紙の本
山岳小説の超傑作。
2016/12/11 10:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
山岳小説の超傑作。純粋な山岳冒険小説だが、世界第2位の高峰・K2で栗本聖美がロープを切った理由という謎解きの楽しみ、無謀なアルゼンチン隊3名の引き起こす混乱、そして日本エレクトロメディカル社の権力争いまで絡めた推理小説的要素も十分。死の世界といわれる8000m超の高山での気象との闘いの凄まじさは言うに及ばず、その迫力はまさに一緒に山を登っている感じにさせてくれる。恋人をK2で失った心の痛手から立ち直れない矢代翔平、雪崩の恐怖から山から遠ざかった竹原充明、60歳を過ぎてから突然山に目覚めた心臓に欠陥があり心臓ペースメーカーを使用する会社会長・神津邦正の3人を通じて「何故、山に登るのか」、「登山の意味とは何か」といった哲学的問題にも踏み込んでいる。商業登山の実態や問題点、酸素を使う意味とか、地上の1/3といわれる低酸素領域での諸問題など、私の知らなかったことに関しても実に良く書き込まれており参考になった。特に、冒頭に提出された謎、栗本聖美が何故自分でロープを切ったのかという謎が、何とアッセンダー(登高器)の欠陥による事故であったという結末は、著者自身がクライマーなのではと推測されるのだが、その辺の情報がないのが残念。もとい。何しろ一気読みの面白さではあるが、3パーティがブロードピークの頂上稜線上で暴風雪・雷に包まれて絶体絶命の窮地に陥る下段の迫力はハラハラ・ハラハラの連続です。
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:坦々麺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
時間つぶしに入った本屋で表紙のk2の写真に魅せられて読んでみたが、大当たりだった。万札をくずす為に買ったスクラッチで50万当たった気分にしてくれた。一気に笹本ファンになってしまった。地球上で最も過酷なヒマラヤのデスゾーンには足を踏み入れることはないかと思うが、征服した者が得られる特権を味見できたような気がする。
投稿元:
レビューを見る
山に登る人は、山が好きなことと同時に、登頂することに何か決意を持って登ることが多い。
登っていて気付く。登頂という目標を実現できるか否かは、自然とのたたかではなく、弱い自分との戦いであること。
この作品は映画化希望!
投稿元:
レビューを見る
人には還るべき場所がある、作中の人物達はヒマラヤの崇高な頂きに向き合うことでその意味を知る。次々に襲いかかる困難をはねのける強い力と熱い勇気、読んでて力んでしまう作品でした。
投稿元:
レビューを見る
今まで読んだ山岳小説の中では一番だと思う。
ヒマラヤの情景と、山にかける人間の心の中が瞼の奥に浮かぶ。
山岳小説が好きじゃない、読まず嫌いな人でも、手にとって読んでみれば色々と思うところが出てくるんじゃないかなと思う。
投稿元:
レビューを見る
2011年07月 01/041
K2へのアタックを試みる山岳小説です。登る気持ちを高めるために読んでみたのですが、普通におもしろい。もっと山にチャレンジしてみたくなりましたが、そのために多額のお金がかかるよなーというのも感じさせられました。
投稿元:
レビューを見る
スケールの大きさ、山の素晴らしさ、自分が知らないことばかりだったけれど、その情景に圧倒された。なんと言うか、この文章もうまく書けない。とりあえず読んでもらいたい作品。
作品の中の言葉一つで言うなら「魂の糧=生きることによってしか表現できないなにか」これかな。それ以外にも、色々な心に残る文章が各所にちりばめられている。
色々なことがうまく行ったり悪い方に重なったりしていて、それが小説だからなのか、私の知らない山での出来事だからなのかよくわからなかったことは残念。あとはエピローグが読みたかったかな。
あともう一つは、作品中に出てくる経営者の神津という人。この魅力的な人物像も、この作品の魅力の一つだと思う。
投稿元:
レビューを見る
大ボリュームながらも、久しぶりにワクワクして読みすすめられた一冊だった。文庫本の装丁が「白銀ジャック」(東野圭吾)っぽかったけど、東野本ほど軽くなく、より壮大で良かった。
笹本稜平はお初だったけど、読みやすくていい作家さんという気がする(つづけて読んだ「春を背負って」も佳作)。とりあえずは、氏の山岳系を押さえていこうか、と思う。
投稿元:
レビューを見る
還るべき場所。いい言葉だなあ。寒いのは苦手だから、危ないのも高いのも苦手だから、絶対に冬山に登ることはないけれど、山への愛が深まった。人生云々、夢云々は、共感できたし、ああ、今日も頑張ろうと思えた。ドラマティックな小説でした。山岳小説で一番のお気に入りかも。
投稿元:
レビューを見る
序盤は単純な青春小説を思わせたが、後半は冬山の魅力と怖さが十分過ぎるほど伝わる。一代で大企業を作り上げた会長の言葉がどれも深くて良い。
投稿元:
レビューを見る
読んだことのない作家だったけど、山岳小説好きなので読んでみることに。
ちょっと専門用語が多くて、ほとんどその用語の解説をしてくれないので、不親切な感じは否めないかな。
登場人物もそれぞれ特徴を持たせてるんだけど、感情移入が出来るほどのものではなかったかなぁ。竹原がわりと好きだったけど、中途半端な感じ。
でも、K2という山の魅力をこれでもかと紹介してくれて、やっぱり山登り小説は面白い。
それに商業登山という世界も興味深く、お金と時間があれば、もしかして素人でもヒマラヤにも登れるのかと思うと、いつかそんなチャンスが自分にもあったら凄いぞと考えつつ読むのが楽しかった。
投稿元:
レビューを見る
初めて読んだ本格的な山岳小説。K2とブロードピークが舞台なのだが、登山という行為の深みを垣間見た気がする。
純粋なアルピニストの主人公が、公募登山ビジネスという人間関係が複雑に絡む世界に足を踏み入れる。その時の苦悩、心情の変化の過程が非常に興味深い。
ところどころで出てくる、登場人物の人生観も新鮮だった。その一人が山に登るのは、「魂の糧」、「生きることでしか表現できない何か」を得るためらしい。自分もこの先生きてれば、それが何かわかるときが来るんだろうか。
投稿元:
レビューを見る
人が最も大切なもの、最愛の人を失い、絶望の淵から甦っていく。
生きる意味とは?
生とは?死とは?
最も心に残った登場人物の言葉→「どんな目標への挑戦でも、いや人生そのものに対しても、絶望というピリオドを打つのは簡単なことだ。しかしそれは闘い抜いての敗北とは意味が違う。絶望は闘いからの逃避だよ。あるいは魂の自殺行為だ」
重い言葉です。
日頃考え、そして、最近ようやく少しだけですが実感している事ですが、マイナスの言葉を吐けば吐くほど、マイナスの方向になっていく。不思議なものです。
上の言葉はしっかり胸に刻んでおこうと思います。
投稿元:
レビューを見る
登山家の自伝ではないので、変な偏りも無いし、サクッと読める。
チャレンジし続ける姿を描くのは、登山小説ではよくあるパターンではあるけど、高齢になってからというのは新しい。
でも2回は読まない
投稿元:
レビューを見る
時代が変われば、山岳小説も変わる。現在では、素人登山家が8000m峰の頂に立つことは、必ずしも不可能ではない。エベレスト、チョー・オユー、ブロードピークといった、そんなに難しくない8000m峰では、素人登山家の夢を叶えてくれる公募登山が行われている。この小説の舞台は、そんな公募登山隊である。でも、主人公である翔平の還るべき場所は──世界で最も困難な山、地球上でいちばん大きなとんがり帽子、K2だ。
公募登山の様子が実にリアルに描かれていて、非常に参考になる。これはもちろんフィクションであるけれども、山頂に至るルートは本物であろう。著者がどのようにして、これだけの情報を収集したのかが知りたい。それから、還暦を過ぎてから山登りを始めた野心的な実業家、神津の台詞が深い。昔も今も、8000m峰の頂に立つことは、人生を賭ける価値のあることなのだ。私も、K2とは言わないまでも、いつかエベレストの頂に立ってみたいものだと思う。でも、その前にまだ、登るべき山がたくさんあるなぁ。