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椎名誠の大学を中退しアルバイト生活をしながら奥さんと結婚するまでの時代と作家になり世界のあちこちを旅しだした頃の時代にまたがる自伝小説なんだが、うぅーん、と唸ってしまう。二つの時代が2-3ページ毎に交錯する実験的な手法で書いているのだが、その効果と読みやすさを秤に掛けると冒頭の「うぅーん」になってしまう。「哀愁の街に霧が降るのだ」「新橋烏森口青春篇」等の路線を想定して読んでいたので違和感で行き詰ってしまった。
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黄金時代の続編です。二重構造になっていて、最初は戸惑いました。オババの新聞広告につられて買い出した口ですが、最初に庄司薫の文体にはまって以後,椎名さんの昭和軽薄体の文体からなかなか離れられませんでした。それ以来長く読んでいるけれど、やはりただのモノカキではないということが良く解りました。
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椎名誠の私小説。
大学中退の頃の話と40歳過ぎ頃の過酷な旅の話とが交互に書かれている。これがじわりじわりと心に沁みてきてすごく良かった。
いくつかの作品は読んだことはあったし、人となりも何となく知っているつもりでいたのに、アルバイトをしていた頃の紆余曲折は初めて読んだことばかりだった。時は東京オリンピックに沸いている頃であり、日雇い仕事の様子や同僚のはなしや生活ぶりが抜群に面白かった。
イスズミのこと、やがて結婚することになる人との話、おだやかで淡々とした文体ながら人生という歳月の流れが胸にせまりしみじみとした。
すごく人に優しいと思っていると、相当喧嘩でならしてもいたらしい。
「黄金時代」をぜひ読んでみようと思った。
辺境の旅ではタフで、クヨクヨこだわらない懐の深さが感じられた。
この作品を読み椎名誠の良さをあらためて認識した次第。
椎名誠に人間的に惹かれてしまった。今頃かい!とファンの方に突っ込まれそうです(w)
話が交互に書かれている章の対比が絶妙でいいです。
砂漠と運河、汗と凍結、微風と烈風などなど、読み終わってなるほどと思う。
表紙、裏表紙も好きだ。
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1960年頃の東京での生活と、秘境旅行(冒険と言うのでしょうか)での生活。折り重なるように書かれていることで、繋がりが強く感じられます。
椎名誠さんみたいなアクティブな生活にあこがれています。あんな風になりたいなって。
あの顔に刻まれた沢山のシワはこんな波瀾万丈な経験から生まれたものなんですね。こんな人生は歩めないな、やっぱり。
ここはひとつ、本でも読んで人生の仮想体験をする事で、満足することといたしましょう。
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20歳のシーナさんは未来に、35歳のシーナさんは過去に向かって進んでいく。
大学の中退、ケンカ、バイト、恋。
結婚、就職、作家、冒険。
二つのシーナさんが交互に現れ一点に向かってつながっていく。不思議な感覚。
スーパーエッセイや怪しい冒険の裏に、こんな熱くてちょっぴり切ない人生があったのだなぁ。
ダッタン人風の勝利の挨拶ができてよかった、ホントに良かった。
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とてもよかった!
タイトルから、いつものバカ話(ほめ言葉です。念のため)かと思って読み出したら、ちょっとシリアスな「私小説」で驚いた。1984年の桜蘭行と、若き日のアルバイト時代についてが交互に語られていく。読み進めていくと、前者は時代をさかのぼっていき、後者は時の流れにしたがってすすみ、ラストで出会う形になっている。「あとがき」でシーナ隊長があっさりこの構成の意図を述べているが、その通りのしみじみした感慨を覚えた。
アルバイト時代のあれこれも、パタゴニア行やシベリア行についても他の著作で読んできた。古くからのファンとしては(あくまで「語られてきたもの」としてだが)椎名家の年代記も少しは知っている。それでも、本作には非常にひきつけられた。「文学界」に連載された小説なのだから「どこまで事実か?」的な興味で読むのは邪道なのだろうが、やはりそれを意識してしまう。
また、他の「バカ話」系のお話では見え隠れする程度の椎名誠氏の「荒々しさ」が、ここでははっきり前面に出てきている。あらためて「シーナ隊長」の人好きのする魅力は、こういう面があってこそのものではないかと感じた。肉体的パフォーマンスへの強い自負、独特の洞察力と圧倒的な行動力、繊細な感覚…。いや、まったくこの人はモテるはずだなあ。家族(特に奥さん)はそりゃ大変だっただろうと妙なことを考えてしまうほど、かっこいいのだった。
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「哀愁の町に霧が降るのだ」や「銀座のカラス」前夜、「黄金時代」後の作者をモデルとした松尾青年シリーズの最新刊。
私小説的なタッチで書かれているのはいつも通り。懐かしくて「帰って来たなあ」という感慨すら覚える。
本作はちょっと古い現代の自己の過酷な旅の体験と、若いときの多少投げやりな日々が交互に現れ、最終的に二つの波が作中で交錯していくという椎名作品には珍しい手法だ。もちろん読みやすく、その他のシリーズを読まずとも入っていけるけれど、上記にあげた作品の一つとして連続で読破るのもオススメです。
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本日の日記は、またまた我輩の敬愛する椎名誠さんの著作の登場です。今年に入って椎名さんの本はこれで3冊目。結構なハイペースだなあ。読んだ本の名前は そらをみてますないてます / 椎名誠/著。椎名さん久しぶりの私小説なのであります。椎名さんの本としては初めてだと思うけど、物語の時間軸を二つにわけて、それらを常に交差させながら話を構成するというもの。ジョン・アーヴィングや日本の作家だと村上春樹さんの小説で良く使われている手法ですよね。「あとがき」で椎名さん自身が「成功したかどうかぼくにはよくわかりませんが」と書かれていたけど、いやいや!これは文句無く成功していると思いますよ!!
「ひとつの物語」は1960年代、東京オリンピック開催間近の東京。19歳~22歳くらいまでの恋と喧嘩の日々。日雇いのアルバイトをしながら、自分の進路が未だ良く見えない若き時代の出来事。「もうひとつの物語」は椎名さんの世界各地への旅の記録。少年時代からの憧れの「楼蘭」への旅から「パタゴニア」の旅まで。こちらの物語は時間軸を反対にして、最近の旅から過去の旅へと時間を遡るようにして物語が展開していく。二つの物語が微妙な接点を通過しながら、人生の大事な「あの時」の邂逅へとつながっていく。
「もし、自分のこれまでの人生でクライマックスと呼べるような「一瞬」あるいは「時」があるとしたらそれは何時のことでしたか?というような質問を本気でされて、それに本気でこたえなければならない場合があるとしたらおれはなんとこたえるだろう。そういうことを真剣に考えたことがある。わりあい早く「その時」が見つかった。そうだ。たぶんあのときが人生のクライマックスだったのだろう。」
(本著より抜粋)
「私小説」としてはかなり踏み込んだ内容の意欲作だという印象を受けた。人生で大切にしなければいけない瞬間。それって案外知らず知らずの内にやり過ごしてしまう事も多いのではないかと思う。そんな大切な一瞬、すなわち人生のクライマックスが今なんだという事を直ぐに想いだす事の出来る人って案外少ないのかもしれない。何気ない日常に流されがちな毎日。どんなに遥か彼方の夢であっても、愚直にしぶとく持ち続ければ、人生の重大な交差点にきっと何らかの形で絡んでくる。夢持ち続けることの大切さを教えてくれた一冊だと思うのであった。
【Dance1988の日記】
http://d.hatena.ne.jp/Dance1988/20120119
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ひさしぶりのセンセー快進撃!(失礼だなあ)
学問のススメポッドキャストで本人も言っていたけれども10年に一度の快作です。タランティーノ的と言いますか、過去との時間軸がアキレスと亀的に最後は結びつくと言いますか追いつくと言いますか何と言いますか。
的な。
いやー、よかったよかった。お勧めです!
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椎名節が炸裂していて、懐かしい。椎名誠にハマっていた頃の感動が甦る。勇は相変わらずハードボイルドだ。
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椎名誠の作品というと、私小説的なもの、SF的なもの、アドベンチャー的なもの、あと写真集、と大まかにこれくらいに分けられると思うが、その中で私は圧倒的に私小説が好きで、とりわけ学校を出て
ちゃんと仕事に就くまでの、まさに青春という時代の話が好きだ。
真っ黒い顔をほころばせて、ビールをぐびぐび飲んでいるイメージの椎名さんからは想像もつかない、それは暗くて、退廃的かつ暴力を伴い、恐ろしくてやるせない話だ。
今回の作品もそういう時代を経て結婚に至るまで続いている。が私小説だけではなくて、アドベンチャー的な話とが、時代を逆にさかのぼり話の終わりにはふたつの物語の次元がちょうど合うような、ちょっと凝った構成になっている。
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わが青春のアイコンにしてアイドル。
むさぼり読んだ日々。
のたうちまわり、悲しみの暗闇、楽しさの曙光。
そんなものを感じていた日々を思い出した。
客観的に評価ができないくらいなので、
ご勘弁を。
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ひさびさの小説な椎名誠。10代の頃に読み親しんだ椎名誠の文章に安ど感を覚える。海が空港に迎えに来ているっていうラストが良かったな。
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椎名さんにしては珍しい時間軸を二つにわけた私小説
過去の作品で出て来た話がつながり、物語をなしていて興味深く読めた
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シーナさんの葬儀で挨拶する鮎川誠…で、「そう言えば椎名さんどうしてるんだろう?」などと不純な理由で手に取ったわりと新し目の一冊。
いい小説でした、そしてやっぱりカッコいい。バンカラを地で行く青春物語と冒険物語、そこまではいつもの椎名さんなのだが今回は趣向が凝らされていて敢えて逆転させた時系列は夢を叶えて行く過程により深みを増し表紙と裏表紙のバノラマも「人生の繋がり」という偶然を叙情深く表すことに一役買っていると思う力作。
ただね、同じ人として同じ男としてここまで濃い生き様を見せ付けられるとなんとも言えぬ寂寥感を感じることも確かなのであって…窓ガラスに写った不甲斐ない自分の姿を見ながら僕は一人「夜空を見ながら泣いてます」