紙の本
賞には早い
2015/12/17 06:43
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
閉塞感のある田舎を舞台に、僻地医療を綴った5編の短編集。料理しやすいテーマだから、直木賞の候補になったからと言って安易な評価はすべきでない。「ゆれる」の三島由紀夫生も同じように受け止めている。「満月の代弁者」「ディア・ドクター」は悪くないが、あと一歩か二歩。安っぽいのが難点だから。
紙の本
月明かりに浮かぶ心の影
2016/11/23 10:14
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画ディアドクターの話とは違う短編小説集。
ところどころ偽医者役の鶴瓶さんや看護師役の余貴美子さんを思い浮かべるシーンがあって映画を思い出した。
西川さんの小説も映画も、人の奥に隠れる心をあぶり出し、
解釈は読者・観るものにゆだねるような作品が多い。
「1983年のほたる」
塾通いの中学生がバスの運転手に声をかけられる。
村から出て町の女子校を目指す主人公の揺れ動く心に響く声。
「あんたをきちんと送るのが仕事」だと言いながら、突然の交通事故。
助けを求め壊れた自転車に乗ってガッ ガッ と音を立てながら離れていく運転手の姿と
「もう運転手は戻って来ないだろう」と考える主人公の心。
映画のシーンが浮かぶようないい場面です。
「ノミの愛情」
優秀な外科医を夫にもつ元看護師の主人公。
家庭の主婦として幸せな時間を過ごしている主人公。
しかし、主人公は隣の家のラブラドールにエサを与えて内なる禁を犯す喜びを感じたり、
病院のスタッフを呼んで妻の家庭料理をふるまう夫の二面性に身震いしている。
主人公が自慢の螺旋階段をツヤツヤに磨き、磨き続ける姿に恐怖を感じる。
夫の社会的地位、誇り、人間性は、主人公に守られているに過ぎない。
ラスト主人公が私を取り戻す展開には見事。
「満月の代弁者」もラストがよかった。
これは余貴美子さんの声が浮かびました。
少し軽く、前向きな気持ちになり本を閉じられた。
紙の本
医療系は味付け程度
2016/11/07 19:42
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投稿者:こけさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
がっつり医療系かと思っていると、そうでもなかった。しかし、文章は揺るぎなく美しいものだった。過疎地において医療の現場は、ドラマチックなものではなく、ごく普通の日常のことなのだろうなぁ。その頼りなさにどこまでも寄り添うのがこのような小説なんだろうなぁ。
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西川美和は「ゆれる」に続いて2昨目。
映画の脚本作りで取材した内容を基に、映画とは別ストーリーで小説化したもの。
田舎の医療にまつわる話をテーマに5話。
どの話も最先端の医療だったり、外科手術の場面はなく、田舎ののんびりとした雰囲気や最低限の設備の病院を背景に話がすすむ。諦め、受容、時を待つ、といった内容の話
が多く、逆に人間味やリアルさを感じた。
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「田舎」「医師」という要素を含む人間関係を多角的に、深く捉え、「老いる」「死ぬ」「生きる」というテーマを、生々しく、ぞわぞわと描いている。
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西川美和さんの文章はなんとも恐ろしい。
短編集だが共通しているのは、僻地医療、田舎暮らしの現状、高齢者、様々な人々の感情。 少女の視点から描かれている1983年のほたるも引き込まれた。
次回作の映画もとても楽しみ。
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気になってた作家さん。
設定構成が細やか!きっと映像も面白いもの作るんだろうなーと期待が膨らみます
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『ゆれる』に続いて読んだ西川美和作品。
「ディア・ドクター」と「1983年のほたる」がよかった。
それぞれの話の登場人物たちのその後が気になる。
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ポプラ文庫の本を何か読みたくて、ふと目に着いたのがこれ。
初・西川美和作品。
話題となった「ゆれる」も観ていないし、
モントリオール映画祭で好評だったという、
本作から生まれた「ディア・ドクター」も観ていない。
本当に初めての西川ワールド。
結構、好きな世界。
苦いんだけれど、光があって。
光があるようで、苦くて。
「ディア・ドクター」のために医師を取材した結果がこの短編集につながったのだという。
医師の連作短編集。
私は医師度は低いけれど、冒頭の「1983年のホタル」が一番好き。
ティーンエイジャーの入り口の少女の自意識過剰ぶりが
ちゃんと医師の物語へと引き継がれていて、
後からこの短編集の造りに気づいて、さすが映画監督!
と感心しきり。
ちょっと辛い話もあるのだけれど、一気読み。
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映画「ゆれる」を見てから知った作家。
どの作品も、心の深いところにあって複雑で、本人でも気付いていないような感情のひだが描かれている。そのひだは、できれば人には知られたくないような闇といってもいい部分だったりするけれど、悪意を持った、あざとい描き方ではなく、暗い部分も含めて人を愛おしく思いたくなる、そんな素敵な本だった。
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なんだろう、すごく人間らしいというか。
主人公も周りの人も、至極人間。
きれいなところと汚いところのブレンドが、現実世界のブレンド具合とちょうどおんなじくらいで、エンターテイメイントしている感じ。
すごく好き。
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著者が僻地の医療を題材にした映画作りのため脚本の素材として取材をしたものを小説にしたもの。映画の時間軸で語りきれなかったことを、この本で蘇らせたとのこと。
5つの短編小説のどれもが、読み進めていくと何が起きるのか先を読むのが怖くなった。怖いもの見たさのような興味で読み終えた。人間の素のようなものを感じた。
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ポプラ文庫の新聞広告を見て、何だか良さげな雰囲気だったので買ってみた。
作者が映画監督であることも、その取材の過程で集めた話が元であることも後で知った。
僻地医療を題材にしたとあるけれど、医療の描かれ方には濃淡あり、むしろそれに纏わる人のあり様を色んなテイストで描く。
澱んだ田舎の日常や老人たちの臭いが立ち上ってくる話があれば、専業主婦となった元看護師の日常の歪みを描いたり、医師の父を軸に夫々の道を歩いた兄弟の話になったり、変幻自在、ある種、捉えどころのない短編集。
読み終わってみたら、巻頭の、村からバスで町の塾に通う小学生のお話が、医療の色は最も薄いけど、一番物語物語していて良かったかなと。
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短編集ですべてが医者の話です。医者・病院ものにありがちな感動エピソードは無いです。人物描写や設定は上手なんですが、読んでていまいち登場人物たちの人間関係がつかめない部分が多かった気がします。あんまり集中して読んでなかったからかもしれんけど。
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映画「ディア・ドクター」を観てから読みました。映画に出てきた登場人物のサイドストーリーなので、より映画の背景が理解できます。映画とセットで。