紙の本
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの名作です!
2020/05/18 09:45
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イギリスの文豪チャールズ・ディケンズが1860年から61年にかけて発表した長編小説です。同書は、孤児である主人公ピップがその少年時代から青春時代を回想のうちに語るといった半自叙伝的な形式が用いられており、そこにはディケンズ自身がその経験をもとにして書いた半自叙伝的な小説とも言われています。内容は、主人公のピップが墓地で脱走した囚人に出会うという場面から始まります。ヒップは、彼に頼まれ、食料とヤスリを家から持ち出し彼に与えます。また、ピップはミス・ハヴィシャムの館に定期的に招かれるようになり、彼女の養女で冷徹な美少女・エステラに焦がれるようになっていきます。義兄ジョーの弟子となった後、ある人物から巨額の遺産がもたらされることが判明し、紳士修行のためロンドンへ向かいます。ピップは遺産がミス・ハヴィシャムによるものと信じ、エステラの結婚相手として自分を紳士にさせるのではないかと期待します。主人公のヒップがどうなっていくのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。なお、河出文庫からは上下2巻シリーズで刊行されてます。
紙の本
良書です
2016/01/17 20:44
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投稿者:ロングボーダー - この投稿者のレビュー一覧を見る
チャールズ・ディケンズの小説の中でも評価が高い作品です。この小説は別の方が翻訳したものが幾つか出ています。河出文庫のは最も新しい翻訳です。ストーリーはネタバレになるのであまり書きませんが、肩身の狭い環境で育った孤児である主人公にいずれ莫大な遺産を相続できるという知らせが入るが、遺産の提供者は誰かわからない…という内容から始まり、ドキドキワクワクしながらページをめくることができる小説です。
おすすめですよ!
電子書籍
ドン底から抜け出したはずが
2021/09/25 12:03
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
最下層を這い回っていた少年・ピップの、サクセスストーリーかと思いきや…義理の兄ジョーの、「世の中は繋ぎ合っている」というセリフが身に沁みました。
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田舎の孤児ピップ少年が大富豪に見い出される物語。
話の大筋がしっかりしているうえに、サイドストーリーも丁寧に書かれていた。出来事のつなぎ方が自然で、巧妙で、しかも次々と起きるので読者を飽きさせない。さすが文豪というか、上品な文章だった。『高慢と偏見』を読んだときも上品な文章だと思ったが、古典の名作って別に凝った文体でもないのに、人物・風景・感情描写(要するに全部。笑)がしっかりしていて、その3つのバランスがいいからそう感じるのかもしれない。
大いなる遺産の前巻は子供時代の話が多めだった。なぜかわからないが、僕は子供時代というのが妙に好きで、色々な小説を読んでいても子供時代のパートを一番好きになることが多い。(『悪童日記』や『こちらあみ子』は子供の話だし、『わたしを離さないで』も子供時代のパートが一番好き。)そういうわけで上巻はピップのほのぼのした子供時代が最高だった。中でもピップ少年と鍛冶屋ジョーの友情が心温まった。この二人は魂で触れあっていた。成長したピップがどうなるのか、下巻が楽しみだ。
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ピップは、裕福でなくても平凡な生活を送っていたのに、エステラにふさわしい紳士になりたいと願うあまり、今まで仲の良かった優しい鍛冶屋のジョーが下品でがまんできなくなるのが悲しい。
ピップは成人後遺産を得る権利を得て、ロンドンへ移住。
物語は読者を飽きさせない展開で最後まで進む。間違いなく面白い。
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序盤の純粋無垢なピップと、エステラに馬鹿にされて自分の生活を恥じるようになるピップ、莫大な遺産を手にして以前の生活環境を見下すピップの様子が描かれる。
新しい世界を知って興味や憧れを持った時、自分の慣れ親しんできた世界を相対化して比較検討するための尺度を得る。これまでは測るという発想そのものがなかったが、突然自分の身の回りを測るようになる。(自分にとっては)新鮮な外部を基準にしているのでそれらはひどく下品で価値のないものに思える。憧れに向かっているというだけで自分がなんだか崇高に思えて、同時に周りの人がその尺度を持っていないことがもったいないと思うようになり、自分の尺度を押し付けようとしてしまう。
身に覚えのある心の動きが描かれていてよかった。
家だとイキイキしてるが職場に近づくにつれて感情を失っていくウェミックが印象的。
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「プライドって一種類だけじゃないのよーー」
「一種類だけじゃないの」ビティーは言葉を続けた。「ジョーは今の身分でちゃんと立派に能力を発揮して、みんなの尊敬を受けているでしょ。だからプライドがあって、そこから引き上げられたくないかもしれない。本心を言うと、わたし、そうだと思うの」
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うーん、何から書こうかなあ。
面白いよ。
この本を読もうと思ったのは実はちょっと前に読んだカルロス・ルイス・サフォンの「天使のゲーム」がいまいち良く分からなくて、「天使のゲーム」の中の主人公が子供の頃から大事にしていたこの「大いなる遺産」に鍵があるのではないかと思ったから。なるほどねえ。鍵かどうか分からないけれど、河の下流の沼地近くの最底辺の生活、お屋敷の中の時間が止まったような老婆…。似ているモチーフはある。
主人公ヒップはテムズ川の河口の沼地に近い所で、姉とその夫ジョーと暮らしていた。両親は亡くなり、癇癪持ちの姉に虐待されながら育っていた。回りの大人にも馬鹿にされ、いつも嫌な思いをしていたが、鍛冶屋である姉の夫のジョーだけがいつも友達のように暖かく接してくれた。
ある時、大きなお屋敷に呼ばれ、そこの女主人の前で遊ぶように言われる。その女主人はかなりの老婆なのに、黄ばんだウェディングドレスに身を包み、時が止まった暗い部屋で陰気に暮らしている。そして、その傍らにはエステラという美しい少女がいた。老婆に命令されるがまま、老婆の目の前でエステラとトランプをしたり、老婆を支えて部屋中をぐるぐる歩き回ったりしたあと、報酬をもらうということが何回かあった。エステラはものすごくお高くとまっていて、ヒップを下品だと馬鹿にしたので、ヒップは泣くほど傷ついたが、エステラに恋する気持ちは抑えられなかった。そして、その時から自分を小さい頃から大事にしてくれたジョーが教養が無くて下品であることを恥ずかしく思うようになってしまった。
お屋敷の老婦人に気にいられたヒップはある時、その大いなる財産を貰えること、そしてジェントルマンになるためロンドンに出て教育を受けるように弁護士を通じて告げられる。
エステルに相応しい男になるためにジェントルマンになることを夢見ていたヒップは、突然の幸運に意気揚々とロンドンに向かう。ジョーとの別れの時、愛するジョーと別れることを辛く思う反面、下品なジョーを恥ずかしいと思う自分の薄情さに罪の意識を持つ。
ああなんかこの気持ち分かるな。
次にジョーに会ったときにジョーが自分に相応しい人間であるよう、ジョーにももっと勉強してほしいと願うのだが、ジョーはもっともっと誇り高き人間だということにこの時は気づいていなかった。
夢見たロンドン。夢見た都会。
都会の現実とは?紳士淑女の現実とは? 暗く黴臭い部屋。死刑囚から宝飾類を頂く趣味の悪さ。お金への執着。爵位への執着。
先が見えないロンドンでの生活をヒップの同居人ハーバートの明るさが救う。
そもそも、お屋敷の老婦人(ミス・ハヴィシャム)とエステルとは何者なのか?どうしてヒップが気に入られて財産を受け取ることになったのか?
もしかして、小さいころ沼地にいた脱獄囚に命令されて食べ物とヤスリを与えたことに関係あるのか?
大きな謎と十代(?)の少年が最底辺の生活から最高の生活へ棚ぼたで抜け出す過程の成長が面白い。
一番最近読んだイギリス文学は「高慢と偏見」で、上流社会の視点から書かれていたが、この小説は下流社会から上流���会を見て書かれているので、同じイギリスでも目線が違っていて興味深い。