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不治の病に犯されて一度世界を否定した主人公が、
親友を殺した罪と向き合いながら生きる話。
なぜ人を殺してはいけないのか。
罪を償うとはどういうことなのか。
罪を犯したものに再生は赦されるのか。
テーマは重くて大きいし全体的に暗いけど
とても読みやすい。
氏の他の作品に興味が湧きました。
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読後感が悪い物語の若き名手が、人殺しの是非や罪を開き直って生きようとする若者を描いた。
筆致も心情のうつろいも、やや稚拙だったり強引なところが散見される。読みつつ首をひねる場面が何度もある。それはたとえば無差別殺傷や幼い子どもを殺した少年が裁判で述べる内容が、一般人に理解できないのに似る。受容しがたい、腹におりがたまるような気持ち悪さを突きつける。
世界のすべてを否定した上で、自分自身だけを完全に正当化できるという異様な身勝手さなのだ。そんな得体の知れない感情と、読み手の心の間に横たわる断絶は、普通の人とそうでない人を隔てる深くて頼りない溝。
致死率が極めて高い病に冒され、奇跡的に命をつないだ主人公の男は、磨り減った魂を穏やかに回復する手段を持たず、ちょっとした衝動から友人を池に突き落として殺してしまう。それが自分を変えて生きていることに何らかの意味を与えてくれることを期待して。
悪を悪としてきっぱり描けるのは、感性が若い。不愉快な他人の人生を疑似体験できることは、文学が持つ力のひとつだ。
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中村文則さんはいつも真面目だと思う。これもけっこう「えっ?」という展開があるのだけれど、硬質な文章の積み重ねの勢いで最後まで読まされてしまう。
また、読んでて中村さんの小説の登場人物は顔を思い浮かべられないなと思った。とても観念的。みんな紙袋をかぶっているような感じがする。
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実はこの文庫本との出会いはあんまりよろしくない出会い方だった。
「だいたい2時間以内で読み終われそうな薄い文庫本」というテキトーな選び方で手にとられた文庫本、それがこの『悪意の手記』だった。なんかピース又吉がおすすめしてるみたいだし(個人的に又吉さんには読書芸人の中でも特に好感を持っているのです)これでいいや~と半ば投げやりな感じで購入。中村文則という作家には少しは興味があったけれど、この作品のことはまったく知らなかった。
ところがいい本との出会いなんて、案外そういうものなのだった。いやー面白かった。又吉さんがオビに「然るべき所に言葉が並ぶ作品」と書いている通りの作品。まるで最初から完成が見えていて、それをただ一字一句書き出しただけのような、非常に整然とした印象を受けた(もちろん、そんなことはないのだろうけど)。テーマは非常に重たいけれど、作者の主張的な押し付けがましさは少しもなく、静かに心を打つ作品だった。
ぐさぐさきた言葉のいくつかを引用してみた。この作者の他の本も読んでみたい。
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最初は「暗いなぁ」と思いながら読んでいたけど、“手記3”でバコーンとおもしろくなった。
いままで犯罪者の気持ちを考えたことってなかった。被害者の気持ちを分かろうとしたことはあっても(まぁ分かるようなもんじゃないんだけど)、犯罪者、加害者の気持ちって知ろうともしてこなかった。ので、衝撃的だった。
かまってほしくて、こっちを見てほしくて、赤ちゃんみたいな気持ちで犯罪を犯す。自殺の代わりに殺人を行う。なるほどと思った。
これをキッカケに中村文則さんの他の作品も読みたくなりました。読んで良かった!
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テーマが重い。
少年犯罪。人を殺すということ。
人を殺したものがどう生きていくのか。
なぜ、人を殺してはいけないのか。
タイトル通り、手記のみで話が進んでいく。
中村さんの作品は初めて読んだが、テーマに共感を覚える。
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主人公が自分の罪についていろいろと葛藤しているにも拘らず、主人公の表情が全く思い浮かばない。
主人公に冷めた印象を受けるのは主人公が書記として後に書いている設定だからだと思うのですが、それがまた主人公の不気味な面を強調さていて、心の闇の大きさに気づかされる。
感情表現を過度にしているわけではないのに、主人公の人生への諦観や罪悪感やこの世への執着心のなさがひしひしと伝わってくる。
青い服の少年の存在もスパイスとなっていて加害者の心の闇を表現しきっていると思う。
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前に人を殺してどっかに埋めて隠すってゆー夢を見た。
まじ焦った。
どんなに平静にかまえても無理なのです。
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なんとなく『人間失格』と『こころ』を併せたような雰囲気がありました。
自分の死と向かい合ったときに、人はどう行動するのか考えてしまいます。
主人公はずっと自殺を考えていたので、ラストは意外といえば意外だった気がします。
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少年犯罪をテーマとした小説で、主人公の目線から描かれる点に特徴がある。
主人公の心理描写はとてもリアルな感じがして、もしかして著者はそういう経験をしたことがあるのでは・・・と思ってしまうほどゾッとする場面も。
人を殺し、絶望しても「なぜ自分が自殺しないのか?」「自分はどうしたいのか?」「逃げたいのか?」と疑問を持ち、答えを見つけられずに苦悩する主人公は、それぞれの解を持った人間や幻覚を見ながら、自らの答えに近づいていく。
「なぜ人を殺してはいけないのか」というテーマはよく耳にする。
そしてそれに対する明確な答えを聞いたことはない。
しかし、ここにはその答えに極めて近いものがありそうな気がする。
「理由なんてないよ。理由を作ると、必ずそれに反対する言葉が出てくるでしょう?だから理由を作ったら駄目なんだよ。」
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人殺しの葛藤。
人を単純に「苦悩する人間」と「苦悩しない人間」に分けられるわけじゃない。
苦悩しない自分と苦悩する自分との間に立たされて身動きが取れなくなることもある。極端などちらかになりきるのは難しい。
人を殺してなくたって、そういう葛藤が生じることはあるから、共感もたくさんあった。
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精神的にくる本。頭で理解するというより体感するという感覚に陥る。死を間近に感じる人が人生を否定的に捉えながら生きているからこそ感情の起伏が激しく内面に起きている。人により善や悪を決めて生きているがそれが必ずしも全員に一致しているわけではない。善悪は既存の社会で成長していく中で学ぶものである。その善と悪が揺れ動いている。
(ゆうじん)
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うーん、「何故人を殺してはならないか」に対する答えって何か提示されてたっけ。
薄いから読めた本だった気がする。でも文章は好きだったなぁ。痩せこけた男の子の幻覚を初めて見た時の描写は少しぞっとして、のめりこめた。
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死に至る病に侵され、一命を取り留めた少年が、心を病み、
親友を殺害してしまい、さらに悩み抜く話。
親は何をしてたんだ?という感じ。
退院してクラスメイトの顔が紙袋に見えるほど、おかしくなってる自分の息子をほっとくなよ。
母親の「言ったら駄目よ」のセリフが、どす黒かった。
たぶん、作者の方が描きたいのはそこじゃないのだろうけど。
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もっと悪意の塊の主人公を想像していましたが、人間らしさもあり、ややかわいそうでした。
誰でも死への恐怖はあると思います。その時自分は優しくいられるだろうか。その時期や、その時の状態にもよりますが、人は自分が不幸な時、自分以外の人間を恨むこともあるかもしれない。
自分が最悪な時まで人に優しく出来るだろうか。
世の中には、本当に「良心を持たない人間」と「それなりに良心を持ち合わせている人間」がいる。
主人公は後者で、それ故に苦悩しながら生きている。誰でも多少の悪意は一時的にでも発生するものだと思うし、主人公はむしろ人間的な方だと思う。
「死」について考えることは、永遠にテーマだと言えるだろう。