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ヴァルデマールでないラッキーさんの本。「白鳥の湖」が元ネタなわけですが、私の絵本レベルの知識でも懐かしいシーンがあってびっくり。
抑圧された少女達が主人公なので、いつもほどの爽快感は読中ほとんどないのですが、お父さん退場後はオディールのしたたかな知恵の使い方がどんどん上がっていって楽しかったです。女の子が生き生きしてるのはウキウキするね!
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(No.11-92) ファンタジーです。
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『魔術師フォン・ロットバルト男爵によって昼は白鳥、夜は人に戻る魔法をかけられた少女たち。犯した罪に対する当然の罰だという父の言葉を信じて監視役を務めていたオディールは、余暇には魔術研究に励み、父親を満足させようと試みるが果たせず、鬱屈した毎日を送っていた。だが白鳥の王女に試練が課せられ、その罪の告白を聞くことでオディールの頑なな心に変化が生まれ・・・。
ラッキー版「白鳥の湖」登場!』
シリーズでないラッキー作品は私は初めて。というか今まで日本で出版されてないのでは?
これはあの有名なバレエ「白鳥の湖」を下敷きにした物語です。調べたらバレエの更に元ネタは童話らしい。私は民話かなと思ってました。もしかして民話を基に童話が書かれたのかも。舞台は昔のドイツです。あちこちに王国がありますがそれぞれは小さい国なので神聖ローマ帝国の時代のようです。王様のほかに皇帝という存在があるから。
元の話は登場人物がなぜそういう行動をするのか、あまり説明がありません(私は舞台は見たことがなく、切れ切れのシーンをテレビなどで垣間見たくらいですが)。舞台でセリフもなく踊りで表現するのですから、内面の描写はかなり難しい。小説だと心の動きを描いてくれるのが良かったです。
主人公がオデットでなくオディールというのも良いわ。
ラッキーには「身内や一族から抑圧されたり無視されたりしている少女が、そこから飛び出して自己を確立、最後には成功して幸せをつかむ」という話が多い。きっとこれもそうだろうな、どこまで幸せになれるのか楽しみだわ~と思いながらオディールの苦労を読み進めました。幸せになれなかったら怒っちゃうぞ!と。原作のラストは悲劇だけれど、幸せになるバージョンも作られているそうだしね。
悪役としてジークフリート王子の母・クロティルド女王とオディールの父・フォン・ロッドバルトの二人が出てきます。少し不満だったのは、クロティルド女王がどうして権力に固執するのかという動機はかなり分かりやすく書いてくれているのに、フォン・ロッドバルトがなぜこうまで女性を憎んでいるのかがほとんど書いていないということ。フォン・ロッドバルトは、自分のやっていることは正しいことで罰を受けるようなことをする女性が悪いのだと信じているのですが(だからこそ始末が悪い)、根底には女性に対する憎しみがあることははっきりしています。ロッドバルトさん、あなたに何があったのですか?その原因はオディールのお母さんですか?と聞いてみたくて仕方ありませんでした。
王女オデット、王子ジークフリート、そしてオディール、この3人とも親がとんでもない人。オデットは逆らった結果フォン・ロッドバルトの手に落ちますが、ジークフリートとオディールは自分が抑圧され操られていることになかなか気が付きません。
クロティルド女王は頭も良いし国政はちゃんとやっていて、息子を立派な次期王に育てるという道も選べたのに。自分の息子でも権力を譲りたくないというのは、父王と王子の間ではよくあるテーマですが母親と息子なのに・・・・。おバカになるよう育てられてしまったジークフリートが気の毒でした。
私が一番気になったのはオディールです。お父様のために、お父様が気に入ってくださるかしら、お父様はどう思うかしら、と父が大好きで認められたくて一生懸命だったのに・・・・。徐々に父が自分のことを、ただの道具だと思っていることに気が付いてしまうのです。
3人の若者が幸せを求めて頑張る姿がとても良かったです。
不満だったのは邦題です。原題は「The Black Swan」なので訳者の方も悩んで、訳者が決めたというより編集者たちと決めたようです。
確かに「ブラック・スワン」では最近の映画もあるし内容を誤解させてしまうおそれがありますね。
私は副題として小さく付いている「黒鳥伝」を題名にして表紙でも大きく書いて、題名になっている「囚われの王女と魔術師の娘」を副題にしたら良かったのにと思いました。
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白鳥の湖ってこんな話だったんだ!って感じ。
元々のがどんなだったか、さっぱり覚えてないけど、
むかーしバレエ見たことあるけど、見る前に読めればよかったな笑
なんか怠くて寝ちゃいそうだったのは覚えてるくらいだもの。
ハウルの動く城みたいな感じで、ジブリでアニメ化しないかなー。
ハウルっぽすぎてダメかな笑
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まあ、めでたしめでたしでなにより。
ラッキーってやっぱりフェミニストよね。
女の子も美しいだけでなく、教養が必要です!
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ラッキーと言えば長年ヴァルデマールシリーズで過酷な状況の克服や自立を描いてきた方で、どちらかというと成熟した女性こそ共感が大きい作品を輩出してきたイメージでした。
しかし、今作は良い意味で「ラッキー流ジュブナイル」を読ませてもらったという気がします。
アン・マキャフリー女史との共著「歌う船」「旅立つ船」2作と似た匂いなのですが、あちらはSFであり共著です。
こちらは完全にラッキーテイストでありながら、小学校高学年~中学生くらいの女の子にも読んでほしいと思うような物語に仕上がっていました。
有名すぎるほど有名な白鳥の湖をベースにしていますが、そこはさすがラッキーらしく、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)が単純な善悪の対比ではなく、それぞれに事情や感情があります。
主人公はオディールで、その周辺でオデットが絡んできます。最初は互いを、敵の娘/罰されるべき存在として、双方が物理的にも感情的にも距離を置いて接していますが、物語が進むにつれ段々と打ちとけ合っていくあたり、微笑ましく読み進めていけました。
また、王子とその気の置けない友人の関係は、序盤のオデットとオディールとのよい対比になっています。
個人的には、王子が嘘くさい綺麗事で固めたようなステレオタイプの「おとぎ話のプリンス」でないところが一番良かった点でした。
ラッキーとしては軽いテイストの物語ですが、こめられているメッセージそのものは不変だと思います。
オディールの将来が楽しみではあるので、もしシリーズ化されたら続けて買うと思います。
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2012/04/14:白鳥の湖はあらすじしか知らなかったので新鮮に読めました。フォン・ロッドバルトがなぜ少女たちを虐げていたのか理由が描かれてなかったのが残念。
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「白鳥の湖」ラッキー解釈版。「白鳥の湖」って有名だけど、どんな話なんだかよくわかってなかった。それを、黒鳥<オディール>目線で展開するこの本、ラッキーらしい魔術師(お父さん)が出てきます。最初の頃の王子は好感度ゼロ。でも、まあこんなもんなんだろうなと納得。
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有名な『白鳥の湖』のパロディ。
お話うんぬんより、曲が有名かな、と思います。たぶんお話をしっかり覚えている人って少ないのでは? というか、私がそうです。ええ。
でも曲は様々なところで使われていて有名ですよね。
私も曲と、昔アニメで見た覚えがある、という程度。
たぶんバレエもチラ見ぐらいはしたことがあると思いますが、全部は見ていない。
普通は『白鳥』であるオデットを主軸に語られる話ではありますが、今回は黒鳥であるオディールが主軸。たぶんこういうパロディはたくさんあるはずですが、オディールが魔術師だけど普通の少女で、少女らしい優しさとか身勝手さとか、一途さに「かわいいなぁ」と思いました。
アニメなどでは魔術師の娘であり、悪女という役どころの手下という位置付けなので(でも、バレエでの一番の見せ場は黒鳥のはずだけど。白鳥と黒鳥を一人で踊るらしいですね)あまり個性を注目されませんが、こちらは主役で、よく書き込まれています。
魔術師の館から出て、世界を知り、白鳥たちを知る過程で、だんだんと父である魔術師に対する認識がかわっていく。魔術師がどうして白鳥たちに魔法をかけたのかは語られていますが、そこにいたるまでが説明されていないのが残念。冷酷な魔術師の部分だけなので、オディールの心離れには共感しやすいですが、ちょっと中途半端。
物語が「そしてみんな幸せに暮らしました」でおわれて、まとまった感じ。
ああ、ちなみに王子様は存在感が薄いな。最初のころは好感度ゼロ。
ヒロインが黒鳥だし、そして乙女たちの物語だしね。
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最初の王子には好感度ゼロだったけど、そういうお馬鹿な子に育つよう仕向けられてただけで、元々は学ぶことも好きだし辛抱強さもあるし、いい王様になれる素質は充分あったのかなと思いました。オデットも女王らしく誇り高い女性だし、オディールも一途で可愛くていい子だった。
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下敷きとなっている「白鳥の湖」は観たことがありませんので、「白鳥の湖」と比べての中身はよく分かりません。しかし、本作は間違いなく「マーセデス・ラッキー」の作品でした。
読んでいて、どこまでが原作で、どこからがオリジナルなのかはよく分かりませんでした。それはつまり、とても上手にアレンジを施されている、という事かと思います。原作があることを知っていなければ、ラッキーの新作と思って読んでいたかも。
焦点が当てられているのは、魔術師の娘オディールと、王子ジークフリート。本来のヒロインであるオデットは、少し目立つ端役、という感じ。むしろ、ジークフリートの母親である王妃クロティルドや、吟遊詩人ウヴェの存在感が高いです。もちろん、それ以外の人物たちも、ラッキー作品らしく魅力的に描かれており、それぞれがそれぞれの行動原理に従って活き活きと動くので、読んでてとても楽しいです。
オディールの変化していく姿や、終盤で解放されたあとの活き活きとした立ち振る舞いなんかが完璧なラッキー作品のヒロインで、もうそれだけで大満足だったり。途中途中で差し挟まれていく小さなエピソードの数々で、魅力的なヒロインの姿を浮き上がらせていく手法が本当に見事です。
あと、一応の「悪役」として描かれるクロティルドですが、一方の悪役であるフォン・ロットバルト男爵とは違い、「ちゃんとした」人物として描かれていて、個人的には好感の持てる(部分もある)人物だったので、あの結末に至ってしまったのはちょっと残念でした。でも「善い人物」というわけでもないので、まあ仕方ないのかな。
同じ作者の作品であるからなのか、雰囲気として、ヴァルデマール年代記と近いものを感じました。なかなか続刊が出てくれないヴァルデマール年代記の続きを待つ人にとっては、その飢えを癒やす格好の作品となると思います。
もちろん、ヴァルデマール年代記とは関係なく、本作単体でも、とてもよく出来たハイ・ファンタジィであることは間違いないですけれどね。
あと、どこかのレビューに書いてありましたが、タイトルは逆(黒鳥伝がメインで、囚われの〜はサブ)とした方が良かったのではないかなと思いました。けど、それだとちょっと、物語のニュアンスから微妙にずれちゃう気もする。。。(ちなみに原作のタイトルは、The Black Swanだそう)
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『男なんて、知れば知るほど嫌いになってきたみたい!男がこんなに無節操なのにどうしてお父さまは女に対してこれだけきびしくできるの?』
ミソジニー拗らせフォン・ロットバルト男爵。趣味は不埒な女たちに罰を与えることです。
そんなインセル親父から抑圧され、搾取され続けた娘オディールが、オデットや白鳥たちと関わるにつれて自分を取り戻していく。それからの輝かしい未来へつながるラストがとても心に残る。毒親からの解放っていうテーマは興味深いよね。
もう一人の主人公であるジークフリート王子は好感度マイナスからの出発で回復することはないだろうと思ってたら、まさかの挽回をしてきたのは驚いた。
彼も女王である母からの抑圧によってボンクラに育てられたことは同情するけれど、それでも物語の前半で彼がしていた振る舞いには辟易するってかただの強姦魔やんけ!!だから王子のシーンを読むのはけっこう苦痛だった。からのあの佳境での王子さま然とした振る舞いですからね。ちょっと驚いたわ…強姦魔だけど
オディールとオデットの段々と打ち解けていく様は思わず笑顔になってしまう。父親からの愛情を勝ち取ろうと奴隷的に振る舞っていたオディールが、白鳥の群れと一緒に過ごすうちに感情をあらわにしていくのとてもいいよね。そして父に対し疑問や怒りを強くしていくところや、土壇場になっても父に対して自分を求めてよ!ってなってしまうところ。オディール、どうかこれからたくさん幸せになってね…。
あと最後に、ベンノとオディールばりばりフラグ立ってたけど二人の描写が少ないのはちょっとだけ不満だったかな。チャラ男と真面目な女の子の組み合わせは最高なので、できれはもうちょっとだけこの二人の絡みが見たかったです。
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ファンタジー系のシリーズものを読んでて、
『ヴァルデマール』を思い出し検索したけど、
続刊の日本語訳は出てなかった…(/_;)
古書でこれを見つけたのが唯一の救いでした。
#中央公論新社さん? #創元推理文庫さん??