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中国国内、共産党内部のごたごたで漁夫の利を得た日本か
2023/09/18 10:11
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後、日本は高度経済成長を経て、GDP世界第二位となったが、中国の経済発展があり、2010年に日本が抜かれ、今や中国のGDPは日本の3倍余りとなった。日本の輸出入額共にトップは中国である。アメリカの影響下にあっても、多くの分野で中国を抜きに考えることはできない。中国の近現代史を知ることは必要となる。新書でシリーズとなっており、定評があるものとなる。シリーズの中で本書が出たのは2011年である。本書の著者は中国近現代史の専門家であり、国民党と共産党の競り合いで、なぜ、国民党が敗退し、必ずしも中華人民共和国は社会主義、共産主義国家を目指していなかったにもかかわらず、社会主義国家への道を歩んだのか。歴史書であるので、社会主義とは何かを問うものではない。国家として標榜したに過ぎないかもしれないが、否定もできないであろう。目次を見ると、
はじめに
第1章 戦後復興の希望と混沌
1 交錯する戦後構想
2 破綻した経済運営
3 国民政府の誤算
4 東アジアの冷戦と中国
第2章 冷戦のなかの国づくり
1 人民共和国の成立
2 朝鮮戦争の衝撃
3 姿を現した社会主義
第3章 急進的社会主義路線「大躍進」の頓挫
1 百家争鳴から反「右派」へ
2 孤立する中国
3 毛沢東の急進的社会主義
4 失速する「大躍進」政策
第4章 試行錯誤する社会主義
1 調整政策
2 AA外交の行き詰まり
3 文革への助走
第5章 急進的社会主義への再挑戦「文化大革命」
1 文化大革命の国際的背景
2 文化大革命の展開過程
3 中国社会の混乱
4 取り残される中国
第6章 転換を迫られる文革路線
1 軍による秩序回復
2 社会主義経済の行き詰まり
3 対外戦略の転換
おわりに
あとがき 参考文献 略年表 索引 となっている。
以上のように、第二次世界大戦が終了し、中国はいったん国民党政権である中華民国が前面に出て、共産党との戦いが始まる。対日でアメリカやソ連は国民党や共産党を支援していたにもかかわらず、戦後、ソ連は旧満州の権益確保に走り、アメリカはヨーロッパ復興に力を入れ、国民党の経済政策は失敗し、共産党の勢力が広がっていく。国民党は台湾へ、共産党が中華人民共和国を建設するが、朝鮮民主主義人民共和国が主導する朝鮮戦争をソ連とともに承認する。国家として、大躍進、文化大革命を進めるが、経済政策としては失敗となる。その間、日本は占領状況で、朝鮮戦争に協力するが、後方基地・供給拠点として、倒産寸前の企業が復活し、多額の外貨を得る。そこに、競争相手になるはずの中国の失策が続き、アジアでの競争相手も少なく、台湾、韓国と経済的に連携し、高度経済成長を果たし、経済大国と言われるようになるが、中国の方針転換で2010年に至る。
やはり、中国は大国であり、多くの流れが存在し、本書の範囲でも読み込むのに一筋縄でいかないことを感じる。それでも一読してほしい本である。
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日本の戦後から高度成長期に、中国は何をしてきたかが明確にわかります。戦勝国となったがための苦しみと、先を急がんためのあせりが空回りしていたようです。
21世紀こそ、あせらず、あわてず、着実に世界を見据えた中国国家を形成していってもらいたいものです。
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1945年から1971年までの26年間。中国は国民党と共産党との内戦、共産党の政権、急進的な社会主義化、そして文化大革命と、たった26年の間に、様々な変化(混乱)がおこっている。
そんな現代中国の歴史を「グローバルな視野の中で位置づけ、現代日本の歴史と重ね合わせて捉え」て著述されている。
分かりやすく、読みやすい。特にその時代時代を題材とした映画を紹介しているところが自分好みだった。これらの映画を端から全部観てみたいと思った。
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なぜ中国は「社会主義」を選択したのか? 終戦から中華人民共和国の国連加盟までを扱った本書のテーマである。この時期の混迷は毛沢東個人の資質に帰されることが多いが、本書ではそうした立場を取らずに、できるだけ多面的な分析をおこなおうと試みている。資料的な制約も多い混乱期の叙述だけに、隔靴掻痒の観もなきにしもあらずだが、大躍進、文化大革命の時期にもそれ以前からの民主主義的な思想水脈が途絶えることはなかったとする著者の視点は一貫している。
当該期をテーマにした中国の映画や文芸作品なども、端々で紹介されているのも有益だ。関心のある読者は、たとえばホウ・シャオシエン監督の「非情城市」を見て台湾の「二・二八事件」を、「黄色い大地」の監督チェン・カイコーの「私の紅衛兵時代」を読んで文革期の少年たちの心情を知ることができよう。
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アジア交易圏と日本の課題図書(選択)。
中国の1945年から71年までの戦後26年史が説明されている。
これは、第二次世界大戦後に国民党から共産党へと政権が交代し、急速な社会主義が強まってゆく混乱の時期。
以下、感想というよりもまとめです。
★印象に残った内容が二点
・中国の社会主義がはじめから極左なわけではなかったということ。
・同じ社会主義といっても中国とソ連のそれは似て非なるものであったこと。
●背景:戦後中国の外交課題
01 戦後の復興と国内統一の回復に向け、世界各国から支援を得ること。→失敗。
…大戦中から中国を援助してきたアメリカは次第に独裁色を強める中国政府に距離を置くようになり、中ソ友好同盟条約締結を頼りにしていたソ連との交渉も難航。
02 植民地を取り戻して中国の領土を回復すること。→難航
…戦中に日本軍が占領した香港の返還は宗主国イギリスが利権保持の立場から反対。台湾も現地住民との軋轢が強まってしまう。
03 日本から戦後賠償を獲得すること。→失敗
…戦争直後はアメリカも、日本の軍事力を削除し多額の賠償を支払わせることで中国の戦後復興を助け、東アジア情勢の安定化をはかろうとしていたが、中国の混乱の長期化と共産党の勢力拡大を受けて、しだいに日本を拠点としてソ連に対抗し、東アジアをアメリカの影響下に置く戦略に転換してしまった。
●「中国の社会主義がはじめから極左なわけではなかったということ」まとめ
:国内外の動向に左右されて中国の社会主義は急進的であったり、失速、試行錯誤、混乱と転換、行き詰まりなど様々な過程をたどっている。
戦後中国の外交失敗により、復興の兆しの見えない不安定さと国際的な孤立が国民党への不信に→共産党に政権交代。
↓
1949年、中華人民共和国の誕生。
↓
1950年、朝鮮戦争→財政負担の拡大
↓
・反革命鎮圧:民間の自衛的武装組織を一掃して治安の安定化を図る
・思想改造:思想・学術・文化・教育に厳しい統制をかける
↓
社会主義の急速化。
・工業化の推進→軍事力の強化
・農業生産低迷を打開→経済発展
↓
・商工業部門の国営化
・農業部門の集団化
→「単位(ダンウェイ)」を基礎とする社会を形成し、単位社会の広がりは政府に民衆を個別に挙握させ、政治思想を効果的に統制することを可能に。
「社会主義」と一言で括っているものの、実は沢山の状態があるとても抽象的な言葉なのだと知った。(もう疲れちゃったから書かないけれど、中国とソ連の社会主義の間にも相違点が色々とある)
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大戦後の1945年から国連復帰の1971年までの中国史を描く。
朝鮮戦争やベトナム戦争、米ソとの大戦に対する危惧等については
記載が物足りなく感じたが書面の都合上仕方のないところか。
その反面、反右派闘争から大躍進、文革までは
当時の社会の流れを順に追って分かりやすく説明されており、
理解しやすかった。
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国をつくるためには様々な社会実験が必要になるのであるが、中国の場合は「大躍進」や「文化大革命」を経験した。人間は悲しくなるほど愚かなものを考えつくものだ。それにしても中国は長い歴史を持つ国だが、今までこの世界にとって大いに役立った誇れるものをなにか残してきたのだろうかと、ふと思ってしまうのです。 日本、中国、韓国、北朝鮮はこれからまたどのような社会実験を繰り返し、どこへ行こうとするのだろうかと、少しく不安をおぼえるのです。
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戦後中国が外交上、最優先課題としたのは戦災からの復興と国内統一に向け世界各国から支持をとるつけることだった。
朝鮮戦争はたんに軍事的対決にとどまるものではなく、朝鮮戦争を契機として東アジアは冷戦が広がり、中国の対外関係と国内政策は大きな制約を受けることになった。西側諸国との貿易が大幅に制限された。
大躍進政策の失敗を認めるようになったとはいっても、失敗の主要な原因は自然災害にあったとされ、大衆動員に依拠した高度経済成長政策に対し根本的な批判が提議されたわけではなく毛沢東も共産党の中で党主席としてトップの地位を保持していた。
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朝鮮戦争をきっかけに社会主義への道を邁進。そして中ソ対立。内政では大躍進と文革の失敗。この辺の歴史の流れをざっと押さえるには良本に思う。現代中国は毛沢東批判できずにズルズル・ダラダラと誤魔化し続けているが、ここをハッキリさせない限りは変われないだろう。
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戦後、革命から文革まで、激動すれ中国を冷静な目で一瞥する本です。やはり、この時代を経験した人で、この時代に戻りたい人はいない様な気がします。