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数字は残酷だ。想像力の働く余地無く現実をつきつける。
本書では、多くの統計が利用されている。すべての数字が経済大国日本に住んでいる私達に現実を教えてくれる。いくつか挙げると
1日1ドル以下で生活している人の人口(正解は15億人)
1000人あたり生後から28日以内の乳児の年間死亡者数(日本は1人、アフガニスタンは60人)
中国の売春婦人口(なんと2000万人)
GDP(国内総生産)における売春の占める割合(韓国5%、中国6%)
著者の石井光太さんは現地のスラム街に住み込んだり、売春宿の掃除夫として働いた経験を生かし、本当のスラム街の姿を伝えてくれる。写真もある。特に東南アジアやアフリカの売春事情に関して詳しく描写されている。
しかし、日本に住む私にはどんな生々しい文章や、写り手の魂まで刻むことに成功したような写真より、ただ事実を伝える数字の方が、恐ろしく感じる。
富がもたらす病に知らずうちに冒されているのだろうか。
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世界の貧しい国々ではあ1日を1ドル以下で暮らす人が12億人もいるそうだ。本書ではテレビのドキュメンタリーのように「救うべきかわいそうな貧困者」という画一的な視点ではなく、人々の生活に入り込み、「あたりまえの現実」としての彼らの生活が書かれている。
自分の子供を売春婦にしないために売春をして子供を学校に通わせているいる売春婦や、インドネシアの年齢別人口がキリのいい年齢だけ多い理由、自分の腕や目をつぶしたマフィアをかばう少年、どの話もテレビではなかなか報道されない。それは「救うべきかわいそうな貧困者」や「貧乏でも明るく頑張る子供」のようなわかりやすく感動をさそうテーマに沿って番組を作るからなのだ。
タンザニアのスラム、無償で産婆をするオバちゃんがいる。少しでもお金をとればいいじゃないかという言う著者にオバちゃんは「アフリカでは、みんなお金を目当てに戦争をしたり、虐殺をしたりしている。私は赤ちゃんが生まれてくる時ぐらいはお金に関係なくやってあげたいのさ」と言った。
貧しい国にいるからって同じ人間なんだ。いい人もいれば悪い人もいる。今さらながらそんなことをわからせてくれる良書。
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110705/今年32冊目
世界各地の貧困をわかりやすく読みやすく解説し、それでいながら普遍的な問題提起に繋げている良書。文庫になったのも嬉しい。
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古くは、途上国支援ボランティア、寄付、最近では、フェアトレード、BoPビジネス、などなど、「貧しい人たち」「困っている人たち」に手を差し伸べよう!とか、「格差を減らそう」というはなしは、言ってみれば私たちの生活に日常に転がっているのではないでしょうか?
学校でもいろいろ教えてくれるしね。
でも、だからといって、自分が何ができるか?あるいは何をしたいか?と考えると、な〜んにもアイディがなかったりしませんか?
逆にそんなたいした志もないのにだいそれたことは言えないし、やらない、ということでフツウに先進国文化の中で生きることを選んでも、全く不思議ではない、と思います。
別に皆が「貧困」に目を向けて、何かをしなければならない、わけではないのだけれど、「貧困」の実態をリアルに肌感覚に近く理解したならば、あなたの「考え方」が変わるかもしれませんよ〜。
私は最近フェアトレードやBoPビジネスをしようと、東南アジアの貧困の中にある方々と少しだけ時間を共有しはじめていますが、気づいたのは「貧困」というものを私自身がまったく判っていない、それに、現場にいても判らない、ということです。多少、衣食住が不潔だったり、電気水道がなく不便だったり、というところまでは体験することができても、リアルにスラムライフを試すほどの根性はないm(_ _;)m
結果として、本来、ビジネスを共にする相手とする「絶対貧困(一日一ドル以下で生活しているような)」の人々の気持ちがわからないし、だから、うまく一緒に仕事ができない。(お互いの期待があわない)
本書を読むことで「貧しさとは何か?」を、頭でなく、ココロで、少し、感じることができると思います。
講義というかたちをとって口語なのもいいし、
写真とデータが多くて、多分それだけでもかなりココロに迫るものがありますよ。
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先ず衝撃を受けたのは「世界の統計」として書かれている数字だった、世界全体で「1日1ドル以下で生活している人」は12億人(約5人に1人)。「飢餓状態にあるか、不安定な食料供給に依存している人」は8億4000万人(約8人に1人)。「飲料水の水が利用できない人」は16億人(約4人に1人)。いかに自分の育ってきた環境が恵まれていたのか思い知らされた。
路上生活のエピソードとして面白いと感じたのは、「トイレ」についての話で、都心の真ん中にあるスラムだと草むらや川が無いため、路上で用を足すしかなくなり、新聞紙を敷いてその上で排便し、終わったら包んで捨てるのだそうだ。作者の石井さんが"まるで犬のうんこを始末するのと同じで、そういう姿を見ると人も犬も同じ生き物だと感動する"というコメントを読んで、私も、今まで生き物の中で人間だけは他の生き物と違う特別な存在としてとらえていたが、スラムでのトイレの話はそんな考え方が変わるような印象的な話だった。
難しい問題だと思ったのはスラム内で起こっている悪循環について、本書の中で「廃品回収」について書かれているのだが、途上国では人々がゴミを路上によく投げ捨てている。彼等は「廃品回収者にくれてやる」という意識でゴミを捨てているらしく、政府が「ゴミを捨てるな」と言えば廃品回収者の仕事を奪う事になる。しかし全てが再利用されるゴミではない為に放置しておけば街は汚くなるばかりと、負の連鎖が続いている。スラムでは廃品回収以外にもいくつも悪循環している問題があり、何か解決する方法はないのかと思った。貧困の下で生まれた赤子は一生をその場で生きて、上に這い上がる方法もないのではないのかと思った。また、そのような環境の下で暮らしている人が感じる「幸せ」とはどんなものなのか気になった。
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1日1ドル以下で暮らす人間と寝食を共にして書いた作者のルポです。書かれてある事一つ一つが衝撃的で読んでいて唖然とさせられますが、日頃私たちが目にすることは決してないだろうという世界が展開されています。
この本を最初に手にとって見たのは少し前になるんですけどね。今回この記事を書くために再読してみたのですが、いやはや、ここに書かれていることは全て『事実』なんですが、いやはや…。あまりにぶっ飛んだすさまじい世界ですわ。むしろ一周して逆に現実感をわすれさせてくれますね。
いま、日本が『格差社会だ格差社会だ』と盛んに騒がれておりますが、この本に書かれているまでのレベルには『まだ』いってはいません。
この本の作者は無茶苦茶とも思える事実を淡々とつづっているが、あまりの内容で改めて絶句しました。特に自分が好きだった箇所は『売春編』に関する箇所で本の中には写真が掲載されているのですが、本当に粗末な部屋、もしくは場合によっては貨物列車の中で事が行われていて、そこかしこに散らばった使用済みのコンドームの中に、蟻が入り込んで、乾いた精液を食べると言う描写でした。本当にこの箇所を読んでいるときは慄然としました。
最近、こういうところに行って実際に自分の目で現場を見ておきたいという衝動に駆られる自分がいます。ま、諸般の事情により、当分は出れませんがね。
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この本を選んだ理由:
貧困問題に興味があったので
この本に感動した理由:
思いっきり現場に踏み込んだ取材をしている点に驚いた。
生まれおちた場所によって、価値観は全然違うことを再認識。
常識とは偏見の塊であるとはよく言ったものです。
発見したこと:
まさに「リアル」な世界。痛々しくて目をそむけたくなる。でも向き合うっていってみたところで、それも綺麗事でしかなくて、結局どうしたらいいのかわからない。
とかく知ってしまった、出会ってしまった、同情してしまった、テーマに尽力すればいいという理論に賛成。
自分にどのように影響したか:
生まれた背景が違えば、悩むことも違うということを知り、もう少し自分を客観視してみようと思えた。
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世界にはこういう場所もあるのだな、という意味では興味は湧くし、筆者の取材力というか突撃力には驚くけれども、読み物として面白いとは思わなかった。
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貧困の実態とは如何なものか?
広範な地域での綿密な取材・調査を通して、貧困者の実態を明らかにしている。
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貧困層の研究家が書いた本。
新興国の、貧困層の日常を描く。
物乞いにも種類があり、基本的には同情されてナンボの世界。赤ちゃんすら、レンタルしてお金を稼ぐという…
今までの、一辺倒なものの見方を再考させられる一冊。
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世界の貧困地域の生活と特徴のレポート。所々に挿入される考察は目新しいものではなく、また全く相容れないと感じることもあるが、スラムに飛び込み生活を共にするという筆者の人生を張った取材に裏打ちされ力がある。
著者が掲げる「貧困学」の理念とはずれるかもしれないが、人は貧しさから学ぶことが確かにあるように思う。
貧しさから遠いことでは世界一かもしれない国に生まれた私達は、貧しさに対する態度を知らない。「貧しさ」と「正しさ」を切り離すことが出来ない。
確かにある貧困と、私達はいかに向き合うべきなのか。その意味を、どう捉えるべきなのか。
考えさせられる一冊でした。
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われわれの社会の常識からの判断をできる限りしないようにすることで、現場をより身近により詳細に取材することができている。
常識の相対化が大切であることも教わった。
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途上国の貧困問題といっても、遠いどこかの話ではなくやけにリアルな問題に感じた。
何をしたら良いですか?ではなく、どうしたら良いかを自分の頭で考えることが大切。
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(貧困による裕福な外国人への恨みから)あるいは、社会(政治)事件が起きることもあるでしょう。世界では、時々日本商品への不買運動が起きたり、反日デモ(暴動)が起きたりすることがあります。(略)ここからいえるのは、いまはもう途上国の貧困問題を「遠い国の出来事」として片付けられる時代ではないということです。良い意味でも悪い意味でも、途上国で起きていることは、そのまま私たちの安全や経済や政治に影響を与えるのです。それがグローバリゼーションということなのです。(略)ただ、そのためには、海外の貧困地域の生活や、現地で起きている問題がどういうものかということを知らなければなりません。(315p)
その問題意識に私は大いに賛同する。
今から32年前の1981年、全世界でピースマーチが流行った。米ソの核兵器競争は頂点まで達し、核戦争がいつ起きてもおかしくはないと多くの人たちが思っていた。世界の各都市で50万人とか100万人とかの信じられない数の人たちが集会を開き出した。日本では、しらけ世代が蔓延していたが、新しい「市民」の台頭も始まっていた。なんと広島で30万人集会が開かれた。大学新聞をしていた私は、その取材ということで、初めて県外取材に訪れた。「これは集会ではない、お祭りだ」と昔の活動家は批判していたが、私は形式はどうであれ、平和をテーマにこれだけの人たちが集まったこと自体に感動した。そのときに、大江健三郎がスピーチをしている一角があった。私は彼の言葉を最初から最後まで聞いたわけではない。しかし、この言葉だけが心に響いた。
「想像力が必要です。想像力が試されている。私たちに想像力はあるだろうか」
それから30年間以上、私は何度も何度もその言葉を反芻している。
世界のスラム街に住む人々は、腹の飛び出た子どもたちを見れば「かわいそうな人たち」と括られたり、麻薬や殺人の危険地帯の情報を得れば「排除すべき人たち」等と括られたりするだろう。しかしそれはゴミ箱の臭いや感触を知らないで見た目だけで判断しているのに似ている。数%の人たちが殺人を犯しても、数%の子どもたちが死んでも、圧倒的多数の住民の実態を知らないで、軽々しい判断は慎もう、韓国や中国やベトナムで見た貧困街の体験を大切にしよう、こういう本を読んで、世界の実態から日本の常識には囚われない判断をしよう。この30年間、ずっと気をつけてきたことではある。その時に、「想像力」は試されるだろう。
2013年5月31日読了
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缶ジュース一本よりも賃金の少ない世界の人達・・・
日本に住んでる自分では想像もできない程の世界を、決して大袈裟に誇張しているのではない『リアル』な内容として読み解きことができた。
『貧困の中でも恋は生まれる』『売春している女性達は皆で協力して子供を育てている』といった、人の美しい側面も描いてくれたのが嬉しい。
著者にはこれからも取材を続け、良質なノンフィクションを生み出していって欲しい。