紙の本
毛沢東主義の暗部を見つめて。
2012/01/27 16:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまごろう1963 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまであまり明らかになってこなかった「大躍進」の暗部を、共産党の資料を基に具体的に並べた。これでもかと続く悲惨な事例は、読んでいて落ち込むほどの内容。だが、現代の共産党につながる思考様式なども散見され、中国に関心のある方は、読んでおくべき一冊。
クメールルージュなど毛沢東主義者は、歴史的にも残虐な行動が多いとされるが、その背景にはこの「毛沢東による虐殺」があったことが、改めて痛感させられた。
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読んでいる途中で何度も表紙を閉じた。ホロコーストはナチスドイツだけではない。こちらは自国民の生活を破綻させた意味では、罪深い。
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目 次
はじめに―「四千五百万の死」が意味するもの
関連年表
中国 一九五八年(地図)
第1部 ユートピアを追い求めて
第一章 毛沢東の二人のライバル
スターリンにひれ伏す/フルシチョフを小馬鹿にする
第二章 競い合い開始
レーニン廟に立つ/東風は西風を圧倒する
第三章 階級の粛清
「大いに意気込もう」/忠実な下僕、周恩来/魔女狩りの始まり
第四章 集合ラッパの合図
デタラメな“土掘り”合戦/“キリング・フィールド”の先駆
第五章 「衛星を打ち上げる」
省同士の競争心を煽る/あり得ない数字に酔いしれる
第六章 砲撃開始
中ソ共同艦隊構想に激怒/金門を砲撃し人民の意欲を高める
第七章 人民公社
共産主義への黄金の架け橋/軍隊式に働かせる/最後の“やけ食い”
第八章 製鉄フィーバー
社会主義の聖なる原料/村から農民が消える
第2部 死の谷を歩む
第九章 大飢饉の前触れ
餓死者は「貴重な教訓」/退却は許されない
第十章 買い漁り
モスクワへの大量発注/“危ない食品”を輸出
第十一章 「成功による眩惑」
賢い王と悪い臣下/「半分が餓死した方が得策」
第十二章 真実の終わり
廬山会議の“爆弾”/内外の共謀を疑う/彭徳懐、仕留められる
第十三章 弾圧
幹部たちの忠誠心比べ/三百六十万人に右傾分子のレッテル
第十四章 中ソの亀裂
顧問団、引き揚げ/「犯人はソ連」の神話
第十五章 資本主義国の穀物
死に物狂いで外貨獲得/見栄、プライド、恐怖/
途上国をめぐる縄張り争い/援助は一切お断り
第十六章 出口を探す
モデル県での大量飢饉/劉少奇、天啓を受ける
第3部 破壊
第十七章 農業
食糧モノポリー/指令経済の代償=生産量の水増し・耕作地の消失・
流通の破綻・繊維製品の欠乏・家畜頭数の激減・農具の劣化
第十八章 工業
ノルマに追われ粗製濫造/現代版“苦力”/大赤字でも倒産しない
第十九章 商業
無駄の積み重ね/どんどん長くなる「行列」/インフレの進行/
サービスなしの「服務組」
第二十章 建築
巨大モニュメント狂/歴史遺産がめちゃくちゃ/丸裸にされた農村/
水利事業で故郷を失う/墓を暴き、亡骸を「肥料」に
第二十一章 自然
屈服させるべき敵/森林の濫伐/大洪水、旱魃/
�� 土壌のアルカリ化、塩化/大汚染/スズメ退治の愚行
第4部 生き残るために
第二十二章 飢餓と飽食
“カースト”に応じて分配/「豚幹部」
第二十三章 策を講じる
欠乏対策=コネ、賄賂、物々交換・配給名簿をごまかす・こっそり商う・
配給票の偽造・闇市場・二束三文で子供を売る
第二十四章 ずる賢く立ち回る
「共産風」がすべてを奪う/生と死を分けるもの
第二十五章 「敬愛する毛主席」
「大躍進」を疑った人々/ドグマと噂/空しい陳情
第二十六章 強盗と反逆者
農民の最後の手段/なぜ大暴動が起きなかったのか
第二十七章 エクソダス
都市の人口爆発/ゴースト・ビレッジ/退去命令/越境する難民たち
第5部 弱者たち
第二十八章 子供たち
名ばかりの保育園ラッシュ/生徒たちの勤労動員/受難のとき/
「苦しみをくぐり抜けて」/出生率が半減
第二十九章 女たち
フルタイムで働く/婦人病/性的虐待/売春、人身売買/
試練に耐える力
第三十章 老人たち
家族の解体/“役立たず”の末路
第6部 様々な死
第三十一章 事故死
安全軽視は宿痾/労働災害
第三十二章 病気
医療現場の崩壊/伝染病は即座に軍が隔離/「集団化」が病気を作る/
泥土を食べる/餓死者
第三十三章 強制労働収容所
「労改」が生産に貢献/「私立刑場」の乱立
第三十四章 暴力
「鶏を殺して猿を脅す」/拷問の記録/ゲリラの“新兵訓練所”/
プレッシャーの連鎖/弱者を“間引く”/ナチ式のクラス分け/
「袋小路に追い込まれ、自殺」
第三十五章 戦慄の地
飢饉の代名詞―河南省信陽地区/恐怖政治―甘粛省通渭県/
死亡率一〇パーセント―四川省重慶地区/“ミニ毛沢東”たちの欺瞞―
貴州省赤水県/荒涼たる穀倉地帯―山東省斉河県/逃げ道なし―安徽省
第三十六章 人肉を食べる
第三十七章 死者の最終集計
亡命幹部による数字/「正常死」と「非正常死」/
平均死亡率から割り出す/人口統計学者によるベースライン
終 章 文化大革命への序奏
資料
謝辞
訳者あとがき
解説 毛沢東の誤りを認めよと説く党幹部がいる 鳥 居 民
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毛沢東、そして彼が率いた中華人民共和国の人民公社建設の過程でどれだけの国民の犠牲があったかをあぶり出す著書です。
ヒトラーなど様々な政治的国民への搾取が歴史的にあるなかで、本書のタイトル通り、
この時代に中華人民共和国に生まれた人々の大半が不幸としか言いようがない。
しかし、決して時代を切り取っただけでなく、流れとして中国に存在するものは必ずあるはずである。
過去の中国、今の中国にも共通する政治と国民との関係を踏まえて中国を考えるのには最適な一冊かもしれない。
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毛沢東政権時代の中国でなにが起こっていたかを、膨大な
資料をもとに丹念に追って行った入魂の書。
書かれている内容があまりに悲惨で、本当に起こった事だとは
思えない程。
しかし、史実だとすれば、
知っておいた方が良いのではないかと思う。
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中国各省、各県の「檔案」と呼ばれるファイルを丹念に読み込み、記録に残されたデータに基づいて「毛沢東の大飢饉」の内実を検証しようという試み自体は素晴らしい。参考資料だけで本書の68ページ分、ちょっとした小冊子くらいある。文字通りの「労作」だ。でも、中身はからっきしだね。資料を調べたら調べただけ書いちゃうし、資料にないことは「詳らかではない」のひと言で済ませてしまう。資料の「編集」、資料にはない間隙を埋める「取材」なくして、一読に値するノンフィクションとはなりえないだろうに。世上の評価が高い1冊だが、私にはさほどのものとは思えない。同じ資料を使い、もっと取材を重ねれば、この本の3分の2の分量で「毛沢東の大飢饉」の悲惨さ、愚かさをもっと効果的に伝えることができたのではないかと惜しまれる。
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毛沢東の大躍進政策、
何度も何度も読んできているが、档案館の資料を基に4500万人が餓死したと推計している。
档案館の資料は30年、50年で解禁期日を迎えているそうだが、文革の資料が解禁される日が来るだろうか?天安門の肖像画、毛沢東記念堂が撤収される日が来るだろうか?
2011年1月11日、天安門広場の博物館前に設置された9.5メートルの青銅製の孔子像は、100日余り経った4月21日片づけられ、博物館内の彫像園に移された。
毛沢東と孔子、
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妄想するは楽しい。暇さえあれば妄想して楽しんでいる。個人の範囲で
楽しんでいる分にはいいが、これが一国のトップに立つ人間の誇大妄想
となると途轍もない悲劇が起こる。
蒋介石の国民軍を台湾に追いやり、共産主義の道を歩み始めた毛沢東
の中国で起きたことが正にこれだ。
スターリンに軽んじられたことが原因なのかは判然としないが、旧ソ連への
対抗意識から毛沢東の中国は独自路線を突っ走る。
ソ連の対抗相手がアメリカなら、中国は「イギリスに追い付き追い越せ」。
農業から工業まで、到底達成出来ない数字を弾き出し、産業も経済も
とことんまで落ち込む悪循環が始まる。
灌漑工事だ、ダム工事だ、と言って農民を工事に駆りたて収穫期を逸した
作物は田畑で枯れていく。それでも「ノルマ以上の収穫がありました!」
なんて報告するから、国は益々買い上げ量を増やす。
「鉄の増産だ~」と言っては、鍋・釜の調理器具はもとより農機具までも
溶鉱炉に放り込み、結果、手作業での農作業は効率が悪くなる。
国内では食うや食わずで国民が労働に駆りたてられているのに、共産
圏の同盟国には輸入してまで食糧援助をする。
「これは性質の悪いブラック・コメディか」の連続なのである。すべては
毛沢東の思いつきで始まったのに、悪い報告が耳に入ると機嫌が悪く
なる毛おじさん。本書を読んでいると、あのスターリンでさえ可愛らしい
と錯覚させられる。
「飢饉は3年間の自然災害のせいです」。共産中国の言い訳は飛んでも
ない大噓なのである。
著者が推測するこの時期の死者数4千5百万人也。餓死はもとより、
暴力によるものや自殺者も含まれている。これだけの国民を死・に
至らしめた毛沢東を批判することは、中国最大のタブーである。
ソ連ではフルチショフがスターリン批判を行った。いずれ、中国でも
毛沢東批判を行う党幹部が出て来るのだろうか。
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毛沢東が推進した大躍進の陰で、4600万人の人間が犠牲になった。
しわ寄せは、老人、子供に行く。住む家も、食べ物もなくて、屋根わらから土を食べ、最後は人肉食まで行ってしまい、凄惨を極めた。
今までは天災によって起きたと言い張っていた、中国共産党も最近は大躍進のせいで多くの人が犠牲になったということを認めるようになった。
リーダーがアホで、情報操作が可能だとこのような状況になるのだろうか。
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毛沢東の行った政治について、私は詳しいわけではない。
しかしこの著作が描き出した毛沢東は、自身のプライドと見栄(主にフルシチョフに対する)の為に自国民を犠牲にする無能なリーダーでしかない。
しかし、こうした飢饉や戦争などの過酷な状況を描くルポルタージュを読んでいていつも気になるのが、強いものは弱いものを虐げ、弱いものはさらに弱いものを虐げるという構図である。
勿論『夜と霧』(ヴィクトール・E.フランクル著)に書かれているように、どんな立場にあっても、高いモラルと優しさを持って他者に接することができる者もいるだろう。
だが残念ながら毛沢東の行った「大躍進」では、地方に多くの小毛沢東を生み出し、力の弱い子供やお年寄りの多くが犠牲となった。
唯一の救いは、少し前なら決して世間に出なかった資料の公開や、著者の取材に協力した人々の存在であろうか。
それは単に「擁毛派」との政治的対立の産物にすぎないのかも知れないが、いつの日か毛沢東時代の全ての出来事が明るみに出る時がくれば良いと思う。
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前半の、毛沢東に気に入られようとする人たちの暗闘は、興味が持てました。この状態が、さらに酷くなるって、文化大革命になったのだと理解しました。
後半は、中国各地の飢饉の惨状を伝えています。確かに、酷かったです。しかし、同じような話が、延々と続きます。そのため、ラス・サカスの『インディアスの破壊についての簡潔な報告』を読んだときと同じ感覚になってきました。よくない兆候だと思います。
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一党独裁の負の側面が如実に表れた政策的な失敗の記録
国家でも企業でも、結局組織を動かすのは個々人であり、部下は上司の顔色を見て動くもの。たとえ大きな方向が間違っていても、組織内では上から言われればなかなかそれを正すことは難しい。
第三者的なチェック(野党、マスコミ、知識人など)が社会にとっていかに大切か、実感させられる事例
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途中まで読んだが、よく調べられており面白かった。しかし、同じことを色んな角度から考察しており若干飽きてくる。この続きは、よっぽど暇でこの本以外に読むものがない限り読まないだろう。(文化大革命の方が興味あるし)
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[ 内容 ]
総死者数4500万人!中国共産党最大のタブー、「大躍進」の全体像を、党の資料をもとに初めて明るみに出す。
2011年サミュエル・ジョンソン賞受賞。
[ 目次 ]
第1部 ユートピアを追い求めて
第2部 死の谷を歩む
第3部 破壊
第4部 生き残るために
第5部 弱者たち
第6部 様々な死
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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(欲しい!) 2011年BBCサミュエル・ジョンソン賞
成毛眞(今のところ)オールタイムベスト10