めでした。以降は貫太という名前でひとり語りが続きます。父親が犯罪者らしく、いじめに遭う孤独な少年時代を送っています。それゆえなのか、高校へは進学せず、中学卒業後は、1日5500円の日銭を稼ぐ港湾労働者となっています。身長177cm19歳となっていますが、読み続けていると27歳ぐらいの男性に思えます。母親や3歳年上の姉とは離れ離れになり、貫太は家賃滞納による家主からの退去要求を繰り返しながらのその日暮らしです。狭い和室で寝て、起きて、早朝に日雇い人夫が乗るバスで東京湾に着いて働いて、ときには買春をして、体の健康を維持するための食物よりも毒となるたばこやアルコールの摂取を優先する性質です。彼にからむというよりもからまれるのが、九州出身の専門学校生日下部正二(くさかべ)と彼の彼女です。昭和61年頃の時代設定です。
 親が犯罪者だとこういう人生になると読むのか。子どもにも親同様に現実的な懲役刑がくだるのか。同情すればいいのか、自堕落な生活を批判すればいいのか迷います。自分を客観的に第三者の立場で見る記述です。特徴的なことは、ユーモラスであることです。暗い内容なのに明るいのです。書き方に独特なものがあります。多用される言い回しは「結句」です。結局の意味です。わたしは始めてその単語を見ました。
 貫太は、他人に迷惑をかけても気にしない人間です。ことにお金の支払いや貸し借りには怠惰です。借りたお金を返済する意識はないし、貸してくれた人に対する感謝の気持もありません。とんでもない奴です。
 中卒という学歴について強いひがみがあります。彼は自分がこういう生活を送らねばならなくなったことを「理不尽」と他者の責任にしますが、はたからみていると彼が何を叫ぼうと「みじめ」としか映りません。
 読みやすい小説です。されど、不潔感があります。作者の声が聞こえてくるのです。「ぼくでいいんですか」起・承・転まではわかるのですが、結となる部分があるのかは、はっきりしません。作者は、創作を心の支えとしながらこれからも書き続けていくのでしょう。その点は強く伝わってきました。

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紙の本

「苦役列車」私は私の事しか書けないのです

2011/05/20 10:23

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る

第144回芥川賞受賞作品の表題作と、
短編「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収める。


「性犯罪者の父親を持ち
中卒で以降、定職に就くこともなく
日雇い仕事で日銭を稼ぎ、
2,3日暮らし、金が無くなるとまた
日雇い仕事を繰り返す毎日、
誰かと繋がりたいと願いながら
それさえ自分から壊していくような日々」


衝撃的だとか
圧倒的だとか、
魂を揺さぶられる
とまで書評で書かれている本作。


それ程でもないなというのが素直な感想、
風貌からか中上 健次 の「十九歳の地図」の
主人公の小汚い部屋を想い浮かべた、
殺伐とした生活、
秩序とかとは程遠い、
どちらも自らそのようにしてはいるが
今の時代、過去を振り返って
20年ほど前にこんなだったと言われても
それと「無頼」なんてものとは
そう簡単に結びつかない。

ただの言い訳がましい
情けない男のひとりごとだ。

でも作者は「これしか書けない」といい
「これを読んで少しでも元気になってくれたら・・」という
インタビューを読むと、
それでも人間は自分自身でしかありえないんだなと
強く思った。



何かになりたいなんて
強く願わなくても
それでも自分自身をやっていくしかなく
つらつらと振り返り
時に暖かい未来を夢想し
それでも侘しい現実と向きあうしかない。

励まされもしないし
ここに魂を揺さぶられるような
「文学」的な何かは見つけられなかったが
でも、それでも書かずにはいられないという
作者の「熱」は充分に感じた、
自分達読者は巧みな文章や
あり得ないものよりも
熱い心意気のようなものに
やはり惹かれるのだろうな。


作品としては汚らしいので好きじゃないが
最後まで読ませる「力」は感じた。
次作は書店で冒頭を立ち読みしてから
買うか考える。


★100点満点で65点★


soramove

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2011/01/28 00:05

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2011/01/27 10:23

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