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大人の男と女の連作短編小説。
謎めく艶という女性でつながる登場人物たち。
艶の存在が少しずつ色濃くなるにしたがって、面白さが減ってしまったように思う。
が、危ういバランスの男と女の話は、なかなかに楽しい。
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つやと関係を持った(持たされた)人たちの短編集・・・とも言えるかな。
んー、思ったほどおもしろくなかった。
これはきっと映画の方がおもしろかったんじゃないかな。観てないけど。
周りの人の話より、やっぱりつや本人の独白というか、つや自身で男性の遍歴をつづった方が、素直に興味深いと思った。
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阿部寛主演で映画かも決まっている
「つやのよる」
井上荒野らしさが詰まっている作品だった
性や男性に奔放に生きた「艶」という女性が主人公のようで
主人公ではない。
生活の中に「艶」というひとが投じたその影響を受けた人たちの
視点で起こるさまざまな出来事。
穏やかな生活の中の張りつめた感情、緊張感を書かせると井上荒野はいいよね。
ただ結構淡々とした感じでした。映画はどうなんだろうか。
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単行本が出たときから気になっていた作品。この著者の作品は、雑誌に載ったエッセイくらいしか読んだことがなかった。文庫になっているのを知りつつ、なかなか読めなかったのだが、やっと読了した。
ひとりの女について、複数人の語りというスタイルは、有吉佐和子の『悪女について』等にも見られる型ではあるが、主人公「艶」の最後の夫の視点から描かれた最終章とその前の看取った看護師以外は、「艶」と「関わった男」と関わった女の視点となっているところがこの作品の特徴だと思う。看護師にしても、その関わりは職業上でのことで、ワンクッション置いたかたちである。
それぞれの女たちが「艶」との関わりの中で、内なる「艶」的なものを意識的に無意識的に照らし出している。多視点から投影された像が、「艶」を形づくる。求められることを至上とするのか、自らなりふり構わず求めていくのか、そこには「男」は木材のようにごろりと横たわっていて、それに乗るか、斧を振るうか、背を向けるか、それぞれの女の行動がある。
作中、敢えて「語られていない」部分について思いを巡らせられる作品だ。わかっていても触れない、触れられない、もしくはわからない、わかりたくない、そういう部分が実際の男女間にはある。多くの視点から語られることによって、その「語られていない」事柄が浮き彫りになってくる。
最終章で「艶」の夫の視点で描かれ、ラストの少年とのいきさつが、「語られていない」男女間のわからなさを、少年の科白「何言ってんのか意味わかんね」と投げだすさまで表現されていると感じた。
文庫版での解説は、この作品の映画化にあたった監督なのだが、あくまで男性視点である。映画は見てはいないのだが、いわゆる「恋愛物語」として描かれてしまうことによって、作中での男から女への「わからなさ」がそのまま作品への「わからなさ」になってしまっていて、気が遠くなる思いである。
恋愛だけに留まるものではない、人のもつ「渇き」とそのきりのなさ、異性との解りえない「壁」を描いた作品だと思った。「結論」なんてものはないし、希望の「道」もどこにもない。
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死の床についている女「艶」
男に奔放な人生を送った彼女と
過去に関わりがあった男たち。
そのまわりの女たち
淡々とした文章とセピア色の光景が
かえって人間らしさを醸し出す作品
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行間を読むことに慣れてない自分には、はじめは女性がただただ怖い生き物にしか感じない小説だった。
ただ最後まで読むと印象が一変する。涙が出てきさえする、そんな人間味溢れる一冊だ。
こんなに息が詰まる本は初めて読んだ。ただ、また数年後に読んでみたいと思う本だ。
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島の病院で死んでいきつつある「男ぐるい」の女、艶。彼女とかつて関係をもっていた男たち、ではなく、彼らの妻や恋人たちの視点から、死にゆく女の存在が引き起こす、ほんの微かな波紋を描いているのが、この小説の味噌だ。
艶のために自分の人生を放り出し、自分を見ようとしない女で自分の時間のすべてを埋めつくし、今また彼女のかつての男たちにわざわざ連絡をとって波紋を引き起こそうとしている松生の真意は、本人にとってすらよくわからないし、小説の中で分析めいたものも示唆されない。
かつて艶と関係をもった男たちは、このわけのわからない松生の狂おしさからは、もはや地理的にも心理的にも遠い場所にいるはずなのに、さらに安全な場所にいるはずの語り手の女たちは、彼女たちの男たちの身体から発される微かな波紋を、感受してしまう。そのことが、安全な場所の中にある不穏なものの存在を明らかにしてしまうのだ。
まったく井上荒野らしい、穏やかでありながら不穏な小説だ。
で、行定勲監督はこの映画を撮ったのかしら?
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次から次に男を翻弄する女、艶。彼女が死の淵に立たされたとき、夫は艶と関わった男たちにそれを知らせようとする。男たち目線ではなく、男の周りの女たちの目線で物語がすすんでいったのが印象的。艶目線では一言も物語は語られてないのに、艶にすごい存在感を感じたのは筆者の文章力なのかも。夫、松生の章ではどんな情念が語られるのかと思ったけど本人は至って淡々と忙しい日々に流されるように生きていて、はたから見れば波乱万丈な人生も本人たちからすると意外と淡々と日々が流れていってるのかもと思わされた。
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ざらざらと何かが引っかかるような、なんとも言えない読後感を味わうのは初めて。少し前に流行った『イヤミス』とも異なる。
…多分、三十代後半の今だからこそ(うわ、面白い)と思えたのだと思う。
目の前がぐらぐらするような展開は決してないのだけれども、どの章にも不思議な爽快感があった。
個人的には、艶を看取った看護師がすき。
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オムニバス形式ものが好きなので、みんなが直接でなくとも艶につながっているのが面白かった。
ラストだけ松尾(男)の話。もうただの執着というか…。こういう人っているな。映画も見てみたい。
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井上荒野先生の小説が読みたくて、映画化されている小説なので読んだ本。井上先生の著作で初めて読んだ本。共感できるキャラクターや好きなキャラクターがほとんどいなかったので、あまり作品の中に入り込めなかったが、松生艶の描き方がプロの作家じゃないとできないやり方だと思った。井上先生の別の作品も読みたいと思った。
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井上荒野祭り。本人に語らせずに関わった人間たちの口を借りて艶というその人物を描くってこの手法は、「悪女について」かあるいは「横道世之介」か?と思って読み進めたけど、そこは井上荒野だわ。直接的な描写はほとんどせずに、読者に想像をさせつつ艶って女性を描こうと物語は進んでいくし、それぞれ単体で短編として見てもそこそこ成立してる。読み終えても、艶ってどんないい女だったんだろう、悪い女だったんだろう、って思いが残るのは作者の思う壺か。しかし井上荒野が描く中年女性にはすごくリアリティを感じるのに、彼女が描く若い女性にはあまりそれを感じないのは何故なんだろう。読んでる自分が中年だからなのか。