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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
馬氏の歴史の見方には共感するところが多いのですが、本文中の「河井継之助は思想を美意識に転化してしまった」という表現に感じ入りました。同郷の山本五十六もまったく同じだったのだと思います。
読んだ本のタイトルも覚えていない
2015/11/01 00:23
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投稿者:いろまなん - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎が好きなので、見ていたところ、この評論みたいなのがあったので買ってあっという間に読んでしまった。しかしながら、タイトルも覚えていない状況で、この登録を見て知ってしまった。大阪と江戸文化の違いが面白い。また司馬の実家が高島屋の裏手の新川にあったというのも初めて知った。
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なぜ南北朝時代の小説を書かないのか、どうやって小説を書き始めたのか、自身の系図的ルーツについて、自作の中でどれが好き、どうやって歴史上の人物の人となりをつかんでいくのか、というようなことについて。日本人観についても語っているが、司馬さんが日本史とどう向き合っているかというテーマの方が色濃い。メイキングオブ司馬作品という感じで、ある程度読んだことのある、ファン向け。
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歴史小説家としての司馬遼太郎が、歴史に登場する人物がどのような考え方を持って行動したのかを手掘り感覚で発掘し、対面しているかのように語っている。そこには「日本人とはいったい何者か」とうテーマが通底しているようだ。印象に残った話は、次のとおり。
(1)大坂は町人の町。お上を恐れない。
元禄時代の大坂は、70万の人口のうち武士の数は東西の町奉行所の与力・同心をあわせて200人ぐらい(「ブラタモリ」では人口の2%と紹介されていた。江戸は100万の人口のうち、半数が武士)。僅かな数だから、大坂の町人は武士が持つ封建的な節度や美意識に影響されずにきたのだ。上方が持つ反権力の精神は、このような封建体制の経験が強くなかったという歴史的特質に起因している。
(2)信長の凄さは自分の成功体験を見習わなかった点にある。
信長は、桶狭間で今川義元に勝ったのは奇蹟だったということを分かっていた。これが信長の偉さだ。普通の人間だったら、オレはやったぞ、と生涯の語り草にして、「俺を見習え!」ということになる。しかし信長は、最後まで自分自身の成功を見習わなかった。凡人は成功体験におぼれて失敗してしまうことも少なくない。「自分自身の成功を見習わないこと」が重要だとは、自身ではなかなか気が付きにくいものだ。
(3)天皇の権力と内乱。
日本の歴史の中で、神聖者であるべき天皇が地上の権力を握ろうとしたときは、必ず乱がおこっている。後醍醐天皇、後鳥羽上皇しかりである。にもかかわらず、大日本帝国憲法が、日本的神聖者である天皇に統帥権を与えたのである。柳原二位局(大正天皇の生母)は、明治天皇が白馬に乗り大元帥の服を着て諸兵に閲している雄姿を見て、「ああ皇室もこれでおしまいになるかもしれない」と言ったという。優れた歴史感覚である。やがで、軍閥の跋扈に結びつき、太平洋戦争の敗戦によって天皇家はもとの象徴にもどることになったことは言うまでもない。
(4)日本人は「無思想」という思想を持つ。
明治の初年に廃仏殿釈があった。奈良の興福寺は権威をもった存在なのに、一片のお布令で、何の抵抗らしい抵抗もなしに、春日神社の神主になったりする。
日本人には「無思想」という思想が底の底にあるのだ。それはおそらく思想というより「美意識」だ。それは「神道」から来ている。神道は教義も教典も教祖なく、厳密な意味で宗教という概念にはあてはまらない。つまり、宗教というより、たたずまいの「美意識」とでもいうべきものだ。要するに伊勢神宮のように、玉砂利をきれいに敷きつめ、あたりの景色を清々しくしておく。清らかなことだけが、神道の教理だ。
神道は美しい形だけがあり、中身はないから、外来思想をなんでも受け入れ、変化をためらわないのだ。
(5)日本人の新しい社会(組織)を作る能力の高さ。
日本人は大化の改新以来、幾度となく社会を壊したり作り直したりしてきたが、そのなかで絶対的な、大岩盤のような貴族階級を作らずにきている。階級がつねに微妙に流動している。たとえばこの歴史のなかで、徳川三百年が最も長い政権だが、それ以前には、この諸大名も土民だ���た人たちだ。
このような能力は、民族のどういう性格から生まれるのかというと、「無思想」と関係があるようだ。ひとつの体制ができると、マスのエネルギーがそこに殺到する。新しい時代に参加することが正義だと考える。これは、嫌悪の対象でもあるが、日本人の貴重な能力とでもいうべきものかも知れない。
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タイトルに惹かれ購入。「手掘り」とは史実の根底に流れる思想に左右されず、歴史をフラットにみる目。であればこそ、著者の歴史小説は面白いのだと再確認。「竜馬がゆく」「義経」をわくわくしながら読んだが、改めて読み直すと新たな発見があるかもしれない。残念ながら聞き手の評論家の問い掛けは、策士策に溺れると言うか舞い上がり過ぎなリードとなっていて辟易。そんな問い掛けに判りやすく答える司馬氏は流石だった。