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昭和10年代、大阪船場のかつての大商家・蒔岡家の四人姉妹の悲喜こもごも、時代の流れを描く。
母親が持っていたので借りて読んでみました。
割と面白かったけど、「どこが面白かった?」と聞かれると軽く答えに窮してしまいます。
それぞれの姉妹の性格・身だしなみは派手だけれども、起こるイベントがそこまで派手極まる訳ではない(水害とか結婚騒動とかは起こっているけど)。
個人的な総評としては割と地味な感じですが、この時代のこの生活水準の人は、こういう考えでこういう生活をしてたろうなー、というのがごく自然に伝わってきます。
ちょっと時代は違うけど、太宰治の『斜陽』の華族衰退の話と比べると、カラーが全然違って面白い。
『細雪』に出てくる人のほうが俗っぽくて力強くて、人間くさくて私は好きです。
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幸子の、奈良ホテルへの恨みが笑えます。明治の終わりごろにできた伝統あるホテルですが、いちどくらい泊まってみたいと思うわけです。が、なかなかそうもいかないので、とりあえず南京虫がでるのだからやめておこう、という言い訳を用意しています。幸子に感謝しなければなりません。いまの、奈良ホテルの人々は、幸子のつらみをどのようにうけとめているのか、すこし気になるところです。。
(以下、未読の人は…)
この作品は、余韻がすべてです。読んでしまってから、余韻がゆるやかに広がっていきます。もうずいぶんまえに読みましたが、また読みなおしてみて感じたことは、色褪せない余韻そのものへの追憶でした。話の筋や会話など、細かいことなどすぐに忘れてしまいますし、波乱に富んだ作風でもありません。谷崎の好きな退廃もそれほど描いてはいません。
余韻がすべてです。エンディングの間も絶妙で、それが余韻としての価値を不朽のものにしました。よい文学というものは、読み終わってからこそ威力を発揮します。しかも、『細雪』は繊細な世界によって私たちの生、性、静、を撫します。おそるべき日本文学、というべきです。日本人としての豊かさを、あらためて考えなおすにもうってつけです。
戦前と戦後は、悲しくも断絶してしまいました。それは、戦争に負けたからではありません。もっとほかの要因の数々が、日本の戦前を見えないもの、感じられないものへと変えてしまいました。『細雪』は、潤一郎の意図を通りこして、21世紀に生きる私たちに戦前の新しさを教えてくれます。あえて、新しさ、といっておきます。
読み終わるのがさびしい、と感じる読者が多いようです。畢竟、それは私たちが日本人として生きているからではないでしょうか。私は、幸子も雪子も妙子も、鶴子も、悦子も、お春も、みな戦争を生きのびたのだと信じています。生きのびたからこそ、いまの日本があるのだと思います。
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読み終わりましたー!
納得なまとめかたです。
面白くて一気に読んでしまいました。
これを舞台化などしてるみたいだけど、これは表現が難しいように思いました。ちょっと見てみたいです。
今日から何を読もう?
Nov 2010
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最初に「細雪」読んだのは高校生の時だったと思う。高校生のときなんて、たぶん文字を眺めていただけだった。再読した今だからこそ面白い。4姉妹すべての女性に感情移入できる。あらゆる箇所に谷崎の視線がちらりと垣間見える、その描写の美しさ。
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相変わらず四姉妹(長女は東京なので、ほとんど三姉妹みたいな感じですが)のお話です。
いや~、昭和初期って、ものすごくゴタゴタした、暗~い時代だったという印象が私にはあるのですが、この姉妹の周りはそんなこと全然感じさせません。
上巻の頃は、雪子に同情していたけれど、下巻の雪子はひどい。
35にもなっていいも悪いもハッキリしないし、電話にも出られない! どんだけ箱入りよ。
妙子も、手に職をつけようとしてて偉いな、なんて思っていたのに、下巻を読んで本性がわからなくなってきました……。
そしてそして何より、この話の終わり方よ!!!
ビックリしました。
この文庫には巻末に注解だの年譜だのがあるので、物語の終わりが何ページあたりなのかハッキリとしない。
当然次のページも続くんだろうなと思っていたらアナタ!
今までずーっと読んできて、最後の一行で衝撃が走りましたよ(笑)
すごいな~、谷崎潤一郎。
この姉妹の話、まだもっともっと読んでいたかったなぁ。
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去年から細々と読み続け、やっと読了!!
上巻のときは読み続けられるか心配だったけど、いつの間にか蒔岡家のそれぞれの魅力に惹かれた。というか自分も家族の一員の気分で、雪子にイラッとしたり、妙子を応援したり、幸子と一緒になってハラハラした。
谷崎さんが書く戦前の裕福な家庭の描写は優雅で華やかで、儚い。
何気ない日常がとても魅力的に感じた。
個人的には妙子が好き。
あと貞之助はなんと良い旦那なんだろうと思った。
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このシリーズは上中下と巻を移るほどにおもしろくなっていって、読んで本当によかったです。
雪子にイラッとしたり、妙子の素行に呆れ果てたり、幸子の板挟み的立場を可哀想に思ったりとしているうちに、あっという間に読み終わってしまいました。
また最初から読めば、もっと楽しめる気がします。
ただ、背表紙でネタバレされてちょっと残念でした…。
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芦屋に住むええとこのお嬢様たちが、結婚するとかしないとかでごたごたし続ける話。
結婚してすで子供もたくさんいる長女鶴子、妹二人の被保護者幸子、三十越えなのに娘娘した三女雪子、自由奔放な末っ子妙子。
現代の常識にはない家柄意識とか女性観とか、当時の社会状況とか風俗とか。そこらへんを読む小説としてはかなり重みのある作品。
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個性がたった四姉妹で楽しく読めました。
当時の感覚に最初は馴染めませんでしたが、だんだんと世界観に引き込まれていきすらすら読むことができました。
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下巻がいちばんおもしろかったー。急に波乱万丈になってきたような。といっても結婚話とかなんだけど。なんといっても雪子のお見合いがおもしろかった。この時代の由緒ある家ともなるとほんとに結婚って大変なんだなあ、と。女は働かないのがあたりまえなので生きていくためには結婚しなきゃならず、親も娘をどうにか結婚させなければならず、このあたりがやっぱりジェーン・オースティンの小説に似てる気がする。でも、雪子の、よく知らない興味もない男といきなり食事したり出かけたりなんてしたくない、まして結婚なんてしたくもない、っていう気持ちはよくわかる。ラストで、姉の幸子も結婚するのなんてちっとも楽しみでもないと言いながらお嫁にいったっていうくだりがあるし、この時代はみんなそうだったのだ。雪子と妙子の親がわりの幸子は本当に大変だなあと。本当に心から、まるで妹じゃなくて娘のように雪子や妙子の心配をして愛情深い人だ。さらには夫にも気を遣い、ときに実の姉に不信に感じたり、そういう家族への愛情とかしがらみとかあれやこれや、おもしろいっていうのもヘンだけどおもしろい。あと、うまくいかなかったお見合いのあとや、うまくいきそうなお見合いの念押しで、雪子の義兄が相手の男に書く手紙がすごくいいなーと。礼をつくし、心もこもっていて、丁寧で正直で、すばらしい。細雪には手紙がたくさん出てきて、どれもいい手紙だけれど。神戸と東京を行ったりきたりしょっちゅうして、東京では帝国ホテルに泊まって歌舞伎座で歌舞伎を見て資生堂美容室でパーマをかけたり銀座で買い物してコロンバンでお茶して、とかがミーハー的に楽しかった。妙子が赤痢になるところがこわかった。この時代というか日本近代文学の名作といわれる小説って病気がたくさん出てくるような気がするんだけど。昔の時代に病気になるのはこわい……。
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いやー、面白かったー。戦前の関西の上流階級家庭の何があるってわけでもない日常を描いた傑作。次女の幸子はいつも本家と未婚の妹たちに挟まれて大変そう。三女雪子は全部で5回ぐらいお見合いしてる。四女の妙子が1番波乱万丈。この姉妹いつまでも見ていたいわ。
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四人姉妹それぞれのドタバタ劇がおもしろかった。自分が姉妹と同じ世代であり関西の馴染みのある地名が出てくるのも楽しめた理由かもしれない。戦前の上方上流階級の話だが、今とは違う苦労と華やかさが入り混じり、今と通ずるものもあるが、ほんの数十年の間の時代の移り変わりの速さを感じた。最後がこれでおしまい!?と何度もページを確認してしまった。
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関西の上流家庭に生まれた四姉妹のやりとりと、そこに彩りを加える四季折々の景観についての描写。それらが谷崎の絶妙な筆致と言葉遣いによって壮大な文学絵巻物として綴られている。この文章量にもかかわらず、雪子の煮え切らない態度にイライラさせられたり、こいさんの悪女っぷりに驚かされたり、すらすらと読み進められる。全く以て、驚くべき傑作。
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結局雪子の気持ちがあまりはっきり書かれておらず、それが推し量れるような終わり方もしなかったのが物足りなかった。
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上巻、中巻は絵巻物らしい風光明媚さが際立っていたようだったが、下巻は四姉妹それぞれの駄目なところというか、人間らしい至らなさが目につく書きぶりであったと思う。
姉妹の中でもわけてイデア的な存在だった雪子も最終行において、風に散った桜が地面に落ちたような、現実感を示されて物語が終わる。
まさに「物語」という感じ。今は古典とされるものも、当時読む人にはこの作品のような活き活きとした情景や心情のもとで読まれたのだろうなあということに思いを至らせるような。
面白かったです。