電子書籍
死に魅入られた作家
2020/11/01 14:36
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「歯車」を始めとする、破滅的な作風が冴え渡っています。著者自身の最期を暗示するようなストーリーも心に残ります。
紙の本
芥川の遺作
2020/07/26 10:29
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投稿者:Ottoさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自殺したのは知っていたが、この岩波文庫「歯車」に掲載された「或阿呆の一生」が遺作らしい。昭和2年6月のクレジットがあり、7月24日が命日だから直前まで書いていたことが分かる。
芥川といえば、「鼻」、「戯作三昧」など江戸、明治の風俗を題材にしたおとぎ話の作家初期のイメージから、後期の「歯車」、「玄鶴山房」「或阿呆の一生」は苦悩する姿は芥川の生涯そのままだ。
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末期芥川の小説三篇。『歯車』は良作。
彼は一貫するメロディーを持つ世界を書くことのできる作家だった。末期に描いたそれが、自己愛に満ちた内的世界だったとしても、優れたものは仕方がない。
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ドッペルゲンガーについて書かれている作品、という印象があり
一度読んでみたかった作品。
思ったよりドッペルゲンガーについて触れられていなかった
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芥川龍之介が晩年に描いた小説。とにかく気持ちがめいっており、目に見えるものが全て暗くみえる。ありもしない歯車やレインコートを着た幽霊、炎などが見えつづけ、現実世界が錯乱している。周囲の者も芥川の異変に気づいているシーンがでているが、なんとか彼の自殺をくいとめる手立てはなかったのだろうか。
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恐ろしい四つの敵、疑惑、恐怖、嬌慢、官能的欲望という言葉を並べていた。僕はこういう言葉を見るが早いか、一層反抗的精神の起こるのを感じた。それらの敵と呼ばれるものは少なくとも僕には感受性の理知の異名に他ならなかった。が、伝統的精神もやはり近代的精神のようにやはり僕を不幸にするのはいよいよ僕にはたまらなかった。
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遺稿。短いのですぐ読めます。
芥川の途方もない絶望感の片鱗にふれることが、私にとっては自分自身のまわりのことを顧みられるきっかけになりました。
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芥川、最晩年の作品。
小説の素晴らしさは、本当なら自分が経験できないはずの事を、読むことを通じて追体験できる所にあると思う。それは冒険であったり、恋愛であったりする。
しかし死を追体験できる作品は、ほとんど読んだことがない。なぜだろう。
恋愛を語ろうとする時、冒険を語ろうとする時、人はとても饒舌になることができると思う。なぜならそれは人にはとって心躍るものであるし、きっと他人に伝えたいものだろう。
しかし死はそのような類のものではない。死の淵に立ちながら、何かを他人に伝えようと思える人がどれだけいるか。しかも感情の羅列ではない、冷徹に自分を見つめた文章など、まず読んだことがない。そもそも、理路整然とした文章を書けるような精神状態の人間なら、普通は自殺しないだろう。
だから、芥川は本当に例外だ。狂ってしまった自分を冷徹に見つめることのできる頭を、そしてその状態を表現することのできる文章力を、本当に不幸なことに持ってしまった。発狂して、何も分からないまま死んでいたらどれほど楽だっただろうか。
最後の最後まで、狂っていく自分を見つめ続けようとした作家の断末魔のような作品。
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或阿呆の一生
架空線は不相変鋭い火花を放っていた。彼は人生を見渡しても、何も特に欲しいものはなかった。が、この紫色の火花だけは、――凄まじい空中の火花だけは命と取り換えてもつかまえたかった。
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晩年の芥川流の死生観があらわれている。
「死」と照らし合わせての「生」を描いた小説は多いが、「死」の方向へ突き進む小説って実はあまり例がない。
芥川のみた世界の片鱗を味わえる。
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小説というよりは、むしろ遺書とうのがいいのかもしれない。
まともな小説という形態を取っているのは、一つ目の、
「玄鶴山房」くらいのもので、「歯車」、「或阿呆の一生」
はもはやまともな小説という形式を取っておらず、散文詩による、
遺書みたいなものだと感じる。
静けさを湛えた狂気が始終、漂い、冷静に自らの狂気を見据えている、
視点が空しき物悲しさを訴える。自らを第三者の視点で描いているのは、
それだけ自らを冷静に見据えようとする彼なりの努力なのかもしれない。
しかし、この一冊というのは彼の終着点のようなものであり、
それゆえにこの一冊までの彼の軌跡を知ってこそ、
この一冊の重みが知れるのだろうと思う。
その軌跡を知らなければこの一冊から感慨は得られず、
ただこの暗澹とした世界観にひきつけられるだけだろう。
その意味において、彼の他の著作も読まなければならないと感じた。
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中学生の頃に読んで衝撃を受けた。芥川の傑作だと思う。村上春樹の小説が好きな人にもこの小説の意味はわかるんじゃないかとも思う。
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何を書いているのか、よく分からない。何に恐れて、何に絶望して、何がそうさせているのか結局わからないまま読み終わってしまった。
こんな小説もあるのかと、不思議な感覚で溢れた。
この本は、芥川でない無名の作家が書いても同様に評価されるのだろうか。
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「歯車」の細部の連関ぶりは、瞠目すべきものがある。
すでに我々が芥川の自殺を知っているからではなく、あまりに緊密な細部がひとえに〈死〉の縁へと集まり、〈死〉に張り付く異様な様がひどくパセティックであるがゆえに、テクストを読みながら芥川が死んでしまうことを予感させるのであった。
そうした「歯車」とくらべれば、「或る阿呆の一生」は本人も遺書のようなものとして書いているため、むしろペシミスティックな感じがある。
収録されている順に、「歯車」→「或る阿呆の一生」と読むと、いっそう芥川の死が決定的なものにみえてきて、せつない。
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表題作である『歯車』について。
病んでます。これに尽きる。かと言って、
病的な美しさがあるのかと言えば、そうでもない。
なんと表現したらいいものか、言葉に詰まります。
ただ、なんとなく歪んだ世界が心地良い。
この辺の感覚は、それこそ人を選ぶものでしょう。
ゆっくりと流れる時間と、奇妙な風景。それに惹かれました。
大正浪漫な雰囲気が好きだという方には、おすすめできる作品です。