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長い期間をかけた豊富で綿密な取材をもとに書かれた、中国共産党が現在の中国でどのような存在なのかを書いた本である。本当に力作である。ぜひ皆さんに読んでもらいたい。
この本を読みながら、再び思ったことは、私たちはいかにモノの見方が固定化されてしまっているのかということである。
例をあげれば、アラブの春が「独裁政権倒すとそこに民主的で平和な社会がうまれる」というような有り得るはずの無いことが当然起こるという前提の文脈でニュースが語られ、それを視聴者が違和感無く聞いてしまうということがある。
私は1992年のタイの民主化運動の時に、マスコミの報道姿勢と日本人のものの見方がいかにステロタイプで現地の人達の理解からかけ離れたものであるかを思い知った。日本のマスコミと日本人は、教科書に書いてある「反民主的な独裁者や腐敗した政府、あるいは軍事政権を民衆のデモが打ち砕いて平和で公平な民主的な社会が作られる」という物語がそこに起こっていると思いたいという願望を投射しているのであって、そこにはその時その場所でどのような人々がどのように考えてどのように行動しているのかを知ろうとする態度は薄弱だ。
そして、それは団塊の反体制世代の特性にすぎなかったものが、報道という産業の体質になり長年のマンネリの中で堕落してしまっている。そのため、今回のタイの騒動でもそれはまったく変わっていなかったし、アラブの春にいたってもまったくかわらず、今も中国社会を語る時もそうだし、最近のミャンマーについてもそうだ。むしろより表面的で浅はかなものになっている。
中国、そして共産党の独裁については、日本の大部分の人間には、自分たちの持っている固定観念が故に、それを理解することは大変難しいのではないかと思う。実際に中国で生活したりすることや、そして本書のような文献に恵まれることもその固定観念を払拭するには十分ではない。しかし得難い数少ない有意義な体験であるので、本書はぜひ読むべきである。
中国共産党とその支配については我々はほとんど知識も実感も持っていない。そういう意味で大変貴重な書である。共産党は中国の法律を超えた存在であるということを知っている日本人は少ないだろう。市には市長と書記がいる。会社にも董事長と書記がいたりする。「総経理は社長で、董事長は取締役会議長なんだね」とか、「市長と書記とどちらが上なの」とかいうレベルの会話が繰り返されている以上の理解が進まない自分たちを反省する必要がある。
自分たちの常識の範囲を超えた社会制度や体制を理解する事は難しいが、みずからがそれを知ろうとする態度を失ってはいけない。そのような固定観念を助長しているのは歴史や政治の教育のあり方や学者であるとも思う。
私はかつて中国の生産法人で働いていたときに、通常日本で普通に行われている、中国の「工会」を日本語で「労働組合」と訳すことは不適切ではないかと思っていた。この本でも日本語訳は「労働組合」と訳されている。原著でもおそらく「Labour Union」となっているのだろう。しかし「工会」は「工会」であって通常日本人が理解している日本の「労働組合」とは異なる。
「工会���の歴史についての日本語の文献は簡単にみつからないので、推測になってしまうが、もともと1925年に「工会」が誕生した当時は、欧米の「労働組合」をもとにしたものであったのではないか。しかし1947年以降資本家が存在しなかった中国において、国営企業では「工会」はその性格を変えて行ったのだろう。いまとなっては「工会」は資本家に対抗して作られる、「搾取される労働者の団体」であるという解釈は一面的である。多くの場合管理者も経営者も参加する団体である。そこで混乱して思考停止に陥る日本人も多い。
が「工会」を「工会」として知ろうとすればそれほど難しい組織でもない。問題の本質は「労働組合」が正しい訳かどうかというより、日本人が「労働組合」と聞いた時に持ってしまう先入観がさまざなま無理解を生じさせてしまうことにある。中国には「労使対立」は法的には存在しないので、「工会」と「経営幹部」は対立するものではない。共産党も中国の法律も対立組織とはとらえていないのである。しかし経営者と企業を安定的にコントロールするためのツールととは思っているだろう。
日本では(多分欧米でも)中国の企業でも幹部と一般者の葛藤が生じる事は当然あり、その係争に対応する事が「工会」の機能の一つとして有るがために、それを「資本家」と「労働者」の対立と見てしまう誤謬が生じる。「労働組合」と聞いた日本人はその時点で労使対立の構図を頭の中に形成してしまっている。
欧州で労働者の組合が資本家に対抗してストライキをやることを、プロレタリアートが資本家を倒して革命を起こして社会主義から共産主義に至るプロセスになぞらえ、そして中国の現状をそのプロセスが起こっていると見てしまう誤りが非常に単純な固定観念から生まれてしまう原因になるからである。したがって、日本人のなかでも戦後左翼とそのシンパの思考パターンを持っている人達が、もっとも現在の中国と中国共産党の実情を理解できないであろうと思う。
虚心坦懐に本書を読み、ニュース記事などの断片の中から事実だけをもとに、イデオロギーにまどわされずに、そしてできれば中国で仕事や生活をして、共産党員や民衆の態度を実感していくことで、中国共産党に対する理解ができてくると思う。この本は現在の中国共産党の姿を知る地図としてとても役に立つはずだ。
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歴史、中国企業との関係、台湾との関係、腐敗について、資本主義への姿勢など、中国共産党について丁寧に描かれている。
中国ってよく分からない国だったけど、この本を読んで、理解できた部分が多かった。特に興味があったのは、中国企業への共産党の影響力と、(選挙の時期と重なったのもあって)台湾との関係。今後、中国の世界への影響は確実に高まるわけで、今の段階でこの本に出会えたのはラッキー。というわけで、かなりお勧め。中国に興味ある人もない人もぜひ!
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胡錦涛になり、毛沢東、鄧小平の時代がはっきり終わったのだが、結局それは個人による独裁から中央政治局常務委員会の9名による集団独裁体制になっているだけだというのがよく分かる内容。
いまや共産主義というには矛盾が多すぎる社会体制で、人権問題や汚職の蔓延もひどくなっているが、それなりに増えてきた中間層も今となっては失うものが多く、体制の劇的な変化は望んでいない。外部からの情報を統制し、歴史を修正し、大いなる矛盾を抱えたまま党による支配はいつまで可能なのだろうか。。。
・米国に上場している中国企業についても国営なのか民営なのかよく分からないケースがほとんどなのだけど、これは「人民による民営」で、党委員会がどの会社にも設置されている。
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先輩からの推薦図書。タフな国家だとは、なんとなーく頭で知っているつもりになっていても、これを読むとはるかに想像以上だと感じます。
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+ 筆者のマグレガ-は中国共産党を中央委員会乗務員会を頂点とする権力構造としてとらえている。いろいろな証言を連ねている。
それはそれてとして、確かにおすなのだろう。実際に中国へ行って、いろいろ見聞きしたことから、格差の拡大とか、いろいろな面で、違和感を感ずることは多い。
ただ、権力の問題だけで、支配と支配されるものとの関係だけでとらえきれるかというと疑問を感ずる。
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やっと読み終わった。
共産党の内情や支配の手法を実例を挙げて説明しています。
中国共産党の絶対的な権力。
そして時に巧みで、時に大胆な手法に驚かされますが、何よりも驚くのは中国のトップクラスの共産党員になるまでの過酷な道程。
まさに、知力体力時の運。
政府の要人になるための道程が過酷なのは各国共通と思いますが、中国のそれはズバ抜けていると思います。
中国ビジネスに関わる人は、どんな人達を相手にしなければならないか?という視点で読むと緊張感が増すかもしれません。
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中国共産党の現状、幹部のモチベーションの源泉、党が持つ中国企業への影響力、党が抱えている問題などが分かる良書。
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③まとまり。外国人の文体に見受けられるが、登場人物や街の背景描写等が少し長い。全体としてもう少しスリム化してくれた方が中身が頭に入り易い。実体験や取材に基づく内容で現実味があり、多角的な視点で党の内実に迫っている所は、他に類を見ない面白さ。
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中国共産党を通して、中国のあらゆることが分かるかと思い購入。
あまり共産党について興味がわかず、現在ペンディング。
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中国の共産党がどういう役割を果たしているかを記載している。批判的な側面でのみ書いているので、メリットがどこにあるのかを知りたいと思った。
暗記力重視は中央の内容を正確に伝えるため。
5つの公認宗教以外認められない。
赤い電話を持っているところは共産党直結で電話がくる。
共産党幹部は髪を染め、染めないときは引退してか投獄。
中国に会社が存在し、会社が不動産などを所有はしているが、結局は株を持っている国が統制している。
低い収入で昇進するか、昇進をしないが利権をえるかという別れ道。それを設けることで昇進できない不満をそらしているのかもしれないと思った。
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やや古い本ではあるが、中国共産党の組織原理、動きのバックグラウンドがわかる。大きな流れは今も変わっていないように思われる。
過ちを認めず、歴史を曲げてでも、権力の正当性を守り抜く。日本でもそのような人たちが沢山いる。
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『#中国共産党 支配者たちの秘密の世界』
ほぼ日書評 Day419
Google MapのDLができない国、ポケGoが1匹もいない国の、様々な「現実」を丹念な取材によって説き起こした一冊。俄に信じがたい記述もあるが、彼の国の不可思議さを思い浮かべるに、なるほどそうなっているのか、と膝を打つ箇所も多い。
「赤い機械」、主要政治家や大企業トップのデスクには、番号が4桁しかない真っ赤な電話機が置かれている。全部で300名しかいないその電話の持ち主は、政治経済の機密事項を、この暗号化されたホットラインを通じてやりとりしているという。通常の「民主国家」であれば、思い切り、政治と経済の癒着として大問題になるレベルだが、中国という国は、こうした仕組みで回っている。
中央と地方の関係。体制の基本的システムや一党支配の必要性について地方役人から疑問の声が上がるなどは皆無。が、地方の金銭的利害の絡む経済行政となると、中央の指示があっさり無視される。党が全権力を握るが故に政府は脆弱となり、未熟な機関が生み出される。結果、地方の党幹部が事実上の絶対権力を握る。
旧東独に関する歴史館を訪れた『人民日報』の上級編集者が、旧東独共産党機関紙の最終版展示を見て「我々の新聞の最終版も、いつの日かこうして博物館に展示されるのだろうか」と冷笑的に呟いた。著者曰く「日本や他の諸外国に向かって歴史を講釈する中国の声を、まともに受け取ることはできない。なぜなら中国自身が、党の記録を国民の目から隠しているからである」。
毛沢東は、スターリン、ヒトラーに次ぐ虐殺者。その政治的過ちにより、数千万人(隣国の人口に匹敵する数字だ)が死んだ。1960年の春、農村地帯、信陽市の大地に死の臭いが立ち込めた。冬の間に餓死し、凍りついていた遺体が日差しを受けて解け異臭を放ったのだ。食い荒らされた跡のある死体も多く、それは野犬の仕業とされたが、実際には死体を食い荒らすような犬など、既に人間によって食い尽くされていた。
本書出版時点(10年前)の隠蔽体質の具体的事例は、幼児用毒入り粉ミルクや、SARSの流行に関するものだったが、さて、昨今話題の事案は数年後にどのような着地を見ているのだろうか。
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訳者あとがきに、「同格と関係代名詞が延々と続く独特のスタイルは訳者にとっては解読する作業に等しかった」とあるが、翻訳版は非常に読みやすい。訳者に感謝である。