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主人公の2人に起こる不思議な出来事が最後に繋がっていく展開、昨年の震災を前提に描かれている。故に生と死についての哲学的な表現が多い。最後はなるほどと思うが物語を楽しむには至らず、自分に読解力や感性が足りないのか。
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時間と生死(生命)に対する固定観念を揺さぶる一冊。日常と思索の往来、堪能しました。白石さんの作品を読むと、誰かと語り合いたくなります。
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死に満ちたこの星で、あなたにまた会えるでしょうか?
郷里の母から送られてきた、バーバリーのレインコート。
なぜ?ここにもあるのに・・・・・。
震災後の生と死を鋭く問う、白石一文の新たな傑作。
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熊沢武夫と滝井るり子、現在ではまったく接点のない二人の様子と、彼らに起こる少しばかり不思議な出来事が並行して語られる。二人がたどり着く場所は、一体どこなのだろうという興味も湧くが、それよりも、時間の流れの不思議さ、人間が生まれて生きて、逃れようもなく死んでいくということ、「現在」という一瞬がどれほど不確かなものであるかということなどを――ときに受け容れがたいところもあるが――、さまざま考えさせられる一冊である。
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母がよく言う、宇宙の永遠に比べればこの世の営みなんてほんの一瞬に過ぎないが、それでも大切なことなんだ。なんてことを考えさせられる本だった。人との出会いとか別れとか死とか…震災後のいろいろなことをつらつら考えてしまった。
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死という誰にとっても確実なものを見つめる話し。東京に住む主人公のもとへ、実家のある長崎の母から、彼のものと思われるバーバリーのレインコートがバス停に置いてある、という所から話しは始まる。結局、このエピソードは未解決のまま物語は終わるのだが、この世界が幻影で、不確かなもので、その根拠は、そもそも世界のことは何もわかってなくて…といういつもの白石節が炸裂する、という展開。いつもほど登場人物が「雄弁」ではないのは、震災と云う圧倒的な現実を目の前に、書き手が萎縮してしまったのかも、という印象を受けた。
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震災以降、たぶん誰もが感じている、生と死の思いがけない近さと、偶発性、社会のゆらぎのようなものを、白石一文らしい観念的な文章で描いている。「経験はすべてレプリカ」だという表現はするっと入ってきたが、その象徴として描かれた、未来から戻って来た携帯や、故郷で発見されたコートなどがどうにも腑に落ちず、物語自体が自分の中で滑らかに繋がらず不満が残る。しかし、震災以降の社会を覆う空気を、言葉にはならなくとも、作者と同じように感じている人は多いだろうし、自分もそのひとりだと感じた。震災を目の当たりにし、様々な辛いことを見て、経験して、考えている今のわたしたちには、少なからず沁みる部分があるだろうし、今ならではの作品だと思う。
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白石一文は「一瞬の光」以来、新作が出るたびに読んでいる。高村薫とは一味違うが人物描写やとりまく社会背景の精緻さが好きな理由。しかし最近は哲学的傾向が強くだんだん読みづらくなっている気がする。ストーリーは2人の主人公(同級生)に起こる時空を超えた不思議な出来事を主軸に「死」とはなにか?私たちが生きているこの世界は実在するのか?ということを2人の全く違う人生にからめて問いかけている。著者にはめずらしく?結末が安心できる展開。
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白石さん待望の新作。震災後、「生と死」を書きたくて、書きたくて、たまらなくて書いた、と感じた。
「生」を肯定するには「死」を肯定しなければならない。
受け入れなければならない。
震災を肯定するわけじゃないけど。
難しい方程式を解いているような、
メイビスの輪にはまってしまったかのような、そんな読後感。
白石さんの作品って、すぐにもう一回読みたくなるのはどうしてだろう。
図書館で借りる身としては、なかなか難しいのだけど。
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ユラユラと思うままに読み進めていくと「僕」から問い掛けられる。「それをどう思う?」自分の考えを頭の中で思い描いてみる。「僕」との対話。そう云う楽しみ方が出来る作品。
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手元にあるのに、郷里の母親から送られてきたコート。時空を越えた不思議な出来事。ワクワク始まる物語も、作者は主人公に時間と生と死の概念を語らせ続けます。全ては幻影であり、時間はレプリカの連続?哲学書を読んだ気分です。
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哲学的と色んな方が言われてるが、
生と死。
そして時間。
そういうものを考えるきっかけを与えてくれる一冊だと思う。
でも、
純粋に物語を楽しみたいなと思う私には、
物足りない。
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消化不良の作品。
震災後に作者が考えたこと、思ったこと、気づいたこと、伝えたいこと、などを、ファンタジックな物語で表現している。
けれど、途中途中でまるでエッセイのように登場人物が作者の想いを語る場面があり、小説を読んでいるのが、エッセイを読んでいるのかがわからなくなるような、モヤモヤを感じた。
伝えたいことを伝えるために物語の形をとったせいか、いつもの人物の描き方と比べ中途半端で、いかにも「想いを伝えるための人形」といった感じ。
想いのすべてを伝えるエッセイを書くか、想いをメタファーとした物語を描くのか、どちらかだったら、もっと心に響いたと思う。
少し残念な作品。
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震災から1年。本書を読み、「生」と「死」、人は何のために存在し、何のために生きているのかを考えさせられた。
時間の概念についての表現というか、例えは面白い。
もの悲しさが残る読後感。
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軽快に読めるかと思っていたら、途中から自分がこんがらがってしまいました。また、読んでみないと本当は評価できないのかな。
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311以降、小説家が何を感じどんな作品を書くのかとても興味があった。この本は一応小説の形になってるけど、時間とか死とかをテーマにした哲学的なエッセイみたいな感じ。以下引用「絶望や希望といった言葉は、そうした超越的な現実の前ではもはやなんの意味もなさないことを僕は感じた。今回の大地震や大津波のあと、巷に氾濫する「祈り」や「希望」といった言葉にどうしても自分が同調できなかった理由が、その時僕にははっきりと理解できた。僕達は、あの大地震と大津波の光景を目の当たりにすることで、死の恐怖や絶望ではなく、実際は死の永遠性を垣間見たのである。」未来から忘れ物のレインコートが届けられるのはソフィーの世界に似てるし、主人公が男女二人なところは1Q84っぽい。