紙の本
この時代が分かる
2017/01/31 01:19
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投稿者:あっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この話は知る人ぞ知るあの「ペレルマン」の話で、その周囲の人々から丸く攻め込む様なインタビューでまとめられている。ペレルマンの育った時代は私も既に学校に上がっていたのだけど、ソ連という言葉は知っている程度…。ロシアの前ってこんなだったのか。。。
ペレルマンの才能よりもこっちのインパクトが強い。
まぁ、数学者って何となく変わってるよね…。。。
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ミレニアム問題の一つである、ポアンカレ予想を証明したロシア人数学者ペレルマンの生い立ちから、受賞を拒否し、隠匿生活を送るようになった理由(の推測)まで。
タイトルが証明となっているので、一瞬ポアンカレ予想証明の解説かと思うが、実は、取材を受け付けないペレルマンの人物像に周囲の人間からの話から迫った伝記である。
訳は、滑らかで読みやすい。
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コーヒーカップとドーナッツの区別もつかない変な人達の研究、それがトポロジーだ。そのトポロジーに関する「ポアンカレ予想」はアメリカのクレイ数学研究所によって2000年に発表された100万ドルの懸賞金がかけられている7つの数学上の未解決問題のひとつでもあり、要はそれ位解決には道のりが長いと想定されていた数学の難問題だった。参考までにポアンカレ予想とは何かというと「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」というもので問題の意味すら判らないものだ。
それが発表されて間もない2002年から2003年にかけてポアンカレ予想が証明されたとの話題が世の中に出て一般ニュースにもなったことは記憶している人も多いであろう。その証明自体も興味のあるところだが、それ以上に耳目を集めたのがその業績に対する数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞受賞拒否、そしてミリニアム問題解決の100万ドル賞金受賞拒否という変わり者中の変わり者とレッテルを貼られるロシア人数学者のペレルマンだ。
と、言うことで興味を持って本書が単行本として出た2009年にも購入したのだが、その他のポアンカレ問題解説書を読んでとても手が出ないと嫌気がさして読まずに捨ててしまっていた。が、本書が文庫化されたのを見て、今一度ポアンカレ予想に挑戦しようかという軽い気持ちで再度購入したもの。とは言え素手の購入から半年余り経過しており今回も危うく捨てられる直前だったのだが奇跡的に手にとった。
が、本書は予想に反して頭が痛くなる数学的な説明はほぼ全く無く、ペレルマンが育った環境、教育制度、どうやって数学の世界を歩んできたのかという彼の人生に焦点を当てたノンフィクションだったのだ。旧ソ連時代のエリート数学教育、ユダヤ人に対する言われ無き不利益、数学オリンピックでメダルを取らねば大学入学も適わないという過酷な環境、その中でも出来るだけ自由闊達に研究をさせようとする教育者と当時の教育制度。スポーツでは有名だがこうした学問の世界にも有った国家エリート主義・制度(あっ、エリートは資本主義用語か?)には改めて驚かされる。
なぜこうしたペレルマンの境遇を理解できたかというと、著者もまたユダヤ系ロシア人でペレルマンと同じように数学エリート教育を受けてきたからだ。わずか一章だがポアンカレ予想について割かれているのだが、その説明は素人にとって目から鱗の如くわかり易い(否、わかった気分にさせる)ところに数学偏差値の高さが垣間見える。
世捨て人になったようなペレルマンは果たして今何処で何をやっているのか、人知れず新たな難問に挑戦しているのだろうか?それが気になる読後感想である。
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ポアンカレ予想を証明した天才数学者ペレルマンの評伝だ
ペレルマンの業績の一般向け解説書は何冊か読んだので、同様の書籍がまた出たのかと思った
ただ、“動的平衡“の福岡伸一が帯や解説で絶賛していたので、思わず買った
これまでの本ではトポロジーやポアンカレ予想の解説が中心で、ペレルマンその人については名誉や賞金を一切拒否するその変人ぶりに触れる程度であった
当然だ
今や彼は現実社会との接触を一切断っていて、情報が極めて少ないのだから
本書の著者にとってもそれは同じことだが、類似書とは大きく異なっている
それは彼女が、ペレルマンに関わりをもった殆ど全ての数学者たちと丹念に対話し、彼の人間形成過程やその人となりの輪郭を追い込んでいるからだ
それを可能にしたのは、彼女がペレルマンと同時代にロシアの数学エリートとしての教育を受け、人種的にも同じユダヤ人であったことだ
戦時下やスターリン独裁時代における数学教育の現場の様子が生々しく描かれており、またその後の冷戦時代を通じてのユダヤ人排斥の実態も、詳しく語られている
全く知らないことばかりだった
数学専門学校の成立や数学オリンピックの様子などの歴史的な興味も尽きないし、その環境下で立ち回った著名な数学者たちの魅力や欠点も率直に記述されている
しかし、やはりペレルマンの幼少期以来一貫した天才ぶりと、反対に次第に心を閉ざしていく過程が、本書の中核なのは間違いない
もちろんペレルマンの心境については著者の類推でしかないとはいえ、僕の当てにならない直感でもかなり的を射てると思った
ただ、で来るだけ客観性を保とうとしているが、時々ペレルマンへの愛憎が差し挟まれる
例えば、数学者を3つのタイプに分類する
第一は予想を立てる者 誰も考えたことがない地平を切り開く
第二はその予想を証明して定理にして道しるべを与える者
第三は緻密で忍耐強くこだわり抜き、最終的な証明に達する者
彼女はペレルマンは第三のタイプだという
第一がもちろんポアンカレその人、第二はペレルマンの証明において重要なツールであるリッチ・フローを発見したハミルトンのような人
また、ペレルマンが世捨て人になった心情に対しても、極めて批判的に分析している
言ってみれば純粋培養のアダルトチルドレンという見解だ
とはいえ本書は、世紀の業績を上げた数学者に現時点でもっとも肉薄している
数学についての直接的な記述はないので、ちょっとでもペレルマンに興味を持つ人なら十分楽しめるはず
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「ポアンカレ予想」という20世紀中には解決しなかった数学上の難問を解いたが、賞金として用意されていた100万ドルの受け取りを拒否し、数学界からも世間からも身をくらましたロシアの数学者ペレルマンの評伝である。本人が取材を拒否しているため、周辺の恩師、友人たち等の関係者の証言でこの不可解な天才を描いている。旧ソ連では、イデオロギーの束縛からうまく逃れた数学者の王国が築かれていたこと、しかし、いくら優秀な数学能力の持ち主でもユダヤ人には、大学入学、就職のチャンスがほとんど無い等の背景と共にペレルマンの生い立ちが描かれている。ユダヤ人として生まれたペレルマンは、数学クラブ、高校、大学、大学院で優れた教師に巡り会うこにより、才能を開花させた。彼らの庇護により数学オリンピックで金メダルを獲得し、その実績によりユダヤ人には難関のレニングラード大学入学を果たす等の数学王国のエリートの面目躍如たる青年時代のエピソードが興味深い。アメリカ留学を経て、ポアンカレ予想の解答は、突然インターネット上に現れた。それが正しいと認められるまでの数年間に起きた数々のドタバタが、ペレルマンを傷つけたようだが、本人のコメントが無いので詳細は不明である。純粋培養のエリートの独り相撲というのが正直な感想である。ペレルマンには、感情移入しようが無いが、ロシア数学界の才能を見出し、それを育てる数学クラブという独特のシステムが興味深かった。
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ポアンカレ予想の解法自体については、ほとんど具体的に書かれておらず欲求不満になる。でも全体的にはロシア数学界や数学の研究者の生態を垣間見れて読み応えがあった。
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本書はポアンカレ予想を証明したロシアの数学者ペレルマンの評伝である。彼は私より2年後に生まれている。ほぼ同じ世代と言ってよい。しかしながら、旧ソ連の教育制度は、いやはや驚きの連続であった。(たぶん)良い方の驚きは、若き数学者を集めて育てるという仕組みだ。数学オリンピックで金メダルを取るということがいかに重要なことであるかが分かる。画一的な教育(こちらが悪い驚き)から抜け出すには、数学や物理学に秀でていることを認められなければならない。さらには、ユダヤ人であるということに対する仕打ち。少し前にロシア人物理学者ランダウの本を読んで、ユダヤ人に対する態度は見えていたとはいえ、そこから時代はかなり下っている。確かに、モスクワオリンピックを西側諸国がボイコットしたということは私にとっては周知の事実だ。そんな時代であったとしても、ユダヤ人であるがために優秀であるにもかかわらず大学に進学できないなど、話を読むと、憤りを感じると同時にその歴史をもっと深く知りたいとも思う。さて、これは本書前半の話。それよりも、ペレルマンがいかにしてポアンカレ予想に取組み、それを証明し、そして世の中に背を向けるようになっていくのか、本当はそちらの方が見せ場ではある。最終的には人嫌いになっていくのかもしれないが、その過程にはたくさんの人に愛され、守られ、導かれてきたのであろうということが容易に推測される。抜群におもしろく、一気に読み通した。サイモン・シンと同じく翻訳が良いという点も大きいと思う。著者および翻訳者が女性であるということはあとがきではじめて知った。そんなことはどうでもよいのだけれど、本書を読んでいる最中はずっと男性の語りとして受け取っていたので。また、アメリカ版と日本版の違いについては、いったいアメリカ社会には未だにロシアに対するあるいは共産主義に対する、何らかの強い思いがあるのかとかんぐりたくなってしまった。
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数学に懸けた男たちの話ですね。
世界的に有名な「リーマン予想」を解いた数学者のお話です。
彼のマイペースな人柄を、周りの人間からのインタビューによって伺い知ることが出来ます。
ソ連の背景的な事情も少し描かれているので、そういう楽しみ方も出来るかもしれません。
何か大きな事を成し遂げるには時間を懸けることが必要なんだということがよくわかる本です。
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ミレニアム問題のひとつ、ポアンカレ予想を解いたペレルマン。しかし、彼は賞金100万ドルの受け取りを拒否し、数学界の表舞台から姿を消す────。
この本は、ペレルマンがいかにポアンカレ予想を解いたか、というテクニカルな部分じゃなく、なぜ賞金を拒否し雲隠れしたのか、そちらに焦点をあてています。序盤は、当時のソビエトが学問の世界で(に限らないかもしれないけど)いかにユダヤ人を差別していたかについての記述が多く、その背景をもとに中盤からペレルマンがどういう人物だったかを追っていく構成です。なぜ受賞を拒否したのかについては推測の域ですがおおよそここに書かれている内容が事実のように思われます。ただ、、「完全なる証明」ってタイトルの割りに、証明についてはほとんど触れてないのがちょっと残念です。たぶん難しすぎて解らないんだろうけど。。
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数学の難問であった「ポアンカレ予想」を証明した数学者ペレルマンを書いたノンフィクション作品です。ポアンカレ予想の証明後、何故ペレルマンが賞金の百万ドルを断り、数学から離れていったのか。答えそのものが書かれているわけではありませんが、ペレルマンという人物の「物語」を著者の純粋な視点で知ることができ、読後にペレルマンという人物が非常に心に残りました。
著者自身もペレルマンと同じ旧ソ連で教育を受けたからなのか、ペレルマンの学生時代のエピソードはとても生々しく、それでいて近すぎないバランスで書かれており、面白かったです。
本書の大半はペレルマン本人の半生を、彼に関連した人物とのインタビューなどから書かれており、ポアンカレ予想の証明自体は数ページ程度の簡単なものしかありません。なので、ポアンカレ予想を詳しく知りたい人は他の本も読むことをオススメします。
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数学者、ソ連式数学教育について新しく知ったことがたくさんあった。ペレルマン本人の魅力もすばらしいが、周囲の人々の愛がまたうつくしい。ダークレディことフランクリン・ロザリンドのことを少し思い出した。
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「ポアンカレ予想」の証明を成し遂げたロシアの数学者の伝記、あるいは、評伝。同時に、共産主義時代のソ連社会(主として数学界についてだけれども)についての優れた記録になっている。
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ペレルマン氏がどのような環境で育ったのか良く分かった。ソビエト時代の数学界のことも良く分かった。
2012/12/15図書館から借用;12/17朝の通勤電車から読み始めて,12/20の朝の通勤電車で読了
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世の中には想像を絶するほどに数字や図形が大好きな人種がいる、一般的には数学者と呼ばれているらしい。ちなみに数学者は、友人が64才になったとき「アイツ2の6乗だなw」と盛り上がるそうだ。
そんな数学者たちが束になっても解けなかった超難問のひとつ、「ポアンカレ予想」を解いてしまったスーパー数学者が、本作の主人公グレゴリー・ペレルマンである。このポアンカレ予想には多額の賞金がかかっていたのだが、問題を解いたペレルマンはなぜか受け取りを拒否、しかも忽然と人前から姿を消してしまったのだ。
実はこのレビューにポアンカレ予想について簡単に記そうと思ったが、ちっとも理解できないので早々とあきらめる事にした。残念ながらポアンカレ予想については理解が及ばなかったが、ペレルマンが少年時代を過ごしたレニングラード市内の、70年代から80年代にかけての様子は大変に興味深いものがあった。
均一的な労働者育成を実践していたソビエトだが、実は天才少年少女だけを集めた秘密の数学クラブがあったこと。そして、数学クラブの成績優秀者にユダヤ人が多かったこと、そんな状況をソビエト連邦政府は好ましく思っていなかったことなどが克明に描かれている。ペレルマン自身もユダヤ人であるため、その逆境をバネに猛勉強を重ねたのかと思いきや、文章で読む限りではマイペースで飄々と生きてきたという印象が強い。
本書では、なぜペレルマンが賞金の受け取りを拒否したのか、本人と親交のあった人々に綿密な取材を行なっている。しかし彼自身が世間との関わりを拒絶しているため、本当の理由は誰にもわかっておらず、核心の部分は闇に閉ざされたままである。
天才数学者の心の内を照らすのは、数学の超難問を解くのと同じくらい難しいらしい。
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1月11日 池袋図書館ちゃんぷるでお借りしました。
数学者には変わり者が多いのが常。
その中の一人の人生を綴った物語でした。
ある見方をすればとても素敵な物語ですが、普通の人から見ると理解出来ないなぁと思いました。
Toshi