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紙の本
異彩を放つ痛快時代劇三田村元八郎シリーズ
2011/09/18 21:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
三田村元八郎シリーズの竜門の衛、孤狼剣に続く第3弾である。タイトルに剣が付いているからと言って、剣豪に関するストーリーではない。竜門の衛では江戸町奉行所の同心、孤狼剣では大岡忠相の家臣、そして今回は吹上御所御庭者支配、そして勘定奉行配下支配勘定道中方という肩書である。
このシリーズは、すでに完結しているものを改装して再出版しているものである。したがって、ストーリーそのものが大きく変わることはないが、多少加筆修正があるとのことである。
毎回役が変わることが読者にとってはどうなのかである。上田のシリーズ作品では、通常は同じ役柄であるが、毎回違うのもなかなか面白いものだと思う。その方が活躍の幅が広がることは間違いない。今回もその特徴をよく生かした展開になっている。
旗本六千石の板倉修理勝該が江戸城中で、刀を抜いて熊本城主である細川越中守宗孝を切り付けて死に至らしめたという大事件が勃発した。忠臣蔵でも有名であるが、城中で刀を抜くだけで厳罰、つまり切腹である。この両家はそもそも近い関係にあったが、なぜこのような刃傷沙汰が起きたのか、真相を探る必要が出てきた。
そこで三田村元八郎の登場である。この事件の原因を調べに地方に出向くことになる。誰の指示で出向くことになったかといえば、九代将軍徳川家重である。京に寄れば、心強い味方である伏見宮親王がいる。さらに、桜町院にもお目通りをしたこともあり、元八郎の功績は認められている。こういうところはシリーズを最初から読んでいないと分からない。
大御所である徳川吉宗も健在で、幕藩体制を守るためには何でもやるつもりである。家重のご政道だけではなく、大御所の意向もまだまだ通じる時代である。これらの要素が絡み合い、複雑ではあるが、なかなか楽しめる読み物仕立てになっている。
上田の小説を読んでいくに従って、城中の刃傷沙汰や将軍と大御所の対立など、江戸時代300年の間には同じような事件が繰り返し起きているのが分かる。勿論、その原因は様々ではあるが、マスメディアなどはなかった時代に、人々はどのように天下の出来事を知るようになったのか、不思議である。瓦版ではその伝播力は多寡が知れているし、スピードも遅い。小説に書かれるような出来事を庶民が知るわけではない。
それをあたかも庶民の眼で読者に知らせているように書かれているところが何とも面白い。歴史小説が描く時代の描写は時間軸と為政者と庶民の間の距離をかなり短縮していることに気付かされる。この関係は現代とは格段に違っているはずである。
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