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2012/5/19 Amazonより届く。
2012/10/4~10/10
独特の歴史観の歴史小説を排出する加藤廣氏の、本業とも言える金融と歴史を結びつけた内容。黄金を縦糸として日本史を眺めている。人並以上に歴史ものを読んできたつもりだが、知らなかったことも多数。ちょっと散漫な部分もあったが楽しめた。でも、一番意外だったのは、加藤さんの軽い文体。こんな文章も書く人だったんだ。
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現在の日本の貨幣制度は金等に基づく制度ではありませんが、歴史の大部分では金や銀に基づく貨幣制度であったと認識しています。
戦国時代において覇権を取った人たちは例外なく日本の金や銀鉱山を掌握していますが、この本の著者である加藤氏によれば、金の使い方が秀吉と徳川幕府においては異なっていたようで、それが最終的には倒幕の原因にまで繋がっていたようです。
加藤氏の歴史小説は、金融業界に勤務されていたこともあり、所々に経済的な視点から時代を捉えていることが特徴的です。この本は彼が書いた最初とも思える「金」をベースとした日本通史の解説本です。今までには無いユニークな本として大変楽しく読むことができました、続編を期待します。
以下は気になったポイントです。
・日本では、コガネ=金、シロガネ=銀、アカガネ=銅、クロガネ=鉄、アオガネ=鉛として、金は最高位に位置した(p39)
・最澄と空海は同じ遣唐使のグループであったが、現地語をマスターしていた空海はあっという間に密教思想を修得した(p48)
・源氏は4人の天皇(清和、宇多、村山、花山:56/59/62/65)、平氏は50代桓武天皇から発した2天皇、4皇子に源流がある「もののふ」は近衛兵、「さぶらい」は貴族等の身辺警護、「つわもの」が派遣侍(p53)
・藤原清衡は 11-12世紀にかけてその拠点を平泉に移し、東北周辺で採取される金のうえに築き上げた「奥州藤原政権」を確立し、「京・朝廷・平家」「関東・源氏」に拮抗する第三勢力になった(p57)
・義経は、一ノ谷や壇ノ浦の戦いで「もののふ」の戦いにあるまじき方法で勝った(p67)
・頼朝は義経を匿った奥州藤原氏を攻めた、その時の引率兵力は28.4万人といわれる、これは行く先々で金銀を入手できる魅力もあったはず(p70)
・信長にとってのプラス要因、1)特産物の桑で養う蚕でつくる絹織物は女性労働なので男は通年兵隊可能、2)根性の無い兵士を生むので飛び道具は卑怯という偏見は生まなかった、3)主力の絹織物を売りさばくための上洛思想、4)楽市楽座の奨励、5)金精錬の技術入手(p101)
・金屏風は闇の中に淡く浮かび上がる幽玄の空間を演出する実用品、金地の背景は光の強弱により微妙に変化する(p107)
・秀吉は後陽成天皇の末弟・胡佐丸君(当時9歳)を養子にもらう約束をしていた(p109)
・徳川家康が幕府を開いて5代綱吉(1695)の95年間に江戸幕府が発行した慶長大判小判は、1472万両=1兆円、これが出回ったので江戸が大都市になった(p115)
・田沼意次のだした「南鐐二朱銀、8枚=1両」の発行により、日本は事実上金本位制を捨てたことになる(p136)
・江戸時代の制限的な対外政策を「鎖国」という言葉で呼ぶのは、外国人の意見を訳した翻訳書が最初、江戸幕府側はそのようなコトバを使っていない(p148)
・太平洋戦争のときもアメリカが自由貿易といって石油と鉄の輸出を続けてくれていれば、日本はアメリカと戦争をしないですんだ(p153)
・1871年の��貨条例では、1両=4分、2分(1.5gの金)=1円とした、貿易決済には1円の貿易銀を発行したので、金銀複合本位制といわれる(p164)
・当時の先進国は自分のところで不要になった狭軌の列車を売り込んだので今に至る、現在も新幹線と丸ノ内線のみが標準軌である(p170)
・第一次世界大戦において、イギリスはフランス、ロシアと連合国、ドイツはオーストリア、トルコを同盟国とした(p175)
・226事件の首謀者ら17人は軍事裁判で死刑判決を受けたが、国民からは多くの助命嘆願がきた(p188)
・戦争直前(1937-1941.2)まで、日本はアメリカに金を608トン送って、軍事物質を買い漁っていた(p192)
・日本が経済発展が遅れた理由は、1)アメリカ無差別爆撃で工場破壊、2)ソ連の影響が少なく共産主義からの思想解放が遅れた(p200)
・朝鮮戦争の特需により、日本には2、3年程度で871トン分の金に相当する効果があった(p202)
・1950年の朝鮮戦争では、マッカーサー率いるアメリカの大型爆撃機は、ソ連製(旧ドイツ空軍の設計)のミグに撃ち落された(p204)
・アメリカの保有する2万トンの金は、1970年には1万トンを割り込んで、既発ドルの定めた金の兌換量の10ビリオンダラー(8887トン)に至ってギブアップした(p205)
・2000-2010までの通貨発行量とGDPの増加を比較すると、アメリカのみ突出している、これはいつかアメリカドルが紙切れになる可能性を示唆している(p218)
2012年5月20日作成
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黄金=ゴールドを軸に日本史を描いた(といってもざっくりとだが)新書。
こういう視点から歴史を語ると、なるほど面白い。
国家がゴールドを保有するという重要性を認識できた。
しかし、遅咲きの作家デビューである作者だが、まだまだ執筆欲は旺盛のようだ。
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日本史は義務教育以来ですが、こんな視点もあるなら興味が持てそう。
優秀なリーダーはキンに目を向けているんですね。
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金(キン)からみた日本史。遣唐使、源氏と平家、信長・秀吉・家康、開国派と攘夷派、大戦、アメリカ。
歴史のみかた、金というフィルターと、著者のフィルターと。
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黄金=キンが日本史の根幹に関わっている、というのが趣旨だと思うが、書き方が掻い摘まんでいるので大雑把な日本史の流れの中でキンにまつわるエピソード紹介に止まり、つながりや必然性に欠け、説得力がない。
しかし、江戸幕末から二次大戦まではキンの重要性や原因・結果が明確で面白い。ここだけは読み甲斐があって、あとは要らない。半分過ぎから8割過ぎまでで、全体の3-4割ぐらいは有意義。
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文字通り、金に焦点を当てた日本史。
これまでになかった視点だったのでとても新鮮。
日本は金採出大国だったのは有名だけれど、実際に古代から金が多く取れ、かつ海外に多く流出して言ったことが改めてよくわかった。