サブテキストとしてかなり有用
2023/12/01 15:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビドラマで、ミュージカルで、そしてもちろん小説で何度も経験したユゴーの世界、鹿島氏が当時の政治背景、経済、文化からユゴーの私生活まで解説してくれる、サブテキストとしてかなり有用
投稿元:
レビューを見る
年末に公開される映画にあわせて新装版として出版されたのだろうが、本書は単なる”あらすじ本”ではない。
まえがきにもあるように、本書は『レ・ミゼラブル』を一冊の社会史として読み取る試みである。多数の木版画の助けを借りながら、19世紀前半のフランスの社会・風俗がよくわかる仕掛けとなっている。もちろん、長大な『レ・ミゼラブル』のストーリー自体も(笑)。
映画やミュージカルがどのようにこの古典をアレンジし、作品を作り上げているのか、原著を読む時間も根気もない私のような人間にはちょうど良いガイドブックでもあるといえよう。
投稿元:
レビューを見る
レミゼ好きは必読の一冊。最近公開された映画と、舞台版の違いが「原作のここが元か」とよくわかる。版画中心ということもあって、レ・ミゼラブルの薄暗い世界観が伝わってくる。
投稿元:
レビューを見る
160217読了。
これは、ほんとうにスゴい本。ちゃんと買って読んでよかった。
まえがきで筆者のいう結びがすてきなので抜粋すると
「いずれにしても、これは、正統的な文学研究でもないし、かといって正統的な歴史研究でもない。強いていえば、細部を楽しみながら小説を読むのが好きな者が、フランス文学でも最も細部の豊かな小説である『レ・ミゼラブル』を読んだ報告書、こう考えていただければ幸いである。」
あとになって、この筆者の言葉に妙に納得したのは、”細部が豊か”だったゆえに、この小説は難解だったということ。百六景の中にいつくも、本編とはほとんど関係のない(?)描写と挿絵が出てくる。しかし、本作ではその脱線部分こそに当時の世相を色濃く反映された事柄を読み解くことができる。そこが面白い。
多くの挿絵画家たちの、忠実で美しい、そして細やかな単色の挿絵にも心惹かれた。
そして、難解すぎて読み落としていた『レ・ミゼ』本編の内容で、本作において気が付いたこと、また本作の解説によって生まれた新たな発見が幾つもある。
例えば
・なぜファンチーヌがシングルマザーだったか
・バリケードで死んだガヴロッシュはエポニーヌの弟だった
・コゼットの夫マリユスの父は男爵で、戦中にコゼットを養育(?)していた宿屋の主人テナルディエに助けられていた
・ジャヴェールがバリケードでジャン・ヴァルジャンに逃がされた際、呼び名(人称)を敬称にしていた
などなど…映画やミュージカルで実が付かないところでふと立ち止まれる良い機会だった。
さらに、ミリエル司教には実在のモデルがいたとか、マリユスは青年期のユゴー自身であるとか、マリユスとコゼットの婚姻日はユゴーと愛人のゆかりの日である等、様々なエピソードを余すところなく教えてくれていて、なにしろ、面白い。
原作を読み返したくはなるが、この『百六景』に助けを求めながらということになりそうだ。
投稿元:
レビューを見る
ANAの機内誌に著者が連載しているエッセーでこの本を知った。
レ・ミゼラブルは概要しかしらなかったのだが,挿絵とともに全体が紹介されている。物語の背景のフランスの歴史的事実も分かる。
ちょうど公開されている映画も見たくなった。
2012/12/08図書館から借用;即日読み始め;12/11の夕方読了
投稿元:
レビューを見る
脱線の多い長編原作を読む気力がなく、代わりにこの本を手に取りました。1865年出版の本に載っていた挿絵が180枚もあるので、当時のフランスの様子が視覚的にわかりやすくなっています。また、著者の解説も明快で、話の大筋が理解できるだけでなく、登場人物の心情や物語の社会的背景も知ることができます。ミュージカルは何度も観たことがありましたが、あのエピソードにはこんな意味があったのか!と何度も驚きながら、あっという間に読了。でも、やはりいつかは原作を読みたいですね…!
投稿元:
レビューを見る
村上春樹さんの『1Q84』を読んだ時に、牛河っていう登場人物のことを「なんか『レ・ミゼラブル』のジャベール警部っぽいな…」とそういえば思っていた。『レ・ミゼラブル』の登場人物は、なかなか強い個性を持つ印象を残すのだと思う。
学生の頃に豊島与志雄訳の『レ・ミゼラブル』を読んだ。事前に「パリの下水道についての話へ逸れていったりする」という情報を得ていたので、そこまで来た時に「出た!下水道!」と確か思った気がする。なんだか懐かしい。『レ・ミゼラブル』は起伏に富んだ面白い物語ではあるけれど、いかんせん長い(岩波文庫でそれぞれ600ページぐらいで4分冊)。読み返すのは骨が折れるけれど、この「百六景」があれば、原典を読まなくても、けっこう雰囲気を楽しめると思う。なかなか素晴らしいガイドブック。
けっこう分厚いが、半分が挿絵。そのためページをめくるスピードはわりと早くて勢いがついた。当時の貨幣価値だったり、制度だったり、いろんな知識が入ってくる。その中で思ったのは「レ・ミゼラブル」という題名は、そもそも「悲惨な人々」っていう意味なんだよな… という根本的なところだった。「下水道」っていうのも社会の暗部の隠喩のように考えられなくもないのだなと。
鹿島先生の本読むのそういえば初めてだった。こういうガイドブックはなかなかいいと思う。他の大作でも誰かやってほしい。
投稿元:
レビューを見る
原作の脱線の多さに辟易し、二巻途中で断腸の思いでこちらに乗り換えました。最初からこちらにすれば良かったと思います。同時に、子ども時代に原作に触れていなかった自分が残念でなりません。原作に対する思い入れの強い人にはたまらないでしょうね。
投稿元:
レビューを見る
舞台は何度か見て、その度に感銘を受ける大好きな作品のレ・ミゼラブル!
でも原作にはなかなか手を出せずにいました。そんな折見つけたのがこちら。
数多くの絵で見ても楽しめる一冊になっていて、貪るように読んでしまいました!
ジャンバルジャンって、確かに最強ヒーローみたい。これを読んだことで公開中の映画、これからの舞台、そして原作への挑戦!レミゼへの愛情が一層高まりました( ´ ▽ ` )ノ
投稿元:
レビューを見る
映画を観るために、予習復習用。
あやふやな印象で、なんとなくしか読んでいなかった「レ・ミゼラブル」の時代背景や当時の生活ぶり、人間の心の動きが簡潔にまとまっているので、副読本としても、ダイジェスト版としても最適と思う。
とりあえず次は原作を読む。
投稿元:
レビューを見る
創作資料としてのレビューです。
挿絵が豊富で、本の厚みの割にさっくりと読めます。
絵とストーリーについての解説が本書のメインではありますが、時代背景とその絵の関係(ex:[授乳する絵について]直に子供へ授乳するのは貧しい家のすることで、そのような人からも迫害を受けるジャンヴァルジャン)についても多く書き込まれており、ストーリーを知らない人でも読みやすいです。
無論、なぜこのような挿絵が多く描かれたのかなどについての言及もあり、酷く不安定なフランスの時代、その頃の社会情勢についての解説がそれなりに分かり易く述べられています。また、ユゴー(筆者)の視点も著者なりの解説を加えているので、読みやすいです。
投稿元:
レビューを見る
長大なレ・ミゼラブルの106の場面を抜き出した本。
原作の内容をほとんど知らなかったが、本書で十分話の筋は追える。全ての場面で挿入されている挿絵は、作品の雰囲気を存分に引き立てている。挿絵の発揮する効果は、筆者が本書でもコメントしているように、レ・ミゼラブルの持つ映画作品を先取りするような構成によって生まれているのだろう。
また、作品の背後にある当時のフランスの社会情勢に対する解説は、筆者の豊富な知識を背景にしており、非常に秀逸である。
投稿元:
レビューを見る
「レ・ミゼラブル」の挿絵二百数十葉をストーリー順に並べて、物語と作者の解説がそれを補強するというミルフィーユ状の構成がなされた作品。
「レ・ミゼラブル」はストーリーだけをとれば、典型的なお約束の展開やご都合主義のオンパレードのようにも思えるが、ユゴーが目指したのは当時のレ・ミゼラブル(悲惨な人たち)の典型を時に具体化し、時に抽象化する事によって、単なる物語を超えた普遍的な何かを描き出す事だった。
その意味で当時の時代背景や社会制度などについて詳しく解説されている本書は、現代に生きる私たちが「レ・ミゼラブル」の世界をより深く理解するための助けとなる。
投稿元:
レビューを見る
レミゼにそこまで思い入れがないんで(前後するけど、ユゴーには“魅力的な悪”は書けない、想像出来ないんだろうな…と、この本読んで納得がいった。故に物語に物足りなさが残るんだな、と。なおジャヴェールは敵でも、法の正義、ね?)この本は後回しになってたけど、文庫再刊されたタイミングで読んでみた。
『レ・ミゼラブル』の(訳)注を別冊にしたような本。
19世紀の挿絵も堪能。(鹿島さんの他著『職業別パリ風俗』『馬車が買いたい!』辺りは、名著ながら、ただしレミゼに関しては思うほど読解の為の情報を得られない気がする分)レミゼを読む際のお供に。
ユゴーのコゼットに対する思い入れの減少についての指摘に納得。以前、読んでてコゼットに魅力を感じなくなっていった辺りと一致したので。いや、落ち着いて考えたら、もともと魅力なんてない娘ではあると思うけど(だからこそ薄っぺらのマリユスと釣り合うってのもある)
文庫再刊行時の帯のあおりは「必読超長編古典 “が一冊でわかる”」 でなく 「〜“をより理解するために”」とすべきだったのでは。これだけでは正直物語がわかるわけではないかと…。レミゼは、ユゴーのあのくだくだしいアジテーション紛いの言い回しを堪能してこそ!(ヲイw)
【以後愚痴】本文中から拾える参考文献の邦訳の多くが、現在は絶版なのが残念ではある。ルイ・シュヴァリエ辺りは再刊してもええと思うのにのう…頼むよみすず。
投稿元:
レビューを見る
レミゼの映画が公開になったとき、ちょうど旅行でANAに乗ることになった。私は国内のエアはANA派で、機上の際は必ず機内誌を熟読する。鹿島茂氏はその機内誌で連載されていてなじみのある方だった。
内容はフランスの貴書の話で実は読んでいても内容はほとんどわからないことが多かったけど、なぜか心惹かれて必ず読んでいた。
なので鹿島氏がレミゼの本を出されていると知り(フランス文学学者なのであたりまえだけど)手に取るきっかけとなった。
内容はいわゆるレミゼの本についていた挿絵にフォーカスを当て、レミゼ自体の内容を解説しているものだと思われる。なのでミュージカル自体のレミゼに興味があるものの、原作を読む気がわかない、もしくはレミゼを読んだもののいまいち良さ(内容)がわからなかったという人におすすめかもしれない。
私は何より挿絵自体に心が惹かれた。今ではミュージカルのレミゼのアイコンになっているコゼットの絵がエミール・バヤールのものだと初めて知ることになった(それまであのミュージカルを作ったころにできたものだと思っていたから)
昔々家にあった原作をなぜか何度も何度も読んだ記憶がある。
あのころ理解できなかった、理不尽さに首をかしげながらも(そのそのパンひとつ盗んだだけで何十年も刑務所にいること全く理解できなかった)なぜか心惹かれてよくわからないものの何度も読んでいた。
大人になってこの本を読むことであの時感じていた人生の理不尽さは多分間違っていなかったのではないかと思う。
時代背景や環境が全く違っていても、自分の人生にもおんなじような「ミゼラブル」はところが必ずあって、それからは逃れることが決してできないということを。子供時代のほうが多分私は物事の本質を感じていたのかもしれないな。