紙の本
転んだって大丈夫なんだよ、人生は
2011/11/09 17:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は32歳の、店舗内装デザイン会社の営業・未紀。
3年近く付きあった彼からふられ、夢みた結婚はつぶれます。
さらに仕事で大失敗。会社にも居づらい雰囲気に。
未紀の仕事は、お店を持ちたいクライアントと
内装業者やデザイナーとの取り持ち。
つまり、こだわりと言う名の我が儘対
頑固な職人のバトルをどうにかこうにか収める日々。
仕事の失敗から、勢いでカフェを持つことになった未紀の
奮闘の日々を描く、いわばお仕事小説。
彼女の追いこまれ方もすさまじければ
それまで親友だと思っていた女性の豹変ぶり、
開業に伴い、関連業者の売り込みのすさまじさなど
怒涛の勢いで話は進みます。
営業職の頃は、クライアントの思い込みや情熱を
「甘い」と鼻で笑い、バカにしていた未紀ですが
いざ、自分がお店を持つようになったら
そんな経験はすっかり忘却の彼方。
飲食業に関する蘊蓄やノウハウもうまく盛り込み
業界の裏を知るようでおもしろい。
この大変さをやってのけるのは
やっぱり情熱がないとムリ。
近所の個人でやっている飲食業の方の苦労がしのばれます。
もっと行かなくちゃな~。
ボロボロになりながらも、最後までしぶとい主人公は
平安寿子の真骨頂。
転んだって大丈夫なんだよ、人生は。
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平安寿子の新刊。
店を持つのは簡単。しかしそれを維持し続けていくのは大変。内装デザインの営業担当の未紀はそのことをよく知っていた。しょっちゅう改装するクライアントについつい本音を言ったばかりに、自らがカフェをやることに。経営する側に立ってわかったことは……。帯には「失敗したって大丈夫!」との惹句があったが、読むと経営者になるのは大変なことだと学ぶはず。失敗の経験を今後に生かしていけるかどうかが勝負の分かれ目。
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取り立てて新しい素材ではないけれど、何故かツボにはまって大満足でした。周りを取り巻く人も、善人そうに見えても,色々内面を持った生身の人間であるのがいいし、取って付けたようなどんでん返しがないのもグッドでした。
それにしても,食品衛生責任者の養成講習会の実態ってあんなものなんでしょうか?うーん...そうなのか,自分の店を出したいという人も一杯いるんだなぁと少し感心しました。
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32才独身女性が、仕事を辞めカフェを開業。この通りなら簡単に始められるんだな。でも続けるのは難しい。
2011.11.11
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コーヒーショップで本を読む合間に、経営ノウハウを想像してみるのも楽しいかなと思って購入。
11/14 読了 カフェ経営の裏側が分かって面白い。最後に救いがありホッとする。
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飲食店経営って夢があるし、やりたい人もたくさんいるだろうけど、やっぱり甘くないよね。
世の中の厳しさを痛感しました。
職種は違いますが、あたしも自営業なので勉強になりました。
たとえ失敗しても立ち上がれる!
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30歳を少し過ぎた主人公が結婚を考えていた彼氏に別れを切り出されるところから始まります。
内装の仕事をしていた彼女は、わがままな客とのいざこざがきっかけになって、カフェ開業しますが、結局1年で閉店に。
そこまでの道のりと、気持ちの変化。将来への希望が書かれています。さらっと読めて読後感も悪くないですが、カフェを開いてからの切実な感じは、ひしひしと伝わってきて、思わず個人経営の飲食店に対する目が変わりそうでした。
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32歳、山守未紀。店舗内装デザイン会社にお勤め。
ちょっとしたキッカケで会社を辞めてカフェを経営することに。
飲食店って仕入れとか大変そうだし、どうなんだろう? と小説の中の話しながら心配してしまった。
思ったより繁盛もせず1年で廃業。
そんなものなのか、そんなものよね。
その後、レストランでバイト。そこでの働きが認められ、当初自分がやってみたかった形態のカフェを手伝うことに。
人生ってわからないもんだ。途中で諦めないということか?
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私が30代独身OLだったら、ものすごく感情移入して読んだと思います。最後はなんだかとっても元気になる本でした。
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カフェを自ら開店するまでのやけに具体的な数字が並んでいる話。
関係者じゃなくては、興味がなくてはナンダこれ?って小説。
残念ながら私はそうでした。主人公に感情移入できずじまい。
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飲食店を経営するのって難しいんだな。色々な困難があるけど成功してハッピーエンドかと思っていたので意外な展開でした。
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結婚するつもりだった恋人にふられ、会社では大失敗。人生のピンチに陥った32歳の未紀は、勢いでカフェを開くことになった。経験もスキルもなし、地道に働いて貯めたお金を全部はたき、借金までして資金繰りに奔走。食品衛生責任者の養成講習会を受け、物件を探して改装し、食器や椅子や備品を集めて、メニュー作り。次々難題を片づけて、なんとかオープンしたけれど…。失敗したって大丈夫!この本を読めばあなたも自分のお店を持ちたくなります!お店経営の実用情報も有り。お役立ち小説。
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いってみれば、カフェオープンを決めてから廃業するまでの顛末記、という一冊である。内装デザイン会社に勤めて、失敗例は嫌というほど見ているにもかかわらず、いざ自分のこととなるとなかなか思惑通りには行かないものである。甘さを指摘する人もいれば、いい顔だけ見せて素通りしていく人もいる。いまさらながら現実の厳しさを思い知らされる未紀である。オープンまでは、読者も未紀と一緒にわくわくしながらプランを練り、明るいあしたを夢見るが、蓋を開けてみれば、当初掲げた理想はなし崩し的に妥協点に落ち着き、目的さえも見失って心もからだもぼろぼろになっていく姿にこちらも意気消沈するのである。思わずがんばれ、と励ましたくなるが、撤退するなら早く決断するが吉、というアドバイスにも、なるほどと頷けるのである。重荷を下ろした未紀の次の道が、彼女の生きる道でありますように、と祈りつつ見守りたくなる一冊である。
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友達と集まると雑貨屋さんをやりたいな、カフェをやりたいって話になるのでこの本はとても面白く読めました。33才のヒロインが会社をやめてカフェをひらくストーリー。甘くないです。でも読むとやる気が出るお仕事小説です。
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良かったです…★三つですが。
お店を持ちたいと思っている方には、いろいろヒントになることもあるかもしれません。
私にはタイムリーでした。
店舗内装に関しては経験はあるけど、お店の経営に関しては素人の主人公が始めたカフェ。
うまくいかなくなるのは当然だけど、もしかして巻き返せるのか?とも期待しました。
この方の本を読んでいるとどうしても橋田壽賀子ドラマを思い浮かべてしまいます。
気持ち悪いほど(笑)調子良く話が進んでいくけど、つまずくと一気に転落。
これを読んで元気になるかどうかは本人次第、という本です。
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あったら借りてきて読んでしまう平安寿子。しばらく予約待ちかな…と思ってた本を書架にみつけてほいほい借りてくる。たしか、カフェをつくるという話。
32歳、山守未紀は、3年つきあってた琢次に終わりにしたいと告げられる。20歳で入った店舗内装デザイン会社で12年、琢次との「結婚」も少しは考えていたところが、つきあいが消滅し、情けないことに世界の終わりみたいに無力感にとらわれてしまった。
それでも社会人、やらねばならぬ仕事がある。健気に努力する未紀の前に、大嫌いなクライアント・梶原茉莉がカフェの内装変更をしたいとあらわれた。気がついたら未紀は、あなたの店がうまくいくとは思えないとぶちまけていた。
「へえ、だったら、どうやったら成功するかもわかってるわけね」
「少なくとも、あなたよりはね」
「だったら、やってみなさいよ。成功する店がどんなものか、見せてもらいたいもんだわ」
と、お互い売り言葉に買い言葉。さすがに店を持つなど考えたこともなかった未紀は口ごもり、ほら口だけと茉莉に罵られる。琢次と結婚してマイホームを買うつもりで貯めた金が300万円、あれを資金にして「やってみようか」と未紀の心に浮かんだ。そして、流れは「カフェをひらく」方向へ。
それでも未紀は、どこかで(ここはあきらめるしかない)という壁があらわれることを願っていた。一番の問題は資金面。相談して止めてもらおうと母のところへ寄った未紀は、思いがけず「やりたいことがあるんなら、守りに入らずチャレンジしてほしい」という母の言葉にどーんと背中を押される。
おまけに母はその場で昔の貸しがある、なんといっても公務員だと従妹に保証人を打診する電話をかけ、あっさりオーケーが出た!ドッカーンと、前に向かって突き飛ばされ、未紀はもう引き返せないところに踏み出してしまったとぞくぞく思う。
▼後戻りして、どうなるの。
ゴッデス・クリエイトの社員として、茉莉に頭を下げ、召使いのようにこき使われて、それが賢い生き方だと自分を抑えて、つまりはだまして、それで後悔しないと言えるのか。
不動産屋の坂田が言った。それじゃ、山守ちゃんの人生がもったいない。
こうも言った。山守ちゃんなら、できる。
そして止めてくれるだろうことを期待して訪れた母が、未紀の子供心に芽生えていた憧れだけでなく、保証人になってくれる親戚まで掘り出した。
もしかしたら、これが「運命」なのかも。(p.73)
守りに入るには若すぎるくらいだと自分を励ましながら、未紀は「ひなたカフェ」開店にこぎつける。「店を持つのは簡単」。だが、そこからが。「頑張ってます、けど…」。お客はなかなか来ない。売り上げは目標のはるか下をうろうろするばかり。今晩はもう少し開けていようか、あともう少し頑張れば、あと5千円はいくかもしれない…毎日、毎日頑張るものの、客は増えない。売り上げが上がらないので、仕入れの費用も縮小。それでも赤字、赤字、赤字。
「挫けちゃ、いけない。頑張れ、わたし。」そう自分に言い聞かせながら、未紀は働く。今の状況ではコストをかけるより自分の身を削るほうが気が楽だ、と思いながら働き続け、ある朝、未紀はブラックアウトする。暗い顔をして、お金のことばかり考え、追い詰められてると自覚した未紀は、現実から目をそむけきれなくなり、撤退を決めた。そして、オープンからちょうど1年、契約を解除した。
オープンするのが思いのほか簡単だったように、廃業も簡単だった。
借金が残った。身の丈にあわせて、生活をダウンサイジングし、未紀はシェアハウスに引っ越した。他の住人との共同生活を選んで、「元気は、人がくれるんだ」と未紀は思う。
そして、「今度こそ、人に求められる場所を作りたい。今度こそ、心を込めたい。頭と心と手がひとつながりで働くよう、経験を積み重ねていきたい。」と未紀が新たな仕事に向かうところで物語は終わる。
計画どおりにはいかない未紀のカフェ経営の日々を読んでいて、お客に選んでもらい、お代をいただく、その難しさは同じやなあと思う。あの店へ行き、この店へ行かないのはなぜか、あの雑誌を買い、この雑誌を買わないのはなぜか。自分に置き換えても、何に財布を開き、何に払うか、というところのハードルの高さは分かる。そのハードルに、どう臨んだら糸口がつかめるのか、どういう方向へ頑張ればいいのかと、そんなことも思いながら読んだ。
最後のあたりで「失敗したからって、それが何? 経験値が増えて、語りぐさもできて、人生が豊かになる。それのどこが悪いの」てなセリフを書きこむところが平安寿子の小説で、そこがやっぱりスキやなあ。
(12/25了)