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タキおばあちゃんの一人語りで物語はすすむ。
昭和初期の良き時代から戦時中へ…
その中での、家政婦タキの日常がつづられる。
なんだか作品に流れてる空気感が好きだったなぁ。
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かつて昭和の人々が〝大正ロマン〟と名づけ、ひとつ前の時代を懐かしんだように、いまや昭和も懐かしがられる時代になってしまったのですネ。本書に漂う古き良き時代の空気感に、ついつい惹きこまれてしまいます。戦争についても声高に何かを伝えようとするのではなく、あくまで市井の人の視点で描かれ、わたしたちの知らない日本の姿がここにありました。
この小説の大半は、女中という職業に誇りを持って、昭和という時代を生きたタキという女性の、最晩年に書き綴った手記〝心覚えの記〟からなっています。戦前から戦中にかけて奉公した、東京郊外のある家庭の様子が、女中の目を通して綴られているのですが、当然彼女ひとりの視点で書かれたものなので、随所に散りばめられた小さな謎は、最後まで解き明かされることなく、すべて読者の心に委ねられます。それどころか手記を綴ったタキさんの心情さえ、最後まで明かされることはありません。このあたりの構成がとても巧みで、読後に深い余韻が残ります。赤い三角屋根の家で女中として過ごした日々が、60年以上の時を経て、美しくも哀しい物語として甦ります。第143回直木賞受賞作。
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おもしろかった。ミーハーなので昭和初期のお金持ち家庭の暮らしぶりとかが楽しい。賢い女中さんの、賢いプライドをもった仕事ぶりとかも読んでてわくわくする。工夫を凝らしたおいしそうな料理とか。
さらっとした落ち着いた文章で、ユーモアがありつつ淡々とした感じがすごくよくて。
で、ちょっとした奥さんの恋愛事件とかも淡々と時の流れのように流れていくのだろうなあと思っていたらば。
ラストにサプライズが。
うーん、ほんとにまったくただの個人的な好みなんだけど、こんなにこのラストのサプライズをしっかり書かなくてもよかったような気も。それまでのタキさんが書いたものとがらっと雰囲気が変わった感じで、まあ、そこがこの小説のすばらしさなんだろうけれど、わたしとしては、平凡でいいからタキさんが書いたものの穏やかな雰囲気のなかで終わってほしかったかも。
さらっと未開封の手紙の存在を示すだけとかでよかった気も。
これもほんとにまったくただの個人的な好みなんだけど、タキさんが奥さんに恋していたってのはちょっといやかも。あくまでもどこまでも女中さんとして奥さんの立場を守ったってことであってほしい。でも、それをちょっと後悔したってことであってほしい。……とか思ったり。
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最終章があって救われたな、と。
タキちゃんもぼっちゃんも板倉さんも旦那様も
みんな奥様のことが好きだったんだなあと思うことにします。
- - -
みんな丸いものの中にいて
そこから出るか出されるか、出さないでおくか
「おもいで」という丸みと生きていくということ
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時代は昭和初期。女中をしていたタキちゃんが晩年その頃を回想しながら記録に残す物語。
可愛らしいお家なんだろうな〜。
おばあちゃんが語り口だけあって穏やかで、ときどきクスリとできるユーモアも素敵。甥の次男の健史とのやりとりも小気味良い。おばぁちゃん好きな私としては、もう少し優しく接してあげてよねって思ってたけど、あとになってその健史の行動力がなんとも頼もしい。ぶっきらぼうながらも、ちゃんと通じていたんだね。よいよい。
『ある種の頭の良さ』……か…。
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面白かった。惹きこまれた。
昭和初期の、古き良きというと薄っぺらくなってしまうけど、とにかく素敵な日本人の生活が垣間見られる。
最終章の意味するところは私にはまだちゃんと理解できないけど、大切にしたい1冊。
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昭和初期、戦前戦後の裕福な家庭に女中奉公するタキちゃんの手記。
その時代の暮らしがリアルでよくわかる。
戦争のことを庶民はどういうふうに感じてたか。
戦争になんの疑問も持たず、教えられたままを信じてる民衆が怖い。
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最終章『小さいおうち』の頁をめくって数行に目を通す。
「この物語を読み続けてよかった」読書の悦び。
読了。
本を閉じて表紙をじっと見る。じーっと見る。
「ああ」
ため息とも感嘆ともつかない、こみ上げてくる何か。
なんとなく、女優の故・高峰秀子さんのエッセイを思わせる「タキおばあちゃん」の手記から始まる導入。
そして、尋常小学校を卒業して「女中」として東京に出た、昭和五年から始まる「タキちゃん」の物語。
現代に生きる僕らが想像する「女中」よりも、どちらかというと「お手伝いさん」と呼んだ方がイメージにしっくりくる。
赤い三角屋根の文化住宅、桃の缶詰を使ったムースババロア。
鎌倉の大仏に、翡翠色のワンピースと麻の日傘。
資生堂の花椿ビスケットと『みづゑ』の特集記事。
明るく利発なタキちゃんと、元気でお洒落でユーモアもある時子奥様との日々は、銀の器にのったフルーツの盛り合わせのように総天然色できらきらと眩しい。
「戦争に塗りつぶされた暗い時代」という単一のイメージで語られがちな昭和初期の東京における家庭や日常の風景を、女中・タキの目線から描き出す、とは巻末の言葉。
そしてひそやかな愛の記憶、とは帯の文言。
「頭のいい女中」の話。
読み終わった僕の頭のなかでは、いろんなことがぐるぐる回る。
再び表紙に目を落とす。
秘密のノートとタキちゃんも『小さいおうち』の内と外、だったのかもしれない。
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待ちに待った文庫化。友人にハードのときに借りて再読したかった本。昭和モダンから戦後にかけての話。女中と奥様という近くて遠い二人。奥様の明るい人柄に癒される。こんな家に憧れる。映画化されるんだね。楽しみ。
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最終章のポンポンと色んな事が分かって行くのがすごく楽しかった。
だけど本当に最後の最後で胸が「ぎゅうっ」というか何と言うか不思議な言い表せないような気持ちになる。
読後はすっきりはしないけど、こういう物語は嫌いじゃないです。
赤い屋根のお家に行ってタキちゃんの部屋をみてみたいなぁ・・・。と思いました。
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「たった二畳の板の間を私がどれだけ愛したか、そのことを書いても、人はおそらくわかってはくれないだろう」という一文が出てくるけれど、自分の居場所を愛する気持ちは十分に伝わりました。読んだあと、こういう気持ちを持った主人公を、すごく愛しく思えました。
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昭和初期、東京の平井家に女中奉公していたタキちゃん回顧録。
この時代の本を読まないせいか、どんどん戦争が進んでくのにタキちゃんの周辺の東京はまだまだ暗い気配はなく、そんなにも明るい華やかな時代だったことに驚いた。
時子さんのお洒落な様子や銀座の様子が微笑ましかった。
決して暗い話でもなく、戦争話でもないんだけど、タキちゃんの平和な穏やかな日々が戦争により少しずつ壊されていくことが切なかった
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とても読みやすかった。女中タキの生活回顧録。
ほのぼのとしていた話は昭和21年という終戦に向かうに連れ、黒く苦しくなる。
友達の様に親しい奥様、手のかかる坊ちゃんの世話等、満ち足りた生活があるからこそ感じる幸せの終わり。
タキの生涯を通して一番の幸せ、そして思い出深い時期は、この小さいおうちの中にある。
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「戦争に塗りつぶされた暗い時代」という単一のイメージで語られがちな昭和初期の東京における家庭や日常の風景を、女中・タキの目線から描き出す『小さいおうち』、とはあとがきを引用したものであるが、物語を綴るその視点に、確かに目新しさを感じはした。賄いの女中がいる家庭を経済的に一般的であるかと問われると否である。割と裕福な家庭を描いたのが本作品ということになるだろうか。
仮に同時代を、一般庶民的な家庭をモチーフに描いていたら、どんな作品になっていたのだろうか。
戦前、戦中、戦後を、その時代では特異であるだろう富裕家庭の日常とリンクしづらい部分に、この作品の減点要素がある。
つまりは、その時代とミスマッチな視点で描かれていることに、大いに違和感を抱かずにはいられないのだ。
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惹きこまれて、ただただ面白かった。ある幸せな家庭で起こっていた秘密。謎は明かされないけど、いくつかの伏線から色々と想像できるとこが面白い。そして時代の変遷が、昔のことなのに今の時代にも重なる気がして、平和の尊さみたいなことも感じられた気がする。