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【運命の非情な饗宴を描く傑作、待望の新装版!】首席家老・又左衛門の許に果し状が届く。かつて同門の徒であり、今は厄介叔父と呼ばれる市之丞からであった―武家小説の傑作長篇。
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主人公は大きな組織に属し、政策と権力をめぐる闘争の中で上り詰めていくわけだが、この地位にいる人はこう考え、こう感じるのだろうと思わせて、実にリアリティがある。
藤沢周平は、大学を卒業して2年ほど教員を勤め、肺結核で大手術した後、経済新聞の記者と編集長として10数年働きながらコツコツ時代小説を書きつづけて「溟い海』」で直木賞を受賞し、以後フルタイムの作家となっている。大きな組織の一員として働いた経験があるわけではない。
上杉家を支える直江兼続を描いた「密謀」を読んだ時にも思ったが、どうやってこういうことを知ったのだろうと不思議に思うれども、
そこが優れた作家の創作の力なのだろう。
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「清廉潔癖、世に恥じる事なく正義を貫く」ということは不可能。
大人社会、作品のように藩内の勢力争いで勝ち残るためには策略や裏切りも当然必要となり、その目的が自己の利益のためだけでなければ許されるのかもしれない。
だが藩政の中、それだけではなく一個人として自分の思いの中に正義を貫いたり、善政を施し、弱きに強く出ず、施しと赦しの余裕を見せる時、それは自己愛であり自己満足、そしてそれができる位置にある「権勢欲」の裏返しであると言うことか。
自己を顧みて、人に親切を施す時、自分はそれができる立場にいるという喜びがある事は間違いない。
うらぶれた市之丞が家老である又左衛門に果し合いを求めたのは権勢の上に鎮座して正義感顔をしている旧友への怒り、仕置き、そして矛盾するが友情だったのではないだろうか。
巻末の解説は葉室麟さん。
豪華。
文庫版の魅力はここにもある。