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みんなのレビュー7件

みんなの評価4.3

評価内訳

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7 件中 1 件~ 7 件を表示

紙の本

祭の夜も寂しい

2012/10/28 21:17

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

パヴェーゼとはファシズムと戦った人なのか。逮捕され流刑にされた身の上だが、闘士というよりは詩人であったろう。そもそもが巻き添えでの逮捕だったが、そのこと自体によってポジションが色分けされてしまい、暮らしていく空間が定められてしまったかもしれない。
何より彼に去来したのは、愛した郷土に裏切られ、親しい人々と切り離されたことの哀しみ。それから愛した人からの裏切り、あるいは自分が裏切ることになった哀しみ。その透明な哀しみが結晶したような作品集だ。
題材はそのまま流刑中や受刑者である身の上や、その周辺の人々。貧しく、粗暴で、しかし明るく、狡猾で、女好きで、そういう人々を作者は愛してやまないのだ。農夫や人夫である彼らは、純朴であるばかりでなく、経済的な搾取の問題に薄々気付いていて、それゆえに怒りは政治体制や、それを支えているキリスト教的道徳に秘かに向けられていることも作者は感じている。
その点、女達の怒りの矛先は男に向ければ済むのだが、どの男もろくでなしばかりなのは、その先に限界があるせいだし、救いの求め先も限られる。
せめて男も女も、様々な制約からの逃亡先に、恋愛の世界は一見自由とも見えるのだが、その幻想と現実は少しずつ乖離していく。耐えられなくなった者から破局を迎えていく。たぶんそんな構造は遥か過去から連綿と続いていただろうが、パヴェーゼはそれを言語化する術を得た。イデオロギーなり論理なりの進歩と、パヴェーゼ自身の経験がそれを為さしめたのだろう。
表題作は、祭のさなかにも自分浮かれ騒げない人々、逃亡するか破滅するかのぎりぎりの状況を抱えた人々の話だ。神父も役人も、それが個人でなく社会構造の問題だと分かっているがどうしようもない。「ならずもの」の殺人を犯した脱獄囚は女のもとを訪ねるが、看守も世間の人々もあまりぴりぴりしてる風がない。結局は同じ境遇の仲間で、自分と近い精神性を持っていることを了解している、理屈や建前よりもそういうコミュニティの結びつきを信頼しているところにも、新しい世の中への希望の芽があるのではないか。
「丘の中の別荘」は一転して非産階級風の若者の挫折らしきスケッチだが、繊細さ故に傷ついていく彼の姿は、同時代の工員達とも共感できるし、現代の不安にさらされ非リア充化を恐れる若者達にも通じそうだ。
悩み思索に沈んで、世間の華やかな部分に違和感を感じる人たち。彼らは坑道のカナリヤなのかもしれない。農村に、都市の底辺に、そうした人々がこの時代に現れていたことを敏感に嗅ぎ取ったのは、類いまれな感性であり、現代でもまた必要とされる共感力だろう。

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2012/09/23 21:59

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2012/10/27 21:50

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2018/09/23 23:01

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2018/11/05 20:16

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2018/10/29 01:58

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2021/07/06 01:16

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