紙の本
わがままし放題、自由気ままの「守り人」
2011/08/16 16:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
海外赴任の多い独身のミキヒコ叔父が
所有する都内の一軒家。
そこに風通しのために住むことになったアカネは、
キッチンの床下に眠るミトンさんを起こしてしまいます。
身長50cm程度のミトンさんは、おばあさん。
赤い服を着て、「オレ」と男言葉でしゃべり
果物が主食で、わがまま。
彼女は「守り人」だというのですが
茜には辛い展開です。
頼りない恋人の庄司くんは
ミトンさんを受け入れることができない狭量さを見せ
他に好きな人ができたと去っていきます。
しかも、すぐに戻ってきます。
その理由もなんともナサケナイ。
でも、大学時代の友人みほさんと再会し
彼女が抱えている「大変なこと」に衝撃を受けつつも
いい関係を築きます。
ミトンさんも自由気ままに動き回ります。
不思議な存在の叔父や母の秘密が明らかになったり
ミトンさんを探して床下の世界を覗いたり。
話の本筋もいいのですが
会社の先輩の目黒さんや庄司ママなど、
周囲の人々のへんてこりんさもおもしろい。
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うちにもミトンさん来てくれないかなぁとかそんなことをついついむにゃむにゃと考えてしまいます。
読み終わってかなりたつのに、この本のことを考えると、いつもそう。
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大切な“小さい人”。離れてゆく恋人。眠り続ける赤ん坊。迷える私たちの前にあらわれた、身長50センチのおばあさん。今日も幸せでありますように―東直子が贈る、愛しい人々の物語(「BOOK」データベースより)
やわらかくあたたかく、大きなものを描くお話。
とっても東さんらしくて、これ、好きだなぁ。
「放り出すのも、勇気がいるよ。目の前で、息してるんだから」
「そうよね、目の前で息してたらね」
「ミトンさん、すてきー。すてきに重いー。すてきに抱きつくー」
「今、ここにいてほしいのに、いない。いないと、いいも悪いもなくて、ただ、いない人」
ただ、じりじりと待つばかりの日々。自分ではさわれない場所で変化は起こっている。核心にさわれない苦しみ。
「世界は目に見えてるものたった一つじゃないよ。一人の人間の感覚で捉えられる世界っていうのは、世界のほんの一部なんだ。人によって感受できるものが違うから、一人ひとりの世界は違うんだ。一人の人でも、どんどん世界は変わるんだ。感受できるものが、生きているうちにどんどん変わるから」
「愛は、声に、出さないとね」
今の自分の心に響く言葉もたくさんありました。
今、この時に、この本に出会えてよかった。
ミトンさんたちの歌もステキだったので覚書。
はだしのそこにしらせをうけて
まいまいかぶりあたまにかぶり
おもいのたけはひとりのもので
ひとりのものはきえてなくなる
うまれてくるよおなじからだで
みてきたことをはなしておくれ
しってることをもやしておくれ
ひとりのみずはぜんぶながれる
ほのおのいろははじめてのいろ
くらいけしきでみみをひらいて
おまえのくちはほしをつなげる
ねむらないかおゆびにからまる
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+++
身長50センチのミトンさんは、アカネの秘密の同居人。わがままで謎の深いミトンさんと、そこに集うどこまでも優しく独創的な人々を描いたほの甘い長編小説。
+++
ミトンさんありきの物語である。アカネが引っ越した先――ミキヒコ叔父さんの家――の床下に、ミトンさんはいたのである。ひと目見た時からわたしの頭のなかではミトンさんはムーミンのミイである。赤い服といい、その小ささといい。果物好きでわがままで、害を為すわけではないがいいことを運んできてくれるわけでもない。恋人は浮気をして離れていくし、間違って電話してしまった友人のベイビーちゃんは眠ったままだし、ミキヒコ叔父さんとはなかなか電話がつながらない。それでもミトンさんがいるからこその巡り合わせのような毎日のなかで、アカネはだんだんミトンさんに心を移していくのだった。あちこちに散らばっている点と点と点と点を――ときにあっちへこっちへ飛んでいくようでありながら――ひと針ひと針縫い進め、気づいてみたらいびつながらも「〇」になっていた、としみじみ思う読後である。ミトンさんのようなものはだれの心のなかにでもいるのではないかと思える一冊。
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東さんの作品はいつも独特の世界なんだけど、今作は割とすんなり入り込めた。
ミトンさん。
私のそばにいたら、私はどうするかな。
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毎日新聞社が発行している月刊誌「本の時間」に、2010年7月から2011年5月まで連載された作品。
物語の成り立ちを考えてしまうと、ミトンさんという存在がどこからやってきたのか、もしかすると意識下の存在なのかと思ってしまう。中盤から登場する茜の友人みほさんによって示唆されるのは、もしかするとミトンさんなる者はこの世に生れ出てこなかった魂のような存在なのかもしれない。
喪失感を抱きながら生きている日々とたちの心の欠落感を埋める存在、そのシンボルのようにも思える。深読みすればかなり哲学的な主題のように思える。
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東直子の新刊。
ミトンさんという小さいおばあさんと過ごす日々。庄司くんや周辺の友だちと関わるずっと前に、お母さんやミキヒコ叔父さんとの関わりもあって……。
子どもを亡くした茜の友だちに庄司くんが贈った詩にはぐっときた。
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現実とも言い切れない不思議な世界観のお話。
普通の感覚で言えば”幸せ”とは言えない人が多くでてきますが
ただ悲しい、辛い、では終わらないお話です。
読んでいくと直接的に励ましたり元気つけたりする
言葉はないように思えるのになぜか心にじんわりしみるような気がします。
感想もずいぶん抽象的になってしましましたが
私の解釈ではここまでが限界です。
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ミトンさんの存在が強烈過ぎる。
ミトンさんは身長50センチのおばあさん。と言うと、なんだか可愛らしい小人みたいだけど、実際は不気味で正体不明な小型生物。可愛げがあるんだか、ないんだかよくわからない。
ウンパルンパや鳴家のような愛嬌があるわけでもなく、何を考えているのかよくわからない奇妙なミトンさん。イメージではムーミンのミーを、ホラーテイストのしわくちゃのおばあさんにした感じ。
まったく読めない行動をとる彼女と、それを割とすんなり受け入れてしまう主人公達に「物分りが良すぎないか?」と違和感は感じたものの、なんとなく読み進めていくうちに自分自身もミトンさんの存在を受け入れてる事に気付く。
鳥の足につかまって飛んでいったシーンには思わず笑ったけど。どういう事やねん。
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あっという間に読めた。あちこちに散りばめられた比喩が斬新でアクセントみたい。ミトンさんはやっぱりムーミンのミィ(?)のイメージ。ミキヒコ叔父さんは何となくハウルの動く城のハウルみたいなイメージだった。ミトンさんとの不思議な話。
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とっても不思議なお話なのだけど、好きな感じです。ミトンさん、始めは気持ち悪かったのだけど、どんどん親しみが持てて行きます。本の装丁も可愛らしくて好きです。
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コロポックルとの不思議だけど楽しい生活
みたいなほのぼのした話かと思って読み始めたら
わりと取り巻く人々との関係がごたごたしてきて
展開も不思議な方向に行って
予定の範疇を超えたので申し訳ないが低めの評価。
どの登場人物も空をつかむような、するっとどこかに行ってしまう
不安定な存在に感じた。
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童話的な世界をふわりと描く歌人による長編小説。海外に赴任している叔父さんが使わせてくれた家には、身長五十センチのおばあさんがいた。その小さくて赤い服を着た手のかかる人を、主人公は勤めのかたわら世話をする。
おばあさんは鳥の足につかまって飛んでいってしまう。そんなめんどくさい人だが、いなければやはり寂しい。心やさしい物語。
(「週刊朝日」 2011/11/11)
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東直子の最新刊。
主人公の茜は叔父のミキヒコの海外赴任中に叔父の家の管理を頼まれる。家を訪れたその日に床下を開けると、そこには子どもくらいの大きさのおばあさんが眠っていた!名前はミトンさん。
茜とミトンさん、そして彼らを取り巻く周り人々の日常を独特の感性で綴った作品です。人々の感情を繊細に描いていて、心に響く言葉がいくつかありました。東直子の掴み所のないファンタジーの世界も楽しめてバランスの良い作品だと思います。
文中の言葉で心に留まったもの。
"気持ちにいらないものはない"
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叔父さんの持ち物で今は空き家の家に、引っ越すことになった。
その家の床下にいたのは、身長50センチの赤い服を着た小さなおばあさん、ミトンさんだった。
冷やしたフルーツを好み、あかねを振り回しながらも
周辺の人たちとの交流と、庄司くんとの恋の行方も
ミトンさんからいろんなことをもらった日々
想像だけど、ミトンさんってムーミンのリトルミイの印象が強いんだけど。
多分実際見たらまじで怖いと思う。
不思議でのほほんとしてて、子供の頃に出会っていそうな話)^o^(