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量子力学は20世紀最大の発見ですが、この本はそれを非常に分かりやすく解き明かした名著だと思います。
プランク→ラザフォード→アインシュタイン→ボーア→(パウリ、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、ディラック)→EPRパラドックス→量子暗号/量子テレポーテーション、と続く100年間の歴史を、劇的なエピソードを交えて、見事に書き切っています。単なる量子論の歴史のみならず、その時、天才物理学者たちは何を思い、何を悩んで、その結果どういう発見が成されたのかを、分かりやすく書いているので、分厚い本にもかかわらず、一気に読めてしまいます。
私は、電子スピンの発見のところから読み始めましたが、これは朝永振一郎博士の名著「スピンはめぐる」と重ね合わさる部分で、そういう意味でも、この両者を読み比べてみると、二重に楽しめると思います。
それにしても、ボーアのコペンハーゲンの研究所における、ボーア、パウリ、ハイゼンベルクの関係が、そのまま日本における仁科芳雄、湯川秀樹、朝永振一郎の関係にそっくりで、時を変え、場所を変えつつ、歴史というものは螺旋状に繰り返すのだなあと、そういうところに感動しました。しかも、ボーアはボーアで、イギリスのラザフォードを手本にし、師匠として仰いでるんですよね。これも、仁科芳雄とボーアの関係に似ています。
それから、なんといってもアインシュタイン。この人は他の物理学者と群れることは無く、いつも孤高の存在で居るわけです。シュレーディンガーもそれに近い。
変わったところでは、ディラックでしょうね。この人は「美しい数式こそが世界を表す」という信念の人で、その信念でやすやすと相対論的量子力学を建設してしまうのですから、まあ、とんでもない天才がそろって同じ時期に出てくるもんですな。
他にもいっぱい書きたいことがあるのですが、今日はとりあえずこの辺で。
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量子力学を習ったことがあるなら,絶対に面白い本。
かなり厚いが,量子力学の発展が関連した人物とともに丁寧に書かれている。
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量子論は大学の講義で習った際にそういうものだとすんなり受け入れていたが,当時の感覚ではまさに革命的であったのだと理解させられる本.結構楽しめた
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量子力学は私の大学時代はさわりをわずかに学んだだけだ.カーナビの技術に量子力学は無くてはならないという話を聞いても、イマイチ理解できない.本書ではアインシュタインを筆頭に数多くの天才が量子力学を構築していく過程が個人的な裏話も含めて詳しく述べられている.すごい著作だと感じた.
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数学の知識も物理の知識もカケラもないこてこて(?)の一般人ですが、それでもとても面白く読めた!
ボーアって誰?ってくらい知識ない当方でしたが、久々に興奮する知的体験をしたと思いました。
物理や数学の知識があったら、もっと面白く読めるのでしょうね。知識ある人羨ましいです。
こんな量子力学に何の知識もない人間が読んでも面白いと思えるのですから、著者及び訳者の力が素晴らしいと心から思います。
これだけ噛み砕いて理解しやすくこの世界を綴られた本は少なくとも日本には他にないのではないでしょうか?
物理学者たちの交友、発奮、議論などなどを国際情勢・歴史背景を考えながら読むと「もしここで戦争がなかったらどうなっていたのか」とか「もしここにこの人がいなかったらこっちの人はどうなっていたか」とか詮無いことをいろいろ想像してしまい、物事が大きく動いたり発見されたりする時には歴史や環境などの背景がとても重要なのだと思い知らされます。
この本に描かれたアインシュタインって、これまで思っていたのと全然違う人でした。そしてどうしてボーアという人はこれだけのことをしたのにどうしてアインシュタインくらい(少なくとも日本では)知名度がないんだろうかととても不思議でした。
「真実を手に入れたいという願望は、真実を手に入れたという確信よりも尊い」って言葉にとても感動しました。
物理の世界だけでなく、みんなそう思って生きていますよね。
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本書のプロローグに挿絵として出てくる1927年の第5回ソルヴェイ会議の写真。『そして世界に不確定性がもたらされた』の表紙にも使われている歴史的な写真だ。量子力学をめぐるアインシュタイン=ボーア論争の象徴的な写真でもある。その写真に写る人物の多くが、本書に登場する。量子力学100年の歴史。非常に読み応えがあり、面白い。
ベルリンでのプランクの黒体放射問題から始まり、スイスのヴェルンでのアインシュタインの光量子仮説、マンチェスターのラザフォードの原子モデル、そしてコペンハーゲンのボーアの電子の量子論。ド・ブロイの粒子と波の二重性、パウリのスピンと排他原理、ハイゼンベルグの行列力学とシュレーディンガーの波動方程式を経て、不確定性原理と相補性、観測による波動関数の収束などに代表される量子力学のコペンハーゲン解釈が確立する。
アインシュタインが「神はサイコロを振らない」という言葉で異を唱えたコペンハーゲン解釈。本書の後半では、このコペンハーゲン解釈に対する論争を中心に進められる。アインシュタインは孤軍奮闘にも近かったが、本書は最終的にこのコペンハーゲン解釈に懐疑的で、ヒュー・エヴェレット3世が初めて示した多世界解釈に好意的である。実際に1999年に行われた物理学者90名へのアンケートでコペンハーゲン解釈に票を投じたのは4名しかいなかったという(エヴェレットの多世界解釈への票も30名しかおらず、50名はわからないという回答だった)。
一方で著者は、ボーアやその他の物理学者に対して敬意を持って量子力学の苦闘の歴史を丁寧に描き出している。時にスリリングに、時にウェットな人間ドラマを交えて。初期の量子力学が多くのドイツの科学者とユダヤ人の科学者によって推進されていたこともあり、この時代におけるナチスの台頭と第二次世界大戦が、この物語にも印象的な影を落とす。そして科学が人間によって作り上げられたものであることを改めて気付かされる。
ボーアが死の前日に、「かつての議論をもう一度反芻しながら、彼が最後に書斎の黒板に描いたのは、アインシュタインの光の箱だった」というエピソードは出来過ぎだが、本書のテーマをよく表している。「真実を手に入れたいという願望は、真実を手にいれたという確信よりも尊い」という哲学者レッシングの言葉で終わるこの本は、著者の筆を通したアインシュタインからのメッセージのようだ。
青木薫さんの訳は相変わらず安心感がある。
本書に惚れ込み、翻訳を熱望し、ゴーサインが出たときんはガッツポーズまでした青木さん渾身の翻訳を楽しんだ。
そして、大学のときにもう少し量子力学を真面目に勉強をしていればよかったなと思った。
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アインシュタインとボーアの量子力学の論争を中心に、量子革命の百年あまりの歴史を描かれている。
量子力学の歴史と時代背景がわかって、楽しめた。
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20世紀前半の物理学がもっとも輝かしかった頃。その頃はちょうど2回の世界大戦ともかぶる。既に歴史の領域なんですね。
量子力学を学ぶ人のコーヒーブレイクにちょうどよいでしょう。
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非常に面白い。サイエンス・ドキュメンタリーの良書である。
世界を変える理論は容易には受け入れられない。ゆえに幾多の反証に耐え世代交代を待ってから理論革新が起こる。しかし時に例外もある。圧倒的な理論は燦然と耀きを放ち学者たちは受け入れざるを得ない。そのひとつがアインシュタインが提唱した一般相対性理論である。そして皮肉なことに、ボーアが推進役となった量子力学分野において反論客の急先鋒となったのはアインシュタインであった。統一場理論という美を求めるアインシュタインと、「神のサイコロ」を理論として組み込んだボーアやシュレーディンガー、ハイゼンベルクといった量子力学の天才たち。常人では理解さえ及ばない高度に抽象化された世界のなかで、理論構築と思考実験による反証、そして政治や戦争などの社会環境が複雑に絡み合い、結果として量子力学の発展と浸透に大きく貢献した。マンハッタン計画で知の誤った使い方をされたことは極めて遺憾ながら、日本の戦国時代や明治維新のように、同時代に同領域で多数の天才たちが切磋琢磨を繰り広げたことは人類史における奇跡といっていいだろう。
本書は比較的分かりやすく量子を説明しているものの内容は相応に難しい。しかし是非トライして知の巨人たちのダイナミズム溢れるドラマに触れて欲しい。
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光量子の発見者であるアインシュタインは最後まで量子力学は完全だとは納得していなかった。物理現象が観測によって存在するという考え方が納得できず、観測の有無に関わらず実在するはずだと信じた。そのアインシュタインと量子論のコペンハーゲン解釈を掲げるデンマーク人のボーア。この二人の周りのノーベル賞受賞クラスの多くの物理学者。量子論がどのように世に現れそしてその世界を広げてきたかを多くの物理学者の物語で読ませる。
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ぼんやりとしか理解できないが、数学的に世界を理解するということはこういうことなのだな、みたいな。科哲でやってる反実在論とかについてもすこしわかった気がする。
実はその後ずっと愛読書。
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量子という概念が生まれ、量子力学という形に定式化され、コペンハーゲン解釈というドグマが成立するまでを、科学者たちの議論の系譜として描きだした、すばらしいポピュラーサイエンス。これまでも、量子を扱った一般書には傑作と呼べるものが何冊もありますが、私はこの本に圧倒的な感銘を受けました。類書にはない本書の特徴は、同時代を生きた科学者たちが、互いにどう影響しあったかを丹念に描きだしている点です。時に刺激しあい、時に嫉妬し、時に反目しつつ、互いの発想を糧に、自らの着想を磨いていく「群像劇」として、物理学の国際的「コミュニティ」をここまで活き活きと描きだした作品は他にないと思います。
自ら量子論の種を蒔きながら、晩年にはコペンハーゲン解釈最大の障壁となって立ちはだかるアインシュタインと、コペンハーゲン解釈の始祖にして最大の擁護者たるボーア。この2人が直接衝突する第2部後半が本書のクライマックスといっていいでしょうが、私は、第2部の最後の1行に図らずも落涙しました。かくも強固な研究者としての執念、生き様と、アインシュタインとボーアの間に巡った数奇な運命に心底痺れました。このような3部構成を企んだ著者マンジット・クマールにも脱帽です。
第3部は、ある種の無常観を漂わせる後日譚の趣です。現実には第2部の終盤と時間的に重複している部分がありますが、敢えて「アインシュタインとボーアの時代」「それ以後の時代」にばっさりと切り分けることで、印象は深まっています。アインシュタインとボーアが、科学者としての生死を賭して争った問いかけが、今日どのように姿を変えているのかが示され、幕が降ります。
本書に引用された数多くの科学者、哲学者たちの言葉に何度も激しく揺さぶられましたが、私に最も突き刺さったのは「人間理性にとって手が届くかぎりの実在の本性が合理的なものだという確信について何か語るとすれば、“宗教的”確信というより良い表現が見つかりません。この感覚がなくなるところでは、科学はつねに退屈な経験主義に陥ってしまう恐れがあります」という、アインシュタインの言葉でした。ラストの1行にもかなり打ちのめされましたが、さすがに書けません。
最後に、青木薫氏の訳書は素晴らしい作品が揃っていますが、今回も最高です。ただ、邦題に「革命」とつけたことで、むしろアヤしい気配を漂わせてしまっていると私は感じるのですが、「訳者あとがき」を読むと、心底入れ込んで「革命」という言葉を選んだように汲めるので、致し方ないか、とも思います。
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物理学の素養が無いので、本書で触れられている中身そのものはサッパリ分かりません。が、読む人が読めば整然と整理された内容なんだと思います。
人類史に名を残す天才たちが、人生をかけて真理に迫ったその生き様と苦闘、天才たちの互いの刺激、観測された事象への向き合い方、何よりも人間ドラマに引き込まれました。
自分の及びのつかない天才たちの会合(空中戦)やその舞台裏をコッソリ覗き見ているような興奮が味わえました。
青木薫さんの翻訳と訳者あとがきが素晴らしいです。あとがきたけでも本書のエッセンスを味わえます。