紙の本
天才劇作家モリエール
2004/04/07 21:15
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投稿者:明けの明星 - この投稿者のレビュー一覧を見る
優れた喜劇は、必ず悲劇的なものを含むと思う。その逆は言えない。我々はあまりに救いのない悲劇を知りすぎている
「道化」というものを考えてみよう。これは大まかに言って、二種類に分けることができそうだ。まず自覚的な道化。これは笑いをとろうとしてわざと滑稽なことを言ったりしたりする人。ここには悲劇性はほとんどないと思われる。職業としての「大道芸人」とか「道化師」はこちらに入る。悲劇性を持つのは、無自覚な道化だ。これは本人は真剣だが、傍から見ると滑稽なことをやってしまう。本人が一所懸命なので、よけいに笑いを誘うのだ。『人間ぎらい』の主人公アルセストは後者に含まれる。
喜劇は道化がいなくても成立する。状況設定的な、ストーリー的なおかしみというのがある。しかしこの作品はアルセストという無自覚な道化が巻き起こす喜劇だ。我々がこの劇を見たり読んだりして笑うとすればアルセストの行為や言葉を笑うのだ。我々は笑ってもやはりアルセストの悲劇性というものを感じざるを得ないだろう。
しかしこれは悲しい物語ではない。それは最後のセリフに表れている。アルセストは「人里はなれたところでひっそり暮らす」と捨て台詞をはいて、世間一般を去ってしまう。ここで皆が勝手にしろと放っておいたら、悲しい物語になっただろうが、友人フィラントは「何としてでもその計画をぶち壊そうじゃありませんか」と言う。これはアルセストを思いやってというのもあるだろうが、やはり彼をからかってやろうという気持ちが強い。アルセストの道化性をもっと愉しもうという意味だ。それほど意地の悪い気持ちじゃない。アルセストはこのセリフによって深刻な人物になることなく、最後まで道化として機能している。
ちょっとセリフが長いが、内藤氏の訳も上手なので面白い。モリエールの哀愁を含んだ傑作喜劇を一度ご覧あれ。
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アルセストという名前だけでも知っておきたい。
2021/09/17 21:37
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投稿者:さんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
モリエールの性格四大喜劇と言えば、人間ぎらいのほか、タルチュフ、守銭奴、ドン・ジュアンであるが、中でも本作はモリエールのオリジナリティーが遺憾なく発揮され、頭抜けた存在と言えよう。主人公のアルセストは、人に誠実に接しようとする真面目さから、阿諛追従を恥じない社交界の人々を嫌悪する。彼の友人フィラントが理路整然と説く「処世術」とアルセストの狷介孤高たる「正論」は、どちらも一理あって、甲乙つけがたいものがある。
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はじめての戯曲
2021/05/24 18:38
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投稿者:ミチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戯曲にはあまりなれていないときに読みました。少し難しいですが、おもしろかったです。シェイクスピアが読める方におすすめ
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2007年08月14日
(原題Le Misanthrope)
高校生の時に、そのタイトルと世界史の資料集に載っていたその作者名に惹かれてBOOKOFFで買った、と思われる。一度読んだはずなのに、全く内容を覚えてなかったので、この機会に読んでみた。人間はどこまで何を言っていいのかとか、どういった行動を取れば「大人」と見なされるのかとか、自分を持つとかどういうことなのかとか、自己と他者の在り方や関係を考えさせられます。あとがきに記された訳者内藤濯さんのコメントも興味深いものでした。いつかこの戯曲を舞台で観てみたいです。
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こういうやついたら絶対うざいよな笑 言ってること矛盾しすぎだよ、そこが面白いとこなんだけど。馬鹿馬鹿しくて面白い。2008/2/21
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タイトルに引かれて購入したが、正直名前負けしてると思う。いや、俺が悪いな。純文学的な深さを期待して読んだが、期待と反した内容だったのでガッカリした。まぁ裏読みすれば深さはあると思うが、淡泊な内容だったので。
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尊敬というものはなんらかの選択に基づくものだ。だからだれでもかまわず尊敬するのは、なんの尊敬も払わないことだ。人間の価値になんの差別も設けない漠然とした礼節は、平に御免こうむる。
そう哲学者ぶって人生を悲観するなんて世間知らずが少々すぎるよ。
希望こそげにわれらを慰め、一ときはわれらの苦しき胸になごましむ。
人を攻めれば自分も責められるものですけどね。
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純粋で潔癖な理想家アルセスト。正直彼については青臭いなあと思うけど、笑う気にはなれない。
思春期だったらアルセストに感情移入して、一緒に社交界の面々や彼の恋人に憤ってたかもしれない。
彼を青臭いと感じるあたり、私もすっかり大人になってしまったということだろう。
しかしアルセストの親友でいるフィラントは人間が出来てるなあ。私ならごめんだ。
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当事者にとっての悲劇は第三者においては喜劇となる。そういうことだろう。
登場人物に感情をおいて読み進めれば,この物語の結末は悲劇だ。けれども,これをあくまで戯曲として捉え,最後まで傍観の意思を貫けば,読み手はこの本を滑稽な喜劇として捉えることができるのである。
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モリエール随一の傑作とされる性格喜劇。若気の至りの塊のような青年アルセストが人間嫌いになっていく様を、ユーモアとペーソスたっぷりに描いていてほほえましい。理解してくれる友人がいて君は幸せだよ!
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モリエールにはまったきっかけ。タイトルに惹かれて手にとってみれば、まあ面白い。高校生のうちに出会えてよかった。数作品読んだ今もモリエールの中では一番好き。
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「人間ぎらい」というタイトルに惹かれて手に取りました。
さすがに17世紀に書かれた古典戯曲を「面白い」という風には僕は感じない。でも、ものすごく普遍的な内容ゆえに、この作品が風刺していることが色褪せていないことは本当に興味深いなと感じました。
主人公・アルセストは良くも悪くも純粋な青年ですが、良い青年が得をするかというと、今も昔も同じように、そういう側面だけではないようですね。「古き良き時代」という懐古趣味的な言葉もあるけど、昔が良くて今が悪いかというと、決してそんなことはなくて、300年以上前もすでに人間社会は矛盾に満ちていたわけです。
全体的な内容よりも、アルセストの親友・フィラントが語る口上(P96)が本質を突いていて、それがとにかく印象的でした。
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何でも率直に自分の感情をぶちまけなければ気がおさまらない一種の中二病患者アルセストの大変残念な恋の物語である。
しかしこいつときたら良く分からない。
誠実な人間以外は寄るな触るなとうるさい割に、彼が恋焦がれるのは行き遅れの聖女ではなく、甘い言葉と毒舌とをしっかり使い分ける小悪魔ガール(笑)なのである。
人間態度の在り方について色々ご高説を垂れつつ、結局ブスは無視して美人の尻を追いかけまわしているのだ。実にしょぼい。その時点で、己の思想を透徹した者に与えられる潔さの魅力もないのである。セリメーヌにあっさりと振られるのもむべなるかな。エリアントをあっさりかっぱらわれるのもむべなるかな。
自分から人に剣突を食わせておきながら人に裏切られたと嘆くアルセストを見ていると、なんだか己の底を覗き込んでいるようで痛々しい。彼の矛盾は全国津々浦々の中二病患者達の抱えるいかにも残念な矛盾である。
一方で、アルセストの傍若無人さにもめげずに彼の面倒をみるフィラントのイケメンっぷりが光る。おべっかと誠実さを適度に混ぜて使い分け(好かぬ奴には当たり障りなくおべっかで、友人にはあけすけな誠実さで接するのである)、悪口雑言を浴びせられてもさっぱりめげず、最後に美味しいところをしっかり持ってゆくタフなしっかり者である。
コミュニケーション能力とは実に大事なものであるなぁ、全部あけすけはさすがに駄目だよね、とフィラントにいたく感じ入る本。
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一見飄々と書き上げたかの作品に見えるが、喜劇と悲劇という対極に位置する両者を苦も無く流麗に調和させる技術は物語の書き手なら誰もが嫉妬を禁じえない喫驚の一言。かのゲーテが本作を読んでモリエールに会う事を渇望したというのも頷ける至極の戯曲作品。
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モリエールとは一体何者か?モリエール、本名はジャン・バティスト・ポクラン、の家は祖父以来室内業者として直接国王の御用を承ったことから、彼は庶民階級の身であるにも関わらず、上流の子弟と方を並べて、古典の学を修め、哲学の畑にも足を踏み入れました。そしてついに法律学の高い教育を身につけて、弁護士として世で働ける資格までも手に入れました。つまりはここまでの経歴と努力からみても、劇作家とは全くの無縁だったわけです。
しかし最終的に芸の道を歩むことになったルノアールは後に多くの喜劇を書き上げます。この「人間嫌い」もその1つで1666年6月4日に初公園を迎えました。となると今年で300年はゆうに超えている歴史ある喜劇となります。
私は正直モリエールはどっかで聞いたことがあるなという思いで買ってしまったので、中身を見てびっくり!なんと第1幕や第1場という劇調で書かれていました!したがってなかなか主人公であるアルセストに共感しにくかったですねw
どうやらアルセスト役をリュシアン・ギトリイとジャック・コポオという俳優が演じた2つの公演が最高だったようなので、そちらをなんとしても見てみたいと思いました。
しかし私にはどうやらまだ早かった作品であることは間違いなしw