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紙の本
まるで落語の世界。
2011/08/15 08:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はマンガ家であり、俳人であり、作家という才能に恵まれた方である。その著者が江戸時代の京都の医師広川かい(獸偏に解)が長崎に遊学した際に見聞した内容をイラスト、マンガで再現したものである。現代であればデジカメ、携帯写メ、加えて動画もあるので瞬時にして珍品の数々、劇的な場面を正確に記録媒体に収めることができる。さらに、遠隔地に送ることもできて苦労はしない。しかしながら、本書のベースは広川のイラストをもとに京都の絵師が口述筆記ならぬ口述描写した『長崎聞見録』であるため、実物に手が加えられていたり、想像で描かれたりしている。さらに劣化した紙媒体から再現するなど、著者の苦労は並大抵のものではなかったと推察される。
その著者の苦労をよそに読み手としては落語の世界を楽しむかのようにページをめくることができる。82ページの「唐人生き物を殺すこと」の件などは、まさに落語の世界そのもの。今でも中国人は献血が命を失いかねない一大事と大騒ぎをするが、その国民性というか民族性は昔からのものであることが理解でき、爆笑である。反面、生き物を処分することにかけては無頓着であるところに不可解な民族性を見る。それを面白おかしく著者がマンガに描いているので笑うしかない。まるで、「長崎名産」として腐りかけの豆腐を長崎名物の珍品のようにして食べさせる上方落語の名作『ちりとてちん』そのままである。江戸時代の長崎の産物、唐人やオランダ人が長崎に持ち込んだ品々がイラストとともに紹介されているが、これはこれで「イカの干したものをスルメと言わせるな」で落ちがつく落語の『てれすこ』を彷彿とさせる。奇怪なモノ、訳のわからぬモノ全ては長崎経由の「南蛮渡り」と言ってしまえば済んでしまう落語の世界がこの一冊に凝縮されている。
そういえば、広川が見聞したもののなかに「もやし」がある。果たして、江戸時代の人々は「もやし」をどのように見たのだろうか。そのうち、「もやし」を題材にした新作落語が評判を呼ぶのでは、などと思いながら読み進んだ。
馴染みの無いものを具体的に伝えることほど難しいものはないが、ここに紹介されている事ごとは、マンガ家である著者にしか描けないことを再認識させられた。博識を誇る方、クイズ番組のプロデューサー、歴史、民俗、比較文化の研究者など、広範囲の方方の良き参考書になるのではと思った。もちろん、落語のシナリオ作家の方にもオススメです。
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