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学問の限界を探り、経済学と経済政策の違いを明らかにしながら、各々できることとできないことが冷静に議論されてる良書。
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理論と現実の間をさまよう経済学。
そんな経済学の不完全性を受け入れ、その狭間を地道に埋めようとしてきた経済学者の格闘の書。
経済学が何を考えてきたのか。
経済学がどのようなものなのか。
完全な社会科学などないし、目指すべきでもない。
自分自身がその間を行ったり来たりして自分の頭で考えることでしか前に進むことができない。
そう感じさせる内容でした。
新書とは思えない。
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経済学を学び直すor経済学をこれから学ぶ人に最適な一冊。猪木氏すごい。
2013年を生きる私たちを取り巻く経済施策(アベノミクスやユーロ危機対応しかり)をはっきり意識させながら、その施策の妥当性は経済学の基礎的論拠としてはどこに求められるのか、歴史的実証と、アダムスミスを始めトクヴィルや果てはアリストテレスの考察を引いて解説してくれる。
その網羅性に、感服。
個人的には貧困問題にもうちょっとページを割いて欲しかった。他、『不確実性と投資』『なぜ所得格差が問題か』『経済学的厚生と幸福』の章が面白かった。
新書だけど内容を理解するにはちゃんと追加の勉強が必要。
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さまざまな「価値」がぶつかり合う、現代の自由社会。その結果、様々の難題が私たちの前に立ちはだかっています。
人間にとって正義とは、幸福とは。
著者は、経済学の基本的な論理を解説しながら、問題の本質に迫る。
デモクラシーのもとにおける経済学の可能性と限界を問い直す試みがなされたものである。以下、内容。
序章 制度と政策をめぐる二つの視点
第Ⅰ部 自由と責任
第1章 税と国債 ― ギリシャ危機を通して見る
第2章 中央銀行の責任 ― なぜ「独立性」が重要なのか
第3章 インフレーションの不安 ― 貨幣は正確には操作できない
第Ⅱ部 平等と偶然
第4章 不確実性と投資 ― 「賭ける」ことの意味
第5章 貧困と失業の罠 ― その発見から現在まで
第6章 なぜ所得格差が問題なのか ― 人間の満足度の構造
第7章 知識は公共財か ― 学問の自由と知的独占
第8章 消費の外部性 ― 消費者の持つべき倫理を考える
第Ⅲ部 中庸と幸福
第9章 中間組織の役割 ― 個人でもなく国家でもなく
第10章 分配の正義と交換の正義 ― 体制をいかにデザインするか
第11章 経済学的厚生と幸福 ― GDPを補完するもの
終章 経済学に何ができるか
*人の世をはかる尺度は百家争鳴ですが、自分が納得できる一つの思考パターン「型」を持っていれば、人間、この世を上手に生きれるのではと思います(笑)。
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連載のまとめ直しという事もあって、話題は多岐にわたり、ひととおりの感想は持てないが、2つの矛盾する価値を求めてしまう人間の二重性を軸に、はっとさせられる含蓄とアフォリズムにあふれている。
「経済学者はダメだ」とか、「ケインズは古い」、「GDPよりも幸福度を」などと切り捨てるのではなく、もう一度古典派の巨人たちの考察に耳を傾けると、彼らがいかに人間を見つめていたかという事がわかってくる。特に、フランク・ナイトはかなり重要な位置をしめているのにも関わらず、彼の著作物が現在の日本で殆ど入手できない(図書館でも置いてあるところは一部)というのがとても残念だ。
現在の一般均衡理論や金融理論、メカニズムデザイン論などは、曖昧になるところは極力切り捨てて、最低限分かるところに集中している感じがするが、その分産業競争論や、個人の行動論(これは行動経済学として再びブームにはなったが)が、抜け落ちがちになっている感じがする。
経済は極めて人間的な現象であり、「人間とは◯◯である」と一言で表現できないのと同様、一つの視点で全体を捉えられると思ったら大きな錯覚だろう。「より本質的」ということはあり得ても、究極の本質は存在せず、常に揺れ動いている。我々は常に「健全な懐疑主義」に立たなければならない。
「野心と虚栄心に突き動かされる「弱い人」が他人から賞賛されたい、他人から注目されたい、と考えてきたからこそ、そのエネルギーによって経済社会は多くの冨を創造することができた」
「愚かさは、憲法の「威厳を持った部分」への尊敬の念を生み出すだけでなく、移り気や激情から社会を守る常識的な力になると彼(ウォルター・バジョット)は考えていた」
「金融政策が常に成長に対して強い威力を発揮すると信じ込んでいる人は、成長政策が行き詰まると、王子を叱れない教師が「王子の学友」を身代わりにムチ打つように、中央銀行の不作為を責めるのである」(p.40)
「かつてハイエクは、「貨幣」を名詞として用いることは難しいが、「貨幣的」という形容詞に関する理解は意外共通するものがあると述べた」(p.59)
「金融政策がマイルド・インフレーションによって生み出した経済活動を維持するためには、インフレ率を加速しなければならない」(p.63)
「不確実だからこそ、人々は行動できる。だが豊かな知識と情報は、逆に人々の行動を抑制する働きを持つ。情報の「高度化」は、不確実な未来に向かって挑戦しようとする者の意欲を弱めたのかもしれない。」(p.116)
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経済の入門書ではないが、入門書を読んだ次くらいに読むとちょうど良い気がする本。
様々な社会問題について、経済学的な視点でそれらを考えるとどうなるかについて簡潔に解説してくれる。
机上の空論を展開するのに終始せず、一つ一つの問題と正面から現実的に、倫理的に向き合っている本書のテーマはまさに「経済学に何ができるか」「何ができないか」についてであり、この本にはこの題名こそがふさわしいと思った。
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現在経済学が解決しなければいくつかの課題と経済学の対処方法等を述べていく。
経済学が想定する仮定の限界を示してくれる。
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筆者なりの概念の整理により、経済学にまつわる現代的な問題が紹介されている。
全くこの分野に知識がなくとも読めなくはないが、前提知識がないとツライ。じっくり腰を据えて読むべき本である。そう言った意味で高度な新書であると言えるだろう。
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経済学に関する書物というよりは、経済哲学と政治哲学と貫く社会科学全般に関する考究といった感じです。なので、今でいうとマイケルサンデルの著書に親しみがある方は読みやすいかもしれません。内容的には流行りの新自由主義は採らず、かといって大きな政府を求めるものではないと言ったところ。つまり、「真理は中庸にあり」と言ったスタンス。
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経済学というより、かなり倫理的な本です。経済社会的な諸問題に対して、経済学だけでは解決しえない限界を明らかにしながらも、なおかつ経済学のもつ本質的な役割を示そうとする試みだと思います。この本を読んで、中庸ってものの重要性と困難さをしみじみ感じました。それと経済学って倫理学の子なんだなあって改めて思いました。
歯切れの悪さこそが素晴らしい良書です。お奨めの本です。
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趣旨としては経済理論と現実をしっかりと区別し、どちらに偏り過ぎてもいけないというところか。また、経済学ですべてを解決することは不可能だということ。経済学は人々が幸福を追求できるための条件を整えるだけで、直接的に幸福にはできないという点は非常に納得。
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2014/4/23読了。Twitterでフォローしてる経済学&金融クラスタの方々に好評だったので読み始めました。タイトルを一見すると経済理論がどのように役立つか解説したものと思いきや、様々な社会問題を考えるにあたって、これまで経済学がどのような前提で議論してきたか、またその前提ゆえにアプローチにどのような限界があるのかを各章ごとで指し示しています。あくまでもモデル学問である経済学の理論を無闇に振り回すのではなく、その用法と効用そして副作用を十分に考える必要があると指し示してくれる良書でした。
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経済学の役割について個々のトピックをあげて、経済学の歴史的アプローチの背景を解説している。概論的なトピックではあるが、著者のこれまでの著作と同じく、深い理解のもと経済史的な観点からよくまとまっており、経済学の復習には良いと考える。
トピック:税と国債(国家のファイナンス)、中央銀行の役割、インフレ、不確実性、貧困、所得格差、知識、分配と交換、中間組織、幸福。
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経済学に出来ることそして出来ないことについて書いた本。
やや雑多ですが新書にしてはボリュームがあり読み応えもなかなか。
出来ないことをはっきりさせた上で経済学の担う役割を示している点は、
ものごとを混同して考える人の多い昨今において有意義だと思います。
経済学の扱っている範囲の広さも分かりますしね。
とりわけ価値の問題と実効性の問題が興味深かったです。
経済学の外郭についての本であり中心についての本ではないので、
入門書くらいの知識はあった方が良いかもしれません。
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題名のとおり「経済学という分野に何ができるのか」そのような問いに対して、筆者なりの回答をだしている。かなり抽象度の高い話なため、一読では一体何を言っているのか、よくわからないところが多い。それはすべて読者の責だが、各章同士の連関は強くないので、関心がある章を引っ張って読むのもよし。第9章の「中間組織の役割」では、現代の経済学が個人と国家(政府)という二元的な対立図式で社会制度を考えているところが経済学の見落としであるいう。個人と国家の間には、消費者団体や労働組合、経営者団体などの「結社」が存在し、それが現在の経済システムを構築しているという。このように、個人と国家という図式は、社会制度を考える上で、便宜的に分類しただけであり、そのように単純化することで精緻な理論を組み立てつつ、一方で理論の限界をもっていたのが経済学であるという。
この本を読み、経済学が何をターゲットに研究してきたのか、その貢献度と限界、未来を俯瞰することができるのではないか。ことさら、経済至上主義への批判から経済学への批判へと行きがちな現代において冷静にその是非を考えるには一読の価値があると思う。