こんな時だけど、そろそろ未来の話をしよう
2012/03/27 11:19
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
「こんな時だけど、そろそろ未来の話をしよう」。作中に何度かかかれたこの言葉が、この物語が言いたい事をを良く表していると思う。そしてとてもとても、同感させられる。震災直後から私がずっと感じ、訴えてきた事です。東日本大震災で、被災地の人々がどんな辛い経験をしたか。どんな苦しい状況にあるのか。それを私たちは決して忘れてはいけないし、受け止めなくてはなりません。でも、今尚お涙頂戴的にマスコミが探し出し来ては流し続ける悲惨な話や悲しい話とか。ネットで拡散し続ける、聞くだに辛い話。そういうのは、正直もういらない。さらに悲しい事実を探し回って、悲嘆にくれてる場合じゃない。人の不幸に涙して、自分の幸せ噛み締めてる場合じゃない。被災地の方々も、あの日に何が起こったのか、それから一年でどれほど辛い思いをしたか。今なおそれを聞いてもらいたいだろうか。いやきっと、これからどうして生きていくのか、国は国民は、何をしてくれるのかそれを聞かせてもらいたいと思ってるのではないだろうか。
僕が言いたいのは、これまで言いつづけてきたのは、集約すればただ一点。「子供たちにどんな未来を作ってやれるのか」。子供たちが子供らしい夢を持てる未来に、少しでも近づけてやれるのかどうか。これに尽きます。また考え深い子供たちは、自分の未来に暗澹たる気持 ちになってしまっていると思う。この情報化社会で、事実と虚言が入り混じった情報の波に翻弄されて、疑心暗鬼になりきってしまっているのじゃないだろうか。そういう子供によっては、自暴自棄にもなりかねない。そんな子達に、どれほどの未来の話をしてやれるのか。
そのテーマの元に、原発問題から発するエネルギー問題、被災地問題などを多面的に検証した上で、生の声で物語に仕上げてある。そして締めくくりには、それらを解決に導く、大きな一つの夢が提示される。でも夢は夢だけど、全員が全力で実現に近づけなきゃいけない夢。とかくあなたが親なら、読んでみてもらいたい一冊。とてもオススメ。
“原発事故”という未曽有の災害が生み出した社会の“闇”を巡る話が主題
2016/11/17 09:58
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2011年3月11日の東日本大震災のことを描いた作品と思って読んだら、主題はもっと深淵なものであった。 “原発事故”という未曽有の災害が生み出した社会の“闇”を巡る話が主題であり、その意味で「震災後」という題名をつけたのかな。確かに、“原発事故”で多くの人々がこのままではいけないとは思いつつ、速やかに脱原発に進めないジレンマ。そのジレンマとそれを生み出してきた過去の歩みから抜け出せないために未来への展望・希望・期待を持ち得なくなった国民の苦悩を描きたかったらしい。確かに、避けて通れないにも拘わらず、容易に答えを見いだせない問題だけに実に衝撃的な作品である。ただ、一つ目の赤ん坊の写真を偽造してネットにばらまいた(フクシマベビー)中学生の父親が中学校の全校集会で社会の“闇”について話すという展開は何となく問題のすり替えのような気がしてスッキリとしなかった。
原発事故がらみで悪質なデマ情報をネットで流した中学生を糾弾する中学校の生徒・教職員・生徒の親・その他関係者からなる“講演会“から始まる出だしに少々面食らった。私の頭の中では当然、地震による津波被害のことが主題になると考えていたからである。原発事故は確かに地震による津波によって引き起こされはしたが、私にとっては”震災“の内に含めて考えることに何故か酷く違和感を感じるためである。何故なら、原発は事故を起こした時には、とてつもなく長い期間にわたって、甚大な被害を広範囲に及ぼすものであり、如何なる理由があっても事故を起こしてはならない類いのものでなければならないからである。最悪の想定では、某国による”軍事テロ“まで想定しておくべき種類の問題である。それなのに、たかだか”津波“によって、「電源がダウンしたため」の重大事故というのは余りにもお粗末過ぎはしないかと考えると、今回の原発事故は「震災の一部ではなく」、「本質的に事の重大さを軽視した、拙い自分らの技術を過信したことによる”人災“である」と思えてならないからである。どうも私の頭の中では、”震災“=”地震・大津波による災害“=”天災“と、”原発事故“=”人災“とは全く別の災害として整理されているらしい。さて、本書は意表をつく出だしから一転して時間を遡り、震災当日からの話を順に追う形になるが、さて私の感じる違和感と著者の言わんとすることとは交わっていくのだろうか。と思って読み進めたら、P-64に「以後、東北・関東各県で震度5クラスの揺れが頻発するようになり、それまで原発事故の陰で霞んでいた本来の”天災“、地震の脅威があらためて日本全土にのしかかってきた。」という記述を見て安心した。
しかし、本書で著者が描きたかったのは社会の“闇”、原発事故で蠢きだした人間の心の“闇”の問題だったらしい。うん、確かに言いたいことは分からないでもないのだが。展開としてどうもすっきりしませんでした。
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2012/3/10 Amazonより届く。
2017/9/22〜9/26
タイトル通り、2011年3月11日に起こった大震災後の話。あれから6年経ったが、これまで我が国が辿ってきた道はどうなんだろうか、と考えさせられる内容。福井作品はどれも現状打破をしなければ、という熱い気概を感じるが、本作はテーマが身近なだけに差し迫るものも多い。夢を語る大人はカッコ悪い、というような風潮はいつからなんだろうか。それで、若者に夢を持て、将来を考えて行動しろ、なんたとても言えないよな。石破茂氏の解説も素晴らしい。頭良いわ。
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【はじめに】
震災後、自分のことだけで精一杯で世の中がどのように受け止め一年が経ったのか考えたこともなかった。どのようなストーリーが描かれるのか気になり手に取った。
【感想】
ズバリ。自分は震災後、のほほんと生きすぎたと思うぐらい心の闇を鋭く捉えている。
確かに震災後、技術立国日本の信頼は内外ともに揺らぎあまつさえ国内政治は決断ができず先延ばしを続けている。
信頼できるものは何なのか。そこに闇が生まれるという事実を教えられた。子供世代でも親世代でもどの世代でも未曽有の災害の前に今まで信じてきたものへの幻想を抱き、幻滅もしている。
そこへ未来への夢をキーワードとして前へを向いて生きてくことがかけがえのないことだと野田家の人々が教えてくれる。
全く自分が考えもしなかった世界を教えてくれた。とても良かった。
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3/10に読み始めた。去年のこの日、明日に何が起こるのかも知らずに、明日もまた今日と同じような日が来るものと思っていたよねぇ…。3/11、14:46の黙祷を挿み、この日の内に読了。
震災後の6月から5ヵ月に亘って週刊ポストに連載されたというこの物語、初期の作品から大人になりきれていないこの国の政治と国民のことを書いてきた福井敏晴が、『愚かで、近視眼で、この国でしか生きていけないだろう無辜の民』こそが戦後日本を発展させてきたと愛おしみながら、『今度のことでは、みんなが大人にならなければならない』と、何の仕掛けもない直球勝負(熱が入りすぎて、最後は何を言いたかったのか今イチ伝わりにくかったり、偉いさんの祖父のお陰でぐじゃぐじゃになりそうな話がきれいに収まってしまうのが、お話としては難)。
主人公と同じく私も環境という仕事に関わっているのだけれど、環境という仕事は凄くスパンが長くて、今日明日の業績をまず追わなければならない企業の中ではその仕事の本質や大切さが理解されるのはとても難しい。
国の政策においても同様で、主人公の名前にどうしてもドジョウの顔が思い浮かぶのだけれど、目先の利益だけを追ってコロコロ政策を変えてきたこの国の政府に、今一度、地球環境問題の何たるかを深く理解して欲しいものと思う。
この3/11も日本のみならず世界各地で脱原発の集会が開かれたけれど、『脱原発を反戦と同じ棚においてはいかん』とか『犠牲からなにも学ばなかった復興など無意味だ』という作者の言葉は強く響く。
確かに『不確かな世界を生きているのだという…自分を守れるのは自分だけだという、寂しい現実』が露呈したけれど、私たちが今までも様々な局面を乗り切ってきたこともまた確か。
『今という時だけを吸収して、いつか親の代では為せなかったことを為していく』子どもたちの未来のために、今、大人たちがやるべきことは何か、深く考えるには良い機会。
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震災とその後を実体験した者の文章には思えないほどつまらんかった。
今の自分には何を言いたいのか理解不明。
もう暫くしたら、読みなおしてみよう。
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ノンフィクションのようにも思える作品でした。作者の熱い思いがちょっとからぶってる気もしますが、次世代へ責を負った我々に実行動を迫るようです。
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”小説”なんだけれど、実際にあってもおかしくはない。
震災後の日本に住む人が持つ不安と恐れと希望。
特に子供たちの思いはどうなんだろう。我が家の子供たちは、同居はしているけれどもう立派?な大人なので、通り一遍の感想を言い合っただけで心に持ってしまった傷を明らかにするようなことはなかった。
傷ついてしまった息子と父親の助けを借りながら立ち上がろうとするお父さん。ボランティアに行った先での出来事が生々しくせまってきます。
泣けました。そして希望ももらえた。
子供たちに示すことの出来る未来へのビジョンを持たない自分はホントにその他大勢なんだなと思う。息子のために学校で皆を前に未来への希望を熱く語ったお父さんに脱帽です。
そういえば、以前テレビで、月に発電帯を作ってそこから電波で電力をおくるという、荒唐無稽と思える話をやっていた。それに近いことが本当にあるのかもと思える。
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あっという間の文庫化に、衝動買い。
私的にガンダムucで、イマイチな評価になった福井晴敏評が復活!というぐらいに良かった。
震災後の2011年を舞台に、日本人が持っている地震以降の不安の原因が、この著作に表現されている。
あの日の日本政府のバタバタ感を冷静にインテリジェンスとして分析し表現されている。フィクションとは言えないぐらいに限りなくノンフィクションに近い。
見どころは、
・家族でボランティアで気仙沼に行くシーン
・最後の主人公の演説シーン
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福井晴敏の小説は、自分にとって「川の深さは」「Twelve Y.O.」に続き、本作が3作目。
3作読んで気づいたのは、どの作品の主人公も、現実の雨に打たれすぎて疲れきった中年男が主人公ということ。
その男たちが、今まで遭ったことのない困難に巻き込まれ、倒れそうになりながらも、守るべき何かを見つけて立ち上がる、というのが物語の共通のテーマだ。
実は自分はこのテーマが苦手で、「川の深さは」は半分まで読んで中断、「Twelve Y.O.」に至っては2回も途中で中断して、完読するのに3年かかっている。(自分の読書歴の中でも珍しい)
本作も同様に、3月11日の震災、次いで原発事故を東京で迎えた中年男を主人公に据え、家族に起きた困難と、それに立ち向かう中年男を描いている。
前2作に比べるとアッサリ通しで読んでしまったのは、震災というリアルな出来事をテーマにしたためか、それとも自分がオヤジになってしまったためか。とにかく今度は中断することなく、一気に最後まで読み切った。
全体的に気になる部分は無くは無いが、それでも震災、原発事故の後の「未来」を描こうという作者の心意気は非常に強く感じた。
特に最後の主人公の演説は息を呑む迫力で、なおかつ安易なエンディングにつなげていない、という点で良い小説であると思う。
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東京在住で、先の大震災を経験したある家族と父親の物語。
今を生きる日本人がそれぞれ抱いている気持ちが、小説という名を借りて克明に活字化されている、という印象です。
世の出版業界の皆さん、作家さん・ライターさん・写真家さん・編集者さん・その他モロモロの方々、今回の震災の記録をいろんな形の書物として発表されています。
とても良いことだと思います。
読書人のハシクレとして、出来るだけ目を通しつづけ、記憶を風化させないように努力したいと思います。
あと追加ですが、作中に懐かしい人物(某イージス関係)が登場します。
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福井晴敏が描く震災後の小説。
著者の作品は『動』が多いが、この作品は『静』の中に強く訴えるものがある。
強い未来を演説する主人公には共感。
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なにしろ、最後の演説が問題でしょう!
ここまでのストーリーと、この演説の落差は何? でも、小説的な技巧でこの落差を修正することはいくらでもできるのに、あえてそれをしてないということは、この落差こそ、作者の表現したいことなのだろうな・・・。
買ったときは、あの震災前後のことを小説として記録した作品を期待したのですが、この演説で見事に裏切られた。つまり、裏切ろうとしたんだろう。
そういえば、福井晴敏の小説はガンダム関連以外はこれが初めてです。他の作品も読みたくなりました。割と、こういう具体的なことを言っちゃう人なんでしょうか?
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福井さんの小説は好きなので、ほとんど読んでいる。震災を題材にした小説という事で気合を入れて読み始めた。
この本をこの時期に読んでおいて良かったと思う。
早めに購入して置いてあったので、もう少し早く読めば良かったかもしれない。
福井さんの作品だといつも舞台はどこか自分たちとは少しかけ離れた感じの事が多かったけれど、今回はごく普通の家庭のお父さん、野田が主人公だ。自分の父の仕事が元防衛省だったのが少し特殊ではあるけれど、しっかり者の妻と難しい年頃の息子、娘が登場する。
自分が震災後どうだったか?そんな事を省みながら読み進めた。とても辛くなるような場面もある。
読みながら、野田の家庭の動きを追いながら、自分はどう考えているんだろうと整理できる一冊でもあった。
福井さんの小説には父と子についての事がたくさん出てくると思う。
今回も仕事一筋に生き、野田に語り・託す父。
そして野田がこれから息子へ見せたい未来。
自然と人間の関わり、未来への思いなんかについてはこの本の前に読んだガンダムUCでも描かれていたのに繋がりそうだ。
なんにせよ、野田の父はとてつもなく格好良かった。
それと、亡国のイージスに出てくる人物がこの作品にも登場する。
嬉しかった。もしや!と思いながら読んでいたけど、名刺もらう場面で思わずニヤついた。
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あれから一年、未だこの国の未来は見えてこない。沈滞したムードが日本を覆う中、福井晴敏が書き上げた小説「震災後」
想像を超えた災害に遭遇した時、人は己の殻に閉じこもり現実を拒否するのか、それとも明日へとつながる希望を模索するのか・・・
小説では父と子の絆の再生を軸に、日本の未来へと話が展開する。
小説では一つの可能性を示しはしたが現実の社会はどうだろうか・・・
諦めるのは簡単。しかし今いる子供達、そしてこれから生まれる生命の為に、大人は更により良い社会を残さなければならない義務がある。
この小説を読んでこう感じた。
今後、日本に襲い来るかもしれない災害に怯え、またその可能性から目を背けるすべての人に読んでもらいたい一冊です。