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若い頃は誰でも夢と希望と青臭い正義感から沸き起こる衝動に身を任せて行動するものである。その頃の目で見れば、世の中がなんと汚れていて怠慢で不遜で卑怯で…とにかく反抗する対象にしか見えないことか。自分の若かりし頃にもあった、その世の中を変えていこうとする気概を思い出せば少々苦いものが体中にこみあげてくる。
しかし、今の若者からみたら俺なんかもそういう世の中のキチャないもので汚染されきった人間なんだろう。人とはいつのまにやらそういうもんに染まっていく。いつまでもパンクや反抗やアナキストなんざやってられない現実の壁に何度もぶち当たっていくのが社会なんだからしゃーない。
「山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。ひとだけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると心が落ち着くのだ。おのれがおのれであることにためらうな。悪人と呼ばれたら、悪人であることを楽しめ。それが、お前の役目なのだ」
「金というものは天から雨のように降ってくるものではない。泥の中に埋まっている。金が必要であれば、誰かが手を汚さねばならぬ。どれだけ手が汚れても胸の内まで汚れるわけではない。心は内側より汚れるものです」
この作品の引用である。よーは、気概の持ち方なのである。世の中すべての人に評価される生き方なんかはない。あちらを立てたらこちらが立たず、どうせそうなら何を立てるのが一番良いか、決めるのは自分の価値観である、評価は勝手にやってくれればよい、そこを気にすると余計に汚れが目立って無様になるのは食べ汚しに似てるかもな。
ついつい人の評価を気にして萎縮してしまいがちな、チンケなおっさん(俺)は、この本を読んでまた一つ「エエやんあいつらがどう思おうと、開き直って生きたるねん」と汚れをしみ込ませていくのであった。
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秋月藩は福岡藩の支藩であるため、福岡藩からの藩政介入が絶えなかった。これに抵抗する主人公の玄界島流刑までの人生。
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政治の悪役が、見方を変えると悪役では無かったり。
自分がその立場になってみて、初めて理解できたり。
単純ではないんだな。
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福岡藩の支藩である秋月藩を舞台に、本藩との確執・対立の中、流されるようでいて、まっすぐに行きぬいた武士の物語。
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組織のために貧乏くじを引くということ。
じぶんたちは正しいことをしていると思っていても、大局から見るとどうなのか、反対派からするとまた違う思いでよかれと思って動いていたりするぞ、と。よく分かる。
しかしこれってさ、男社会、おっちゃんルールじゃないのか?と思わなくもない。この伝統的ルールでずっと闘うわけ?(これは本の感想ではないのだが)
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山は山である事に迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。ひとだけが、おのれであることに迷い疑うのだ。それゆえ風景をみると落ち着くのだ。
・・・心にストンとおちる言葉です。
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小四郎の秋月藩を救う覚悟に胸うたれる。藤蔵や、昔からの仲間が土壇場で助太刀に来るシーンがすごく良かったし、みちと言う女学者が、行動的でまた良い味だしている!
様々な政治的謀略に巻き込まれながら、一心にその信念を貫こうとする気持ちが清々しい。
「自らの大事なものは自ら守らねばならぬ。そうしなければ大事なものは、いつかなくなってしまう。」
「山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。人だけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると心が落ち着くのだ。間小四郎、おのれがおのれであることにためらうな。」
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世評の高い本ですが、どうでしょう。
もちろん、悪い本ではありません。でも、少々肩透かしを食った感じがあります。期待が高すぎたからかも知れません。
帯に「感動と静謐に満ちた傑作」と縄田一男さんは書いてます。
しかし次から次に起こる事件は、どちらかと言えば静謐と言うより煩いほどです。登場人物の設定にも違和感を感じます。悪家老に見えた織部、策士の三弥、悪女の七與、そして伏影と呼ばれる隠密集団、余りに多くの脇役たちが現れ、結果として書き込みが不足し、捻った挙句の予定調和という気がします。
どうしても藤沢さんの「蝉しぐれ」との比較になってしまいます。「蝉しぐれ」で藤沢さんが描いたのは、藩の騒動を背景にしながら、一人の少年の成長と友情の物語でした。
この作品も同じことを目指したのではないかと思います。
しかし、あまりに多くの要素(事件・人物)を入れ過ぎたため、そうした「成長や友情」と言った要素が弱まり、なんだか薄っぺらく感じてしまうのです。もっと主人公の内的葛藤を表現できれば、より高い感動を描けたのではないかと思うのです。
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葉室さんの作品はまだ数冊しか読んでないが、今回も期待通りで大満足の一冊だった。
二転三転しながらも信念を持って進んでいく姿がかっこいい。
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図書館で。
最初に結末ありきで過去を振り返る、という手法は…なんというのか読んでいて侘しくなるというか。
面白くない訳ではないのだけれども彼らの行動が歯がゆい。まあ時代物だし今のように自由に動ける身分で無いのはわかるんですが… ちょっと最後までたどり着けなかった。
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福岡藩の支藩である秋月藩の藩士、間小四郎の物語。家老の悪事から藩を守るため、本藩からの政治介入から守るため、時には謀議を企て、悪人になることも厭わず生きた。最後は流罪となるが藩のため民のためにを貫き、すがすがしい表情を浮かべる。「静謐こそ、われらが多年、力を尽くして作り上げたもの。されば、それがしにとっては誇りでござる」。政事に携わる者たちの思いを上手く描いた時代小説だ。
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内容(「BOOK」データベースより)
筑前の小藩・秋月藩で、専横を極める家老・宮崎織部への不満が高まっていた。間小四郎は、志を同じくする仲間の藩士たちとともに糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得てその排除に成功する。藩政の刷新に情熱を傾けようとする小四郎だったが、家老失脚の背後には福岡藩の策謀があり、いつしか仲間との絆も揺らぎ始めて、小四郎はひとり、捨て石となる決意を固めるが―。絶賛を浴びた時代小説の傑作、待望の文庫化。
平成29年12月11日~19日
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2018.2.7 読了
やや混み合ったストーリーだが結局は本藩・福岡藩に翻弄される生涯。その中で百姓女・いとが葛を作り上げるエピソードはもの哀しくも一服の清涼剤になっている。
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深く澄んだ湖を見ているような気分にさせる素晴らしい作品です。力を尽くして作り上げた静謐、受け継がれると良いですね。毅然とした生き方、そして信念。私も見倣わなければ…
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面白かった!
勧善懲悪だけど勧善懲悪ではないストーリ(?)が魅力!
当時の政治っていうか藩政に生涯をかけた人物の物語。
主人公の間小四郎は小藩の秋月藩の藩士。
仲間達の力と本藩の福岡藩の援助を借りて、専横を極める家老宮崎織部の排除に成功!
しかし、その裏には福岡藩の陰謀が...
そして、当時の仲間達との関係も揺らぎ始めます。
そんな中、秋月藩のため、その民ために、さらには、福岡藩の介入から守るために、自らを捨石になる決意を固め立ち向かっていきます。
グッときたシーンは、やはり、チャンバラ(笑)
仇討という名目で小四郎を討とうとする福岡藩の謀略。
さらに、その仇打ちの助太刀として16人。
一方の小四郎は助太刀を頼まず、一人で戦う決意をします。小四郎を思う女が小四郎の昔の仲間達に助太刀を依頼するも、今の生活や立場から、断られます。
小四郎は17人の相手と戦う事に..
そして、いざ、仇討ちの場所での決闘では...
昔の仲間達が助太刀にやって来て、一緒に戦うことになります。
このシーン、昔の仲間の想いにグッときました。
こうした福岡藩からの支配、確執を防ぎ、さらに秋月藩の民の為には自ら悪人になることを厭わず、生き抜いた小四郎の凛とした生き方が清々しい。
ということで、お勧め!