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葉室作品の真骨頂!秋月の美しい情景に彩られた歴史青春一代記
2021/06/03 09:30
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投稿者:Ryohei - この投稿者のレビュー一覧を見る
福岡出身の私にとって秋月は小さい頃何度か行った思い出の土地である。覚えている記憶は、紅葉と葛餅。最近では台風や水害で話題になっているが、本作は私の知っている秋月をふんだんに詰め込んだ作品だった。
話自体は歴史物でよくある巨悪と対峙する青春一代記物。怖がりの小四郎が同年代の仲間とともに乗っ取りを狙う福岡藩と戦い、自藩を守っていく。戦いの場面や友情の話などそれぞれの要素で高揚するものがあったが、それがどれも秋月の美しい風景に根付いているのが素晴らしい。
史実に根付いているからか、最後の悪に徹しても自藩を守ったというのが少し納得はいかなかったが、「織部崩し」の青春期から守るものが増えた「成年期」の葛藤など現代にもよく観られるテーマも歴史小説らしく清廉に美しく描いていて、読んでいて清々しかった。
その中でも、いとが「葛」を見つけ出し、それを名産に借金を返していくことに繋げるシーンは鳥肌物だった。ここが葛餅の原点なのかと。
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筑前の小藩、秋月藩は福岡藩の支藩でであったが、財政難、飢饉、悪政等様々な問題を、若き藩士の志で仲間とともに藩政の改革に取り組むなかで、様々な事件に巻き込まれて行くが、大局を見据えた、主人公の間小四郎(隠居して間余楽斎)の行動には共感するところがあります。
また幼少期に自分の弱さから妹の命を救ってやれなかった後悔を生涯持ちつつ、その後の生き方には後悔することなく、流罪になって安堵の思いに至った。自分の弱さに打ち勝とうとして今まで生きて来た。
そんな生き方が現代にも共通していると思いました。
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やや急展開な場面も
2015/08/29 08:16
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投稿者:kape - この投稿者のレビュー一覧を見る
政治家って基本的には今も昔も変わらないなと感じる作品。
テンポよく読めたが、距離を置いていた友人たちが、小四郎に助太刀する場面はとてもおもしろかったが、その後再び距離ができて、ラストにつながっていくのが急展開過ぎる印象を受けた。
思いがけず母校の名も登場して、ちょっと嬉しかった。
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大変面白かった。
主人公が、自分が逃げなかったろうかというのを自分に問いかけ、愚直に生きている姿がかっこいい。
(うーん、自分はにげてないかなぁ)
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”藩のために”を第一に生きる武士たち
そこまで忠誠を尽くす生き方をすることに、理解できない部分もある。
ただ、そこまで自分の生き方を見定めて生きることはある意味爽快かもしれない。
現代に生きる私にはそこまで出来ないと思うけれど。
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直木賞を受賞した『蜩ノ記』がまだ文庫にならないのでこれを買って読んで見ましたが、面白い。司馬遼太郎、藤沢周平の両巨頭亡き後、時代小説も読みたい作者がいなくなっていたけど、この人は楽しみと思わせる作品。『蜩ノ記』も文庫化の前に買ってしまうかも。
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人が人として生きていく素直な感情がてんこもりです
何のために生きていくのか、何を力に生きていくのか
現代社会で生きているわたしなんかは、
突き詰めて考える前に、流されたりあきらめたりしていくことを
素直に実直に受け止め立ち向かっていく様が清々する
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九州の小藩「秋月藩」を舞台にした時代小説。
直木賞を受賞した『蜩ノ記』に比べると、ちょっと強引なところがあることは否めません。ラストも静かな中にドラマチックなものがあった『蜩ノ記』に比べると、スッキリしない感じ。
でも個人的には泥くさいこの『秋月記』も面白かった!!
ちょっと生意気なことを書くと、忍者みたいなのが出てきたり、戦いのシーンがけっこう細かく描写されていて、葉室麟さんの筆が「時代小説の売り」に突っ走っているのはよくわかるのですが、葉室麟さんの「売り」はそこじゃなくて、人々の”想い”を表現した描写だと思うんですよね。
『蜩ノ記』ではそこのところにちゃんと焦点が当てられていました。
でも、作者のそんな気負いも決して嫌いじゃない!
今回、運命に翻弄されながらも健気に生きた「いと」には一番泣かされました。
ちょっと強引な「十七人対一人」の対決シーンだって、男の友情に熱いものがこみあげてきて思わずジーンときましたし♪
志(こころざし)を持った人間の潔さが気持ちのいい小説でした。
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直木賞受賞作「蜩の記」を読む前に、手にした一冊…
文庫の帯に、どどぉ~んと「祝・直木賞」の文字。
カバーには絶賛を浴びた時代小説の傑作、待望の文庫化! とあって
気になってしかたなかったのです。
これは筑前・秋月藩を舞台にした、藩政刷新に奔走する、
間小四郎の物語です…淡々とした筆致が、
登場人物の心のありさまを痛々しいほどに伝え…
この著者、なかなか手だれた枯淡の味わいがあるなぁ。
ボクが、いちばん心ふるわしたのは、農村で働く女・いと…と
小四郎のやりとり…農民の生活苦を救うため、良質の葛をつくる…
自分の命を削りながら…人はかくも人のために生きられるものなのか…
昔…「清貧」なんて言葉が流行ったことが、ふと頭をよぎったのです。
巻末で縄田一男が解説をしていて、藤沢周平をひきあいに
出しているのだけれど…うう~、この一冊では、
ボクは、そこまでは感じられず…というか、ここで「蜩の記」を
褒めちぎるってどうなのよ! あ~、読みたくなっちゃうじゃない!
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筑前秋月藩士、間余楽斎(小四朗)は藩主をないがしろにし、陰謀を企てたとされ、本藩福岡藩の主導によって流罪の断罪が下される。複雑な事情が絡む福岡藩と支藩である秋月藩の確執、政治的な軋轢があり、いわばお家騒動的な背景が窺える・・というのが導入部である。以後、物語は主人公・間小四朗の幼少期までさかのぼる。犬に襲われそうになった妹を臆病ゆえ助けられなかったトラウマを抱える。恐ろしさを乗り越えることで、ひとは勇気を持つのだ、父に諭され。また藩校の師範・藤田より“臆病の剣を使え”と教えられる。
専横を極める家老・宮崎織部。大阪商人、本藩からの借財も重なり無駄だともいえる石橋建設に異を唱え志を同じくする小四朗はじめ七人の署名で本藩に訴状を手渡す。織部家老や側近らは罷免となり失脚してしまうが、実は福岡藩のある策謀があったことを小四朗は知るのである・・・・・。
小四朗に関して、記録によるとという文言がいくつか出てくるので、恐らくは史実に基づいて描かれていると思われる。
宮本武蔵の二天流を使いこなし、不義密通を働く姫野三弥という男や伊賀忍者の末裔で柔の修行をする藤蔵など濃い人物像が興味をそそる。
恋仲になった石工を助けようと家老・織部の屋敷に女中奉公となった百姓娘・いとは、誰かの役に立ちたいと葛作りを小四朗に提案する、彼女の凛とした志しとか、逃げない男になると亡き妹に誓った小四朗の高潔で、いさぎよい生き方が胸を打つ。深い余韻の残る読後感!(書き留めたい、心に沁みるセリフがいっぱいあるが、これにて)
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全1巻。
今年の直木賞とってた作家さん。
読むの2冊目。
次第に孤立していきながらも、
信じた道を歩き通した侍の生き様って話。
藩内の政治抗争を舞台とした、
悪玉•善玉、友人•敵が割り切れない
複雑で人間くさい物語。
「銀漢の賦」を読んだときも思ったけど、
どことなく藤沢周平ぽい。
読了感が。
あとがきにもそれっぽいこと書いてあった。
藤沢より四角張ってるけど。
ぐいぐい引き込まれ一気に読まされたけど、
もう少し長く、深く掘り下げてもよかったかも。
時間の流れが速く、やや駆け足気味。
特に後半。
また、人物や背景の説明描写が堅苦しく、細かい。
のに、冒頭のいきなり読者が物語に放り込まれる感じとか、
呼び名がいろいろあって誰が誰だっけって感じとか、
理解するまで少しまごつく。
少し内容が似ているためか、
初めて読んだ「銀漢の賦」ほどのインパクトはなかったけど、
正統派の時代小説な感じ。
この人のチャンバラ割と好きかも。
追記
再読がおすすめ。
この人の読者に優しくない感じとか
たまに嫌みに感じるくらい四角張った感じとか
1回読んだだけだと物語がわかりにくいかも。
再読した方が泣いた。
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直木賞作家ということと、タイトルの印象から内容も見ずに買った本。
なんとなく、作家の名前の印象と、タイトルが似ているからというだけで、山月記のような話だと思ってしまった…
でも、おもしろかった。淡々としてて、時々時間がとびすぎるところもあったけれど、楽しく読めた。
また読みたいと思う作家は久々かも。
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善と悪は、きっちりと二つに分かれるものではない。
自藩を守るために懸命にはたらく間小四郎の物語。政事はどのようにしたところで、すべての者にとって良いという結果になることはありえない。悪政を敷いたと自分達が糾弾・追放した家老が最も理解できる相手(の一人)だったり、幼い頃から気心しれた友人が政敵となったり。
自らの信じた道をひたすらに歩く小四郎の人生はもの悲しい。けれど、きっと彼自身は胸を張って政治人生の終わりを迎えたと思うのだ。存亡の危機に瀕した小藩を舞台に、あらゆる人の善と悪と志と心と愛憎が縒り合わされた物語。
しかし、国を直接動かしていく人間には、こういった覚悟をもってもらいたいものだとしみじみと思います。
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ちょっと読書から離れていたけれども、直木賞作家葉室麟の「秋月記」。前に読んだ「銀漢の賦」が面白かったので、買ってあったものをやっと読めた。面白かった!本当に、こういう系の話好き〜。江戸時代の武士の話。だいたい地方の藩の跡目争いとか、家老による専横とかに、真面目な武士が立ち向かう。
今回は、武士の男の友情的な話とか、あえて憎まれ役となって藩を守るとか、そういう人情的な話。葉室麟の小説は、本当に読みやすいし、読んでいて映像が浮かぶ。映画監督じゃないけど、映画化したくなるw
「外部の敵がいなくなれば、必ず内部に敵が生まれる。気をつけなされよ。」的な台詞が非情に印象深かった。
ネタバレになりますが、果たし合いに昔の仲間が助太刀しにきてくれるシーンが、「先が読める」んだけど、好きすぎる。
今はまた続けて葉室麟の「いのちなりけり」を読んでいます。こちらもおもしろい!
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秋月藩の運営で苦悩しながらひたむきに改革を進めていく間小四郎。最初は若い同志で結託して捨て身で突き進むも、出世するにつれて同志とも争う仲に。最後は捨て石となって、自分が悪評を受けながらも、藩にとって最善の道を選択する。素晴らしい。「お金は泥の中に落ちている。手を汚さないでとることはできない」というフレーズは使えそう。