紙の本
戦後の日本で国語教師として人生をかけた大村はま氏の心に残る珠玉の「ことば」集です!
2020/04/20 10:04
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、戦後の日本における国語教育実践に生涯をかけた大村はま氏の口から発せられた魅力的で、深淵な意味をもったことばを60、選りすぐって収録した珠玉のことば集です。実は、著者である刈谷夏子氏は、かって大村はま氏に教えを請うた生徒でした。毎日の授業で発せられる大村先生のことばに沿って学校時代を過ごしてきた教え子の一人です。後年、そのことばを改めて思い返してみると、そのことばの裏に込められた意味が実に明らかになってきます。「聞く力は知恵の始まり」、「子どもは<身のほど知らずの伸びたい人>です」、「人間の成長がないところには文章の伸びはない」など、大村はま氏の人を育てることに人生をかけた強い想いと力が伝わってきます。同書の構成は、「大村はまという人」、「子ども」、「ことば―話すこと聞くこと」、「ことば―読むこと書くこと」、「学ぶということ」、「教えるということ」、「教師という職業人」、「優劣のかなたに」となっています。読者に感動を与える一冊です!
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国語教師、大村はま。
ことばを大切にし、 自分のことも厳しく律した教師。
その姿勢は真似できるものではない。
大村はまの単元学習とは何だったのか。
驚くべきことは、二度と授業で同じ教材、内容を扱わなかったことだろう。
教室にいる子どもたちのことを考え、彼らに身につけさせたい能力を考え、 クラスと向き合い、
ことばと向き合い、教材と向き合った。
自分が考え、調べ、作り上げた新しい授業をいつも楽しみに教室に向かったという。
その新鮮さ、わくわく感、学びつづける姿勢が生徒たちにもたらした影響というのもあったのだろう。
その実践、姿勢、真似できるものではない。
しかし、ハッとさせられることは、多い。
“こういうことを言うとき、大村の念頭にあったものの代表が「もっとよく読みなさい」だったようだ。「どうやって読めばいいんですか。「もっとよく読む」なんて読み方はありません」と、怒ったように言っていた。「もっとよく読んでごらん」と言われても、ではどうやったらいいのか、どうすれば「もっとよく読んだ」ことになるのか、ということが具体的には子どもにはわからない。それで、しかたなく、ただ従順に、単純に同じことを繰り返すだけだろう、ということが、ちょっと考えれば想像できるのに、そういう想像力をはたらかせることをしないで、ただ、「もっとよく読んでごらん」と言う。ひどくごもっともなことを命令形で言って、その効果を疑わない、そういう姿勢を、大村は嫌った。専門職、職業人としての誠実さも、誇りも感じられない!と。”
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図書館でふと見つけて読みました。大村はまさんの本はたくさんあって、どこから手を出していいか困っていました。とりあえず、文庫や新書にだけしぼって読んでいたのですが、今回のこの本を通して、たくさんの心に響くことばを見つけることができました。中途半端に引用するときっと真意が伝わらないのでやめておきますが、この本のタイトルどおり、「優劣のかなたに」ということばが、一生涯かけてはま先生がうったえかけてきたことなのだろうと思います。この本を読み終えるころ、新聞記事でフィンランドの教育について読む機会がありました。よく似ているなあと思いました。もちろん、フィンランドでは教育にかけるお金が、日本と比べ物にならないほど多いようです。人口がそう多くなく、税金が相当高いためにできることのようです。でも、子どもたちの学ぶ意欲が低下してきている様子を見ると、日本も何とかしなければならないのだろうと思います。自分にも何ができるかをもっと真剣に考える必要があります。他人事ではなく。