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精選女性随筆集 2 森茉莉 吉屋信子 みんなのレビュー
- 森 茉莉 (著), 吉屋 信子 (著), 小池 真理子 (選)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:文藝春秋
- 発売日:2012/02/08
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紙の本
誰が一番したたかか
2012/05/17 18:12
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「精選女性随筆集」の第二巻めは、小池真理子さん選の「森茉莉/吉屋信子」集です。
この「精選女性随筆集」は川上弘美さんと小池真理子さんという二人の人気女性作家が選にあたっているのが一つの特長でもあります。二人がどのような女性作家を選んでいるのかも興味のわくところで、第一巻めの「幸田文」を川上弘美さんが選んでいるのは納得の一冊でした。
では、この巻はといえば、森茉莉と吉屋信子ではあまりにも極端な気がして仕方がありません。いわば、森茉莉は文豪森鴎外の娘という華やかな少女のイメージがあり、吉屋信子には少女小説に夢中のおとなしい少女のそれで、重なるところをあまり感じません。
小池真理子さんは巻頭のエッセイの表題を「二つの少女性」としていますが、森茉莉と吉屋信子の個性はまさにそれであり、同時に小池真理子さん自身がその少女の二面性に拘ってきた作家だともいえます。
王女様の気品、シンデレラの純朴。魔法使いがいなくとも、女性は常に二つの顔をもっているのではないでしょうか。
森茉莉は短編『薔薇くい姫』の中で幼少の頃父鴎外と暮らした当時の家の様子を語るのに自身の話にまったく話を聞いてもらえなかったことを恨むように書いていますが、本書に収録されている『幼い日々』を読むと、まるでその生活がどこまでも成長し続ける植物のように描かれ、読む者を圧倒させます。
この廊下はかつて通ったところ、この庭は先ほど垣間見たはず、鴎外はここにもいてそこにもいる。まるで縦横無尽に筆が走ります。こんな贅沢な文章にはなかなか出会えません。
後半の室生犀星、三島由紀夫、川端康成という三人の文豪への哀悼に文章も、どこかつんと突き放すようで、お嬢様然は森茉莉の個性といえます。
その一方で、吉屋信子の優等生ぶりはどうでしょう。
先輩作家岡本かの子、林芙美子、与謝野晶子に対するこのつつましさ。あるいは友人宇野千代を語る文章、いずれも前にでることなく、後ろにひかえた奥ゆかしさ。こういう女性はもてただろうと思いますが、吉屋信子は生涯独身を通しました。
そんな中、『馬と私』という競馬馬の馬主としてのエッセイは優等生がすこしいたずらをしているような感じさえします。それがまたかわいいのですが。
こんな二人を選んだ、小池真理子さんもしたたかな少女といえます。
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