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「死」があらゆる生物にとって特別なことであるのは、おそらく昆虫でも動物でも同じことだと思われる。しかし、おそらくヒトだけが死の前に死について考え、死の後に死者を意図的に葬るのだろう。
死の受容は、大きく四つに分けられるという。
ひとつ、個人の死を何らかの代替を用いて否定する。霊魂の不滅、死後の世界、肉体と精神の二元論。
ひとつ、儀礼行為による死への対処。葬式。ひとつ、生前において大きな儀礼を開催したり、何かの記念事業を達成する。巨石文化、古墳。
ひとつ、個人を超える集団の中に個人を位置づけることによって、個人の死を集団の永続性に置き換えるという形式。血筋、名前。これらは、文化において複数の形式が並存する。
墓は、文化における死の受容のあり方のひとつの「証拠」である。
墓の形式は、時代と地域で大きく変遷した。現代の墓は、近代以降に確立して近未来は大きく変わろうとしている(散骨とか)らしい。
以下、面白かった処を時代変遷的に。
縄文時代後期の周堤墓。河川漁労による共同祭祀の必要性。また、階層社会の可能性。
弥生時代にはまだ年齢階梯社会であって、世襲制までは遠かった。
後期後葉の破砕土器の供献儀礼、葬送のために特別に用意された加飾壺や器台などを「神の依代」として破砕する。これが古墳時代に用いられる。
弥生から古墳時代にかけて、死後の霊魂は鳥に憑依し、或いは鳥の姿になって大空に飛翔する(下関市土井ヶ浜鵜を抱く女性)。
この事典では「埴輪の殉葬起源」説は明確に否定されている(154p)。当然ですね。
平安京では、死体遺棄が普通だったらしいが13世紀以降急速に減少して共同墓地が成立する。
この事典では、朝鮮半島の墓がコンパクトにまとめられていて、とても参考になったし、これからもなりそうである。
読み物として、たいへん面白かった。高くて手元におけないのが、玉に瑕。
2013年11月11日読了