紙の本
福島第一原発事故
2016/12/29 22:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゴジラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
福島第一原発事故は今現在でも解決に至っていないことは明らかでしょう。
この本は、原子力の平和利用が具現化した原子力発電所がどのようにして日本に出来上がったのかなど、日本の原子力開発の歴史に焦点をあてたものとなっています。
その上で福島第一原発事故についても本の最後のほうに述べており、どうしてあの事故が起こったのか、それを考えるうえでも重要な書であると思います。
投稿元:
レビューを見る
我が国の原子力政策について、その黎明期から現在に至るまでの過程を著した著作。今までの我が国の原子力政策を批判的に検討。どのような流れで原子力政策が定められてきたのかを把握するには最適な書。(但し、飽くまでも批判的な検討がなされていることには留意しておくべきであろう)
投稿元:
レビューを見る
日本の原発の通史。福島原発事故後に復刊されたもので,事故の概要とその影響について一章が加えられている。情報量が多く,一読して消化するのは厳しいが。
著者は東大理物出身。三十年来科学技術批判に取組んできただけあって業界に批判的。
長い通史なので,六つに時代区分。
1.戦時研究から禁止・休眠の時代(-53),
2.制度化と試行錯誤の時代(-65),
3.テイクオフと諸問題噴出の時代(-79),
4.安定成長と民営化の時代(-94),
5.事故・事件の続発と開発利用低迷の時代(-2010),
6.原子力開発利用斜陽化の時代(2011-)。
通産省と電力業界の連合が商業化以降を担当,科学技術庁が廃棄物処理や高速増殖炉などの研究段階を担当する体制でずっとやってきて,もんじゅや核融合など,実用化時期の「ハッブル的後退」もあって,科学技術庁グループが力を失って,科学技術庁解体の原因となったそうだ。なかなか思うようにはいかないな。実現すればすごく良い技術なのに。引っ込みをつけるのは難しい。
投稿元:
レビューを見る
色んなところで褒められていた本書。著者があとがきで言うとおり、この分野について手に取りやすい「通史」が存在しないという点で、貴重な本である。戦後の黎明期から、画期的なトピックを中心に時代区分を設定し、多岐に渡る事象を理解しやすく構成した労作。3.11後の状況にも可能な限り言及されており、その部分だけでもぜひ多くの方に読んでほしい。ただ、いささか無味乾燥な教科書的記述が多くなっているのは、致し方ない部分があるが、残念な点。
また、これは個人的な思い込みなのかもしれないが、「社会史」というタイトルからは一般国民や原子力業界外の企業、マスメディア等も含めた日本社会全体と、原子力の関わりというものを想像したのだが、本書が取り上げる範囲は電力業界と(国の)原子力行政の歴史がほぼ全てといってよい。著者の提起する「通産省(現経済産業省)」と「科学技術庁(現文部科学省)」による二元体制というシステムを日本の特徴的なシステムとする視点は重要だし、確かにそれらの「政・官・業」の枠組みが極めて強い推進力を発揮したことは紛れもない事実だと思うが、脇役であった国民や学界、マスメディアは何故脇役に甘んじざるを得なかったか、いかにしてこうした枠組みに取り込まれていったのか、という疑問が最後まで解けなかった。
投稿元:
レビューを見る
松岡正剛氏の本を読んで、まじめに原子力の歴史を勉強始めた。
この本には、日本が原子力発電を取り入れた歴史が詳細にかつ批判的に記述されている。
自分は、国民や国内産業に安定的に安い価格で電力を供給することは国益に合致すると考える。
しかし、なぜ、政治家、役人、電力会社は、その国益で説明できないような原子力発電に猛進していったのか。
第一に、原子力発電の立地について、その手続きが地域住民、地方公共団体の関与が一切ないこと。
第二に、そのような国策的な行政によって、国および電力会社の情報隠しと、積極的な広報活動が行われたこと。
第三に、電力会社が地域独占であるため、国策のための非効率的、採算のとれない事業についても、価格を電力料金に転嫁することによって、対処できたこと。
第四に、電力会社の地域独占による利益を背景にした強力な資金力をバックにして、政治家、官僚、マスコミなどを取り込むことが可能であったこと。これは、電力会社組合も同じことがいえる。
今後、もっと、原子力発電の勉強はするが、本来の国益、国民の利益は何か、そのために今、行政が行っていることが、反していないか、省益、局益に偏っていないかの検証が、自分の担当する行政分野も含めて、必要だと強く感じる。
投稿元:
レビューを見る
99年刊行の同著に11年までの経過を増補した改訂新版。核分裂発見から先の原発事故に至る日本の原子力利用史を俯瞰する。戦後は原子力開発凍結から始まる。突如成立する54年の原子力予算。旗振りの中曽根と尻馬に乗る財閥。
政治家と官僚、財界と学者の思惑と利益が癒着しながら「国策」として推進されてきた原子力事業の歩みがよく分かる。90年代後半以降、続発する事故と対応の延長線上に今回の事故は必然の「想定内」となる。通史が少ない故、本書は貴重な日本の原子力開発の社会史。
投稿元:
レビューを見る
福島第一原子力発電所の炉心溶融事故以来、原発に関する本は随分たくさん出ています。たくさんありすぎてどれを読めばいいのか分からない方も多いでしょう。かく言う私もごく一部に目を通したに過ぎないのですが、とりあえず基本的な問題を整理するという上で絶好なのがこの著作。戦中に日本でも原発製造計画があったことも最近では大分知られるようになりましたが、そこから福島第一の事故に至るまでの日本の核エネルギー政策の概略が一冊で分かります。
この本のいいところは、核エネルギー開発に積極的な立場(つまり、政府や電力会社)を批判的に描きながらも、感情的なところがなく、全体を冷静に見つめ直す視点に立っていることです。原発をめぐるネット上の議論は感情的になりがちですが、それに流されないためにも本書のような著作で基本的な流れを整理するのはいいでしょう。
また、著者が科学技術史の専門家ということもあり、原発がどのような仕組みで出来ているのかということもところどころで簡単に説明してあります。「読み飛ばしてもいいですよ」と書いてありますが、私が見た限りでは最も簡明に原発の仕組みを解説してくれています。
政策面が中心なので反対運動に関する記述はわずかですが、それは別の書籍に当たるのがいいでしょう。また近いうちにそちらの本も紹介します。また、原発の技術的な問題に興味がある方は同じ朝日新書の桜井淳『新版 原発のどこが危険か』をどうぞ。私には専門的すぎて細かいところは分かりませんが、とにかく原発の重大事故が起きるには様々なパターンがあることだけはよく分かります。(もなど)
投稿元:
レビューを見る
日本がアメリカと原子力協定を結びアメリカから原子力発電所をユニットとして導入した当初から概ね僕が生まれる頃までのお話までを読みかけ。ページ数にしてだいたい1/4程度しか読めていないけれど、色々と理解できないところもたくさんあるし、これは僕にとってはかなり難読な読み物であろうと思われる。
少し集中して読まなきゃ、と思いながらなかなか読み進めていない、集中力、気力…読書力を要求される読み物です。
投稿元:
レビューを見る
日本の原子力開発の通史。
振り返れば、技術的困難が多く、事故も多発、費用が膨れ上がり、人類はこの巨大科学技術を持て余してきたのがよく分かる。
戦時中の原爆研究から福島事故に至る原子力開発の歴史を概観するに最適の書。
投稿元:
レビューを見る
吉岡斉 原子力の社会史
戦後の原子力開発から2011年 福島原発事故までの通史。日本の原子力開発は 戦後復興のために始まり、原発震災により終わったとする論調
通史の中で残念なのは、大事に至らなかった 2007年 柏崎刈羽原発の被災対応。ここで 津波や地震による 全電源喪失や冷却機能喪失を想定できたのに。危機意識より安全神話を信じてしまった
開発当初の意識「原爆で殺された人々の霊のためにも、日本人の手で原子力の研究を進め〜日本を復興させる」は 理解できる。
風向きが変わってきたのは、2001年 科学技術庁の解体。経済産業省中心体制となり、安全規制面でのチェックアンドバランス機能が消滅したとしている。
投稿元:
レビューを見る
日本の原子力開発体制を、おもに軽水炉の技術導入・習得路線を追求する電力・通産連合ともんじゅに代表される自主開発を追求する科学技術庁グループとの二元体制モデルとして描いた通史。
構図がこのように明快な反面、具体的叙述には文字通り何でも書いており、それがまた読みにくさでもあるが、再読ごとに発見のある作品となっている。日本の原子力政策史の金字塔。
投稿元:
レビューを見る
原発に関する本を読もうと思っていた中で目にしたので、読んでみました。
「読み応え」という言葉は、この本のために存在するのではないか、と思えるほど、読み応えのある本でした。
著者は、原発に反対ということもあり、その感情が若干漏れているように思いますが、日本の原子力に関する導入や開発、研究の過程を丹念に緻密に、そして、できるだけ客観性を保ちながら正確に論理的に説明するよう心がけており、原発やその仕組み、また、原発にまつわる政治や組織の歩みの全体像を丁寧に描き出そうとする姿勢を感じました。
理系的な素養を著者が持っていることで、原子力に関する理論や技術に踏み込んだ面も多々あり、そのことも読み応えにつながっているように思います。
惜しむらくは、「放射性物質」とすべきところを「放射能」としている点でしょうか。
たくさん出てくる言葉であるがゆえに、正確さを期してほしかった…。
(もちろん、「放射能」のままでよい部分もあるのですが、正しくは「放射性物質」の部分については、出てくるたびに違和感を覚えました。)
とはいえ、一読に値する本であることは、間違いありませんし、これ一冊で、日本の原子力に関しては、かなりの部分をカバーできると思います。
多くの方に読んでいただきたい本ですが、とくに国会議員や経産省の職員、電力会社の方々には、是非読んでいただきたい。