紙の本
自然科学中心にウナギの全般を写真図鑑風に解説。
2012/10/15 16:38
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウナギの自然科学、社会科学、人文科学、とちょっとした「ウナギ百科」の体である。大部の専門的な本でもあるが、写真中心に「見開きに一段程度」の説明文を入れてあるという構成なので、写真図鑑のように楽しく読める。
著者の一人塚本さんは世界で初めて海洋でウナギの受精卵を採集した人。前半を占める自然科学の部分は、そのせいもあってかかなり詳しい。沿岸で捕獲するシラスウナギから海流を遡り、だんだん小さい個体を採集して卵にまで絞り込んでいく様子に科学者の熱意を感じるところである。
日本のあちこちの河川から、太平洋の何千キロも先の狭い地点に集まって集団で産卵するとは、なんと不思議な行動をウナギはするのだろうか。海での生長に適した体の構造から川で生活するための変化の様子も、たくさんの写真で紹介される。本文中にも少し触れられているが、サケは川で産卵し海で成熟して戻ってくる。ウナギは海で生まれ、川で成長して海へ戻り産卵する。海と川を行き来する魚でもこんな違いがあるのにも改めて気づかされて驚く。
ウナギの切片の写真、ホルモン濃度変化や漁獲量のグラフなどは一寸難しい、と思われるかもしれない。しかし、細かいことはわからなくても、透明な仔魚や卵の写真の美しさは誰でも感じられる。ジャンルの異なる写真(江戸時代のウナギ漁の版画まである)からは、見る人により異なった沢山の意味を見いだせるのではないだろうか。そういえばウナギの耳石に取り込まれたストロンチウムの画像データのページをどこかでみたと思ったら、あるTV番組で「ウナギも研究していたという」若いアナウンサーが本書を説明に使用していたのを思い出す。
人文科学や社会科学の部分は、浮世絵などが多数掲載されていて楽しいが、著者の専門ではないためか日本の話がほとんど。専門の自然科学の部分についてはかなり丁寧に目を配って書きこまれたわかりやすい良書になっているが、それ以外はもう一つ、というのが正直なところであろうか。
いろいろな「ウナギの文学」紹介のところで、著者の登場する「アフリカにょろり旅」もちゃんと写真が載っているのはご愛嬌である。しかし、こっちも「破天荒な裏話」としてそれなりに面白い。
ウナギの高騰がニュースになった2012年であったが、なぜなのかという疑問をきっかけにウナギを知りたくなった人もいるだろう。詳しく知りたい人にも、楽しくいろいろ知りたい人にも本書はお勧めできる本である。
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人文・社会・自然科学から見るウナギ。教養課程の区分みたいです。自然科学の分野では時間をかけてなお謎が多いうなぎですが、人文科学でみるウナギは浮世絵から帯留めなどの工芸品まで食べるだけでなく、描くにも模型をつくるにも昔からみんなウナギが大好きなことが分かります。
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面白かったです。
ウナギの卵が受精して1.5日で孵化してしまうとか塩分濃度で産卵場所を決めているとか幼生が笹の葉のような形をしているとか知らないことばかりで勉強になりました。
それにしてもウナギ梯子の設置とかヨーロッパはやはり進んでいるな、と思いました。釣りも好き勝手に釣って良いわけではなく禁猟期間があり、魚の種類によって何センチ未満のものは離してあげるというルールがある。だからこそヨーロッパの自然は守られてきたのだろうなあ。対する日本は…まだまだ遅れているよなあと思います。いっぱしの先進国の顔はしていますが文化レベルでは本当にまだまだ同じ土俵にも上がっていないのでしょうね。
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豊富な図版とともに楽しむ、ウナギを巡る一大叙事詩。
ウナギとともに海を渡り、時を越えよう。
ウナギという題材を、それぞれ、自然科学的・社会科学的・人文科学的見地から、多角的に論じていく。生態や発生、養鰻や流通、ウナギに関する書画など、様々な話題が、トピックス的に解説される。各々は、写真や図を伴って、ほぼ見開き2ページで完結し、素人にも取っつきやすい。1つ1つを興味を持って読み進めるうち、いつの間にか俄ウナギ博士となっている。
さながら、ウナギ総合博物館の趣きである。理系の人も文系の人も楽しめる1冊。
ウナギは回遊魚である。海で産卵・孵化した後、回遊して川に上り、産卵時に再び海に戻る。川で産卵して海に出ていくサケとは逆だ。長距離を旅する間、ウナギは劇的な変態を経る。特に葉形幼生と呼ばれるレプトセファルスの形態には目を奪われる。海流に乗って移動するのに適した漂いやすい形状からは成魚の姿は想像できない。
現時点では、ウナギの養殖は、卵からではなく、シラスウナギと呼ばれる稚魚からの成長となっている。効率的に養殖するためには、水の管理・餌の改良も必要とされる。
古今東西で使用されてきたウナギ捕りの道具も紹介されていて興味深い。形状も多種多様で、この魚が各地で愛でられ、食されてきたことを物語る。
多くの浮世絵にウナギが描かれているのも驚きだ。本書には國芳らの絵が多く収録されていて楽しい。西洋絵画にもウナギは登場してきたのだろうか・・・?
ウナギが信仰の対象にもなっていたというのは知らなかった。現住地の近所にもウナギを祀る神社があり、子授けの御利益があるそうな。
最後に紹介されるポリネシアの伝説もまた印象深い。人間の娘がウナギと結ばれるが、ウナギは最後には、娘とその子どもを守るために命を落とす。椰子の実の起源はウナギの頭部だというのだが、椰子の実とウナギの頭、似ているといえば似ているかなぁ・・・? 本書には2つを並べた写真も収録されているので、興味のある方はご確認されたい。
EUのウナギ追跡プロジェクトはeeliadと名付けられているそうだ。ウナギ(eel)+イーリアス(Iliad)からの造語だが、粋な洒落だ。
科学的でありつつ、悠久のロマンを感じさせる本書もまた、ウナギを巡る壮大な叙事詩となっている。
ウナギに関する研究の1つの原動力は、この愛すべき魚が激減してきており、絶滅を回避しつつ食も楽しむには、安定した養殖が是非とも必要であることにある。ウナギの商業的規模の完全養殖にはなお課題も多いが、研究室レベルではかなりの部分がつながってきたらしい。養殖で補える部分が増えれば、天然のウナギ資源の回復にもつながるだろう。今後に期待したい。
*専門用語が聞き慣れず興味深い。印象に残ったものをいくつか。
「加入」:漂流して、ある海域に入ること
「鰾」:この字がふりがななしでいきなり出てきてちょっと考えた。正解は、うきぶくろ、でした。さらに余談だが、「票」はそもそも、火炎が飛ぶ意で、ここから軽い、軽く上がるにつながる。「漂う」はこちらの意味から。手軽な印��いう意味もあり、手形や切符(伝票)はこちらの意味に近い。
「降河」「降海」:前者はウナギで川に下っていく。後者はサケで海に下っていく。
「催熟」:完全人工養殖のためには、体を大きくするだけでは不十分で性的に成熟させる必要がある。そのための処理(主にホルモン剤)。
「種苗」:養殖のもととなる稚魚。「苗」は植物だけではないのね。
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ウナギって奥が深いと感じざるを得ない内容の濃さ。学術的な面もそうだが,歴史,芸術,栄養素などなどウナギに関する全般的な事項が豊富なカラー写真とともに掲載されている。研究者たるもの未解明なものに心が動かされる。
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推薦理由:
ウナギと言えば、すぐに鰻重や蒲焼などの美味しそうな料理を想像するが、そのウナギについてのあらゆる面を紹介し、解説している本書は大変興味深い。図版やレイアウトも大変美しく、楽しんで読める本である。
内容の紹介、感想など:
ウナギは日本人の大好物のひとつであり、年間約10万トンも消費している。本書はそのウナギについて、自然科学、社会科学、人文科学の各側面から総合的に理解しようとするものである。
第1章「旅するウナギ:ウナギの自然科学」
ウナギの生態については未だ解明されていない事も多い。回遊魚であるウナギがどこでいつ産卵するのかは長い間わからなかった。初めて天然のウナギの卵が採集されたのはつい最近の2009年の事である。この章では、マリアナ海領で孵化した幼生が潮の流れに乗って遠く離れた生育地にたどりつき、変態して成長し、成魚となった後再び繁殖の為に約3,000㎞もの旅をして生まれた海に戻るというウナギの生態を説明している。
第2章「社会の中の鰻:ウナギの社会科学」
食資源動物として日本の社会に深く根付いているウナギは、その99.5%以上は養殖ウナギであるが、ウナギの養殖とは、天然のシラスウナギ(ウナギの稚魚)を採集して成魚まで育てるという方法であり、卵から人の手で育てて流通させる技術はまだ確立していない。シラスウナギの乱獲、河川環境の悪化、海洋環境の変化など様々な原因でウナギは激減している。貴重な資源を守るため、人口種苗による養殖の研究が続けられている。この章ではウナギの保全、漁、養殖、流通、食文化という、ウナギと社会の様々な関わりについて考察する。
第3章「人とうなぎ:ウナギの人文科学」
日本の全国各地の遺跡からはウナギの骨が出土することから、ウナギは古来より貴重な食べ物であった事が分かる。食べ物として親しまれてきたウナギは、和歌に詠まれ、文学に著され、多くのことわざや言い伝えが生まれ、絵画の題材となり、信仰の対象ともなって人の文化に深く根付いてきた。この章では、様々な美術工芸品などを紹介しながら、人々のウナギに対する思いを紹介する。
全てのページがカラーで、写真や絵に解説文が付いているという形式であり、とても楽しく読み進めるうちに、ウナギについて深い理解が得られる。
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うなぎほど身近で神秘的な魚は居ない!1度興味を持ったらうなぎのトリコになってしまうかも(笑)
(選書ツアー参加者・初等情報3年)
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塚本先生が 小浜の羽賀寺でお話しをしてくれて この立派な本を知りました。高いけど 値打ちのある本です
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ウナギを科学的、社会的、人文的に網羅する。図版、写真も多く、本で読んで知っていたことが写真とともに解説されていてよくわかる。ウナギの産卵場所を特定する本は冒険心に満ちていて好きだが、その著者がウナギ百科としてまとめられている。大型本で写真などは見やすいが文字が小さく読みにくいのが、玉に瑕。
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