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「男女相愛の道程をたどるのは人類の第一の本道であるにちがいない,けれどもなお第二の路はあるはずだ。そしてまた同時に第三の路も許されていいはずだ。相愛の人を得ずして寂しいながらも何か力いっぱいの仕事をして生きてゆく人たちのためにこの路はやはり開かれてあるわけだ。第一の路をゆく人も第二も路をゆく人も第三の路をゆく人も,各々その路を一心に辿ってそれによって己を生かし切り善く美しく成長させて宇宙へ何か捧げ物をしたい気持ちで歩めばいいのだ。この三つの形をとって人間は生涯を送るより方法はないのだと思う」
不思議な世界観で,謎は残るのに読後感がとても良かった。直木賞を取るのも納得する。良い小説だった。
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タキの時子奥様を慕う気持ちが伝わってきた。自分もタキになって時子奥様や恭一坊ちゃんを見ているような気持ちになった。
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戦争を知らない世代が抱く戦中のイメージと現実がいかに解離しているのか、を知る事の出来る作品です。
確かにフィクションのお話ですが、戦時中とはいえどそこには庶民の生活があり、その庶民は自分達の祖父母でもある事に気づかされます。
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昭和初期、モダンな赤屋根のお宅で女中奉公に出たタキという少女が味わった、上流家庭の生活が半分以上。戦局が進んでも、いまひとつピンとこないフワフワとした甘く鈍感な小さなおうちの日々。
タキが実家に帰り、疎開児童の世話をするあたりで一気に文章がゴタゴタと暗く重く窮屈になり、それがそのまま生活に色がなくなったことを表しているようだった。
時子との束の間の再会から、また現代の甥の視点へ一気に跳ぶ。ここでまた終始自省的だったタキの思いがけない一面が強く心を掴んだ。小さいおうちの秘めた激情。
いいものを読んだ。よかった。
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聞かなかった問いの答えを求めて、ひとつの物語を辿っていく健史が羨ましく思えた。物語の最後に奥さんと女中ではないもう一つの関係が見えてくる。
当時の戦争に対する楽観的な世論も感じることができる一冊。
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昭和初期から平成に生きた女中タキちゃんの、戦前に仕えた「小さなおうち」での物語。
「女中さん」=「召使い」=「大変な苦労」というイメージが覆りました。また戦前の東京がこんなに豊かで栄えていたなんていうのも知らなかったです。
戦争ものの作品ってどうしても悲惨な目に遭った人の話がメインに描かれることが多いですが、タキちゃんの戦争や御国への興味よりも、女中として毎日の暮らしを考えるのに精一杯だったという姿に、戦時中でも意外とそういう人が多かったのかもなと少し安心しました。
物語の進み方が面白かったし、最後の章が素敵でした。
大好きな絵本「ちいさなおうち」とタイトルが一緒だな~と思っていたら、少し関連も出てきてなんだか嬉しかったです。
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女中さんというと主からはいじめられるイメージが強いけれど、女中さんと奥さんが親友みたいな関係を築くことはどれくらいあったのだろう。
タキちゃんは10代20代を平井家の女中をしているのに、おばあちゃんが女中をしている感じがしちゃう。
語りがおばあちゃんになったタキちゃんだからなのか。
奥さんと若い漫画家板倉さんの一目を忍ぶ恋。不倫なんだけど、若者の初恋のように見える。
現実離れした時子さんが戦時中でも浮世離れしていた。生々しいものではなくて、奥様に惚れ込んでいるタキさんが一途で可愛らしくて、本当に周りでどれだけいろいろなことが起ころうと赤い家の中では穏やかな空気が流れたであろう想像もリアルにできました。
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働き者の女中さんが語る、戦前から戦後にかけての山の手のおうちでの物語。
あとがき?にもあったけれど、まず語り手が「おばあちゃん」であること、おばあちゃん特有の視点による小さいユーモアや強さが好き。
そして戦時中の話につきものの悲壮なイメージとは別の、情勢に巻き込まれていきながらも生き生きとした日常。
昭和の台所の工夫はやっぱりなごむ。
子どもを、ぼっちゃん、って呼ぶ、のどかさ。
結局手紙は読まれたかった人に読まれなかったわけだしおばあちゃんの真意もわからないけれども、
おばあちゃんにとって全てだったおうちが、作品の最後にある一作家の中にあった「守られるべきもの」として、また違った意味合いを持たされていることに・・ひとつすっきりとおおきな気持ちになって読み終えられた。
ぼっちゃんも素敵なおじいさんになって幸せのようで、
よかったよかった。
でも最後になって作家の存在が重く興味深くなってくるのは、すごいとも、ずるいとも思った。
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戦争の話としては読みやすいのかなと思った。
反戦を全面に押し出した感じや、ただ悲しい•むごいだけという話ではないので、こういう見方もあるんだなぁと少し新鮮な気持ちで読める。
割と上流の家庭なんだけど、「小さい」お家ということでアットホームな雰囲気が全体にあるところがこのお話に暖かみを与えているのかなと思う。
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戦争の話とか歴史の話とか年号とか、苦手で読んでこなかったのだけど。この本はすんなりと「戦争」というものが私に入ってきた。
文中にそういう本当か話とかのことを「それは戦争の話じゃなくて、兵隊さんとかの話だ」というように主人公が言っていて、まさにその通りだと思った。
リアルな「戦争」の話を読めた気がする。
とても面白かった。女性は特に「戦争」がどういうものだったのかをリアルに入り込める本だと思った。
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途中までは、タキの語りでどこか引き付けられるもあった。このまま終わるのかなと思っていたけど、最終章で舞台が現代へと移ったことで、曖昧だった事柄がすべてつながり、目から鱗でした。
タキの語りでは、主人(奥様)に対して、賢くて機転の利く女中であろうとする姿が頻繁に出てきます。最終章を読み、文庫表紙イラストをながめながら、タキの忠誠心の強さを感じました。
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昭和初期の東京で、山形から出てきた女中さんの目を通して、間少女のような奥様との日々が描かれています。第二次世界大戦へと突入するちょっと前の日本は、暗いイメージがありましたが、ちょっとイメージが変わるような内容でした。
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最後の方で物語は一気に意外な展開を見せる。よく考えられた構成。
戦前は豊かな生活をしていた、と伯母に聞いていたが、そんなことあるかな、と実は半信半疑だった私だが、この本を読んでみて、なるほど豊かで楽しい日々があったのだな、と感じられた。
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昭和初期 戦争の影濃くなる中、山形から女中奉公に出てきたタキさんが晩年、回想録を書き綴るという形式で、当時の東京と家庭の風景、そして奥様を廻る人々の想いが綴られる。
回想ノートに書かなかった部分を感じさせながら、最終章でタキさんの秘密が明らかになるが、最後まで読者の推理を促す。
すべてを白日の下にさらすことない、電球色の景色がそこにある。
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とても素敵だった。読み終わった翌日、また読んだ。時間をおいて、同じ本を読むことはあるけれど、すぐに読みたくなる本には久しぶりに出会った。