投稿元:
レビューを見る
アメリカ合衆国の現代史を裏づけでき且つ翻訳も良い良書。
謀略のみを画策する研究機関と思いきや、 「太平洋戦争の効率的な日本への爆撃研究から始まり、核兵器・米ソ冷戦・ベトナム戦争・湾岸戦争」に関係する政策提言をした実績の為、現代史におけるマイルストーン的な研究機関。ネオコンの一つの源流。 ある意味世界最高のコンサル会社の有力候補というべきか。アメリカ政府の戦争を中心とした政策への理論付けをするが故”キナ臭い”政策提言をし、批判されながらも、今なお、存在して生き残っているのは、非公式な行政機構の1つとしての存在価値を示している証。
聞いたことある著名なノーベル賞受賞者が在籍しているだけでも、やはり最先端の研究所であることは、間違いない。世界初の福祉分野・健康保険に自己負担に関する実証実験もした実績には、驚きである。
投稿元:
レビューを見る
合理的選択理論などをベースに、感情・思想を排してあくまでも理性で物事をコントロールするべきであるというランドの発想が広まっている。
それこそが理性のあるべき姿であり、正しいことなのだという、ランドのイデオロギーが世界に根付きつつある。(そうでない地域もある)
読んでいると、日本という国が彼らのような組織を擁する米国に勝つなど夢のまた夢なのだと打ちのめされた気分になる。
しかしあまりに一方的で盲目的な米国は本当に幸せな国になっているのか、そして永続的なものなのかと、疑問もわいてきて、いろいろと考えさせられるのであった。
お人よしな日本人が読むべき1冊である。
投稿元:
レビューを見る
ランドとは何かを知らず、タイトルに惹かれて読みました。
ランドとは27人ものノーベル賞受賞者を出した、軍関連のシンクタンクだそうで、ノーベル賞受賞者の数だけで興味が惹かれるものがあります。
この本を読んで、冷戦というものが、どういうものかよくわかりました。この本を読んで、「博士の異常な愛情」というキューブリックの映画がすごくみたくなりました。
また、アメリカがどの様にして合理主義になっていったのかという事にもレーガン政権の政策にからめ言及されていました。
含まれているテーマは非常に面白かったです。
構成が年代をおって、ランドに関連する出来事をみていくというものだったので、論点がはっきりしていない印象を受けました。
いずれにしろ、知らなかった知識をたくさん得ることができ、人をいかに説得するかという意味では、仕事にも役に立つ本だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
米国の頭脳の神髄たるランドの事績をまとめたノンフィクション。現代米国を司る考えの多くは、ランドに集まった頭脳から生み出されていることがよくわかった。
文体は、例によって洋文なので頭にはいりにくいので嫌いなんだけど、現代史の勉強という点で高評価
投稿元:
レビューを見る
米国の”シンクタンク”産業の走りとなった研究所の評伝。ただのかたちを作ること、つまり箱モノを作って人を突っ込むのではなくて、継続して世に影響を与えつづけるような”仕組み”そのものを創ろうとするならコンセプトのデザインあるいはもっと根本にある精神みたいなものをしっかり作る必要があることを感じさせられる一冊です。
個人的には、オペレーションズリサーチとシステムアプローチの違い等、いろんな実践的なリサーチ手法の差異を歴史的に追っかけられる点でも勉強になった点が高評価でした。
ついでまで。メタルギアにでてくるドクターストレンジラブの元ネタのさらに元ネタに当たるエキセントリックな人物も登場します。
投稿元:
レビューを見る
第二次大戦後に、アメリカ空軍の理論的主柱となるために創設されたシンクタンクの歴史と関連する人々の行動を羅列した作品。ランドが空軍の下部組織的なシンクタンクから始まり、独立し拡大していく過程で発生した内部対立を原動力として、一部の研究者が政権に入り逆に空軍の上位に立ってランドに仕事を発注させるようになる。しかしこれは自らの仕事を安定供給する方向で報告書を作成することにもつながっていく。そういったところは読み取れるのだが、著者が自分のどんな意見を伝えたくて本書を上梓したのかが、明確に伝わってこない。
はじめは空軍寄りでランドの意義を描いていたかと思うと、ランド内の対立を描き出し、ケネディの話をしていたと思ったらジャクソンやニクソンの話題になっていて、ふと気づいたらまたケネディに戻っている。ウォルステッターを描く立場もはっきりせず、陰謀史観的に語ったかと思うと、純粋な研究者の様にみなしたりもする。とにかく視点がはっきりせず、思いついたことをそのまま書いたように話題が点々とするので、全体像を順序だてて把握するのに苦労する。もう少し事実を整理して話題を絞り、構成に配慮すべきだったと思う。あるいは、こういう羅列していく形式がノンフィクションというものなのかも知れない。
色々不満を並べたが、ランドが現在までのアメリカの政策にどのような影響を与えてきたのかを通して理解するには、良い作品だと思う。
投稿元:
レビューを見る
「博士の異常な愛情」等の映画でおなじみの、フェイルセーフ・システムを生み出すまでの経緯が書かれた中盤が特に面白い。キューブリック好きは必読。
投稿元:
レビューを見る
冷戦体制のドクトリンを作り上げたシンクタンク「ランド」についての本。当初はソ連の主要都市をどうやって効率てきに爆撃するかを研究する機関だったのだけれど、巨大化して天才たちが出入りすることによって、少しずつランドの方向性が軍事から社会問題のほうに変化していくのが面白かった。
ただ、やはり第二次世界大戦末期から冷戦までの現代史を知っていないと、読むのはかなり難しい。登場人物がどの程度有名なのか、などの基本情報があればかなり面白い。カーチス・ルメイやマクナマラあたりの知識があればいいと思う。
アメリカの現在を作り上げた人物がどんどん出てくるし、インターネットの元になるアイデアを作り上げたという成果も目を引く。でも、失敗もかなり多くて、特にソ連崩壊後のランドはあまり機能していないようにも見える。国が金を注ぎ込めばスゴイモノができる、というのは幻想に過ぎないということか。
投稿元:
レビューを見る
「ランド」という名称が「Research and Development(研究と開発)」から来ていることは全然知らなかった。約500ページにわたるボリューミーな内容なので、僕自身まだ整理がつかないのだが(情報量が多い!)、アメリカがソ連と火花バチバチの時期にICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発を請け負ったのがランドだったという事実が特に印象に残っている(これしか覚えてないと言っても過言ではないのだが。なんせ情報量がry)。日本の戦後史ならばなんとなくわかるけれども、アメリカの戦後史となるとほぼノータッチだったので(高校の授業では語句をひたすら暗記するという勉強方法だったため)、その勉強にもなった。ランドという名称に惹かれる方、アメリカの戦後史について知りたい方にオススメです。ただ、1日2日で読み切れるものではないと思うので、じっくり忍耐強く読める精神の持ち主に限ります。
投稿元:
レビューを見る
[合理性の社]核戦略をはじめとしたアメリカの外交政策のみならず、そこに関係した人間の知性によって世界を代表するシンクタンクとなったランド研究所。政策助言という形で時に繁栄と安定もたらし、時に混乱と失政を招いたその秘された内幕に切り込みながら、第二次世界大戦後から21世紀初頭のアメリカの外交政策の形成過程を追った1冊です。著者は、「ロサンゼルス・タイムズ」の寄稿記者として意欲的に執筆に取り組んだアレックス・アベラ。訳者は、経済関係の翻訳に定評のある牧野洋。
まずは日本において耳にするシンクタンクの印象とランド研究所の内実がまったく異なっているところに衝撃を覚えます。単なる助言や分析にとどまるのではなく、政策や人材の引き出しとして機能している様子に、アメリカにおいて「学」が「政」とどのような補完関係を形成しているかが見て取れました。なんともものものしい邦題ですが、ランド研究所の足跡が事実に基づいて丁寧に記述されており、アメリカのあまり知られていない一面を知るのに適した作品かと思います。
特に核戦略におけるランド研究所、特にアルバート・ウォルステッターという日本ではあまり知られていない人物の影響力を知ることができたのが大きな収穫。核という当時の新たな現実を、どのような概念と言葉で実世界に落とし込んでいくかという点において、ランド研究所が本来的に持ついわゆる「合理性」というのは大きな武器になったのではないでしょうか。
〜「平和とは永遠に戦争に備えること」「国家安全保障という目標達成には絶え間ない技術革新が必要」「いつの時代でもアメリカの文化は全世界共通のひな型」——このように信じる人たちの精神をウォルステッターは高揚してきたのである。〜
あの人も、この人もランドの関係者だったんだと戸惑うこと間違いなし☆5つ
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
対日空爆戦略を指揮した男たちが作り上げた軍事シンクタンク―「ランド研究所」。
政治から経済まで様々な分野でアメリカ戦後史を陰に陽にリードし続けた天才たちの遺産は、ゲーム理論、システム分析、インターネット、合理的選択理論と、今なお私たちのマインドを支配し続けている。
初の本格ノンフィクション。
[ 目次 ]
第1部 ランド誕生―1946‐
第2部 軍産複合体に成長―1950‐
第3部 ケネディとともに―1960‐
第4部 ペンタゴンペーパーの波紋―1970‐
第5部 アメリカ帝国―1980‐
第6部 そしてこれから―2000‐
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
投稿元:
レビューを見る
湾岸戦争やイラク戦争のほか、いわゆるRMAによる国防総省の改革もランドによってもたらされた。
システム分析によって、ランドは書く分析という分野の草分けになった。すなわち核兵器をどのように配備するか、そしてそれがどれほど物凄い結果をもたらすかという研究を先駆けて行うことになった。
囚人のジレンマは国家安全保障と直結した、すなわち軍縮である。
投稿元:
レビューを見る
情報経営学のOR(オペレーションリサーチ)やゲーム理論から本書にたどり着いたのだが、このランド研究所がもともとはアメリカ空軍のシンクタンクだったとは…。それが研究者達の尽力により、ソ連封じ込め政策を代表するアメリカのシンクタンクに、さらには上述理論の他にシステム理論やインターネットなど世界へ貢献する理論・ツールを生み出す世界的なシンクタンクへと巨大化していく様が綴られております。
このランド発の考えやモノの恩恵を受けている全世界の人々が、ぜひ知るべき内容でもあると感じます。
投稿元:
レビューを見る
【由来】
もともとはGoogleの「第五の権力」をamazonで検索したら、アメリカのシンクタンク系のことを描いた同名の本が出てきて、そこからの関連本。
投稿元:
レビューを見る
誕生間もないアメリカ空軍の外部シンクタンクとして生まれ、国防総省、さらには軍事以外の分野にも進出したランド研究所の通史を書いた本。
「容赦ない定理のように、ランダイトは人間の存在について独自の見方をしていた。人間の存在で重要なものはすべて数字で表すことが可能であり、数字で表すことによって人類はその原動力、つまり自己利益を把握できるというのだ。」
これがランダイト(=ランド研究所の面々)の性格を端的に表しているのだが、なんか『ベスト&ブライテスト』みたいな話だな、と思ってしまう。それもそのはず、彼らはケネディ時代にはマクナマラに接近しているし、後年には「ネオコン」の母体ともなった。
ランド研究所の性格を確立したのがアルバート・ウォルステッターで、この本は、半ばウォルステッターについての本だともいえる。
数理論理学者であり、ランドにおいて核戦略家となり「フェイルセーフ」の概念を生み出したウォルステッターは、「数十年にわたってランドというシンクタンクを定義づけることになる数値的、合理的、実証的手法」の教祖的存在であり、その門徒たちが「ネオコン」の中核となった(ドナルド・ラムズフェルドやら)わけだが、普遍的な完全無欠な存在などではない。もちろん。
ソ連共産党の機関紙プラウダがランドのことを「科学と死のアカデミー」と呼んだのは伊達ではなく、ウォルステッターは新型兵器の開発を訴えてロビイングを繰り広げ、その中には「戦場にいる兵士の精神状態を混乱させる物質についての研究」も含まれていたという。
もう一つの「ベスト&ブライテスト」という直観的な理解はたぶん正しいのだ。
アフガニスタンのゲリラたちに武器を供与してソ連に抵抗させた結果がめぐりめぐって反米テロリストを生み出したのを見ると、ベトナム戦争から何も学んでいないのだろうな、と思ってしまう。