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どこか抜けている、ずれている、そんな形容はできない。やっぱり千葉さんは「人外」なのだから。
死神の精度が伊坂作品で一番思い入れが深い好きな作品なのに、続編を積読に積みっぱなしで何年も放置するなんて、本当にどうかしている。…ということで、読み始めると面白くて一気読み。
以下ネタバレ
長編で千葉さんに会える。今回の調査対象者は、たった一人のかわいい幼い娘を残酷に奪われた父親。その両親の復讐劇に同行する千葉さん。調査という仕事は手を抜かずにしっかりしなければならない(浮力のように)という信念のもと夫婦を絶妙な距離感と非共感の中で助け続ける千葉さんが、面白い。
香川さんの「期間延長」宣言には、まさしく絶望したし、そんな悲劇をやっちゃっていいの?って想いながら最後は一気読みしたのだけれど、それこそが奇しくも夫婦が真から望んでいた「相手にしてやりたい復讐」となってしまったことが面白い。そのあまりに残酷な最期は、死んだ沢山の人は帰って来はしないが、因果応報的な溜飲が下がる自己満足がある。
ところで。
「自分や自分の親が死ぬのは怖い」ということに気づいて夜中に親に泣きついた経験は私にもある。キングの「ライディング・ザ・ブレッド」を思い出す。我々は死を待つ列に並んでいるにすぎない。それはとても直視し続けられない、答えも解決策もない恐怖。
だから「死が怖くないかを見に行ってやる」と、自分の最期で、息子に教えた父親の場面がとても印象に残った。
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書き下ろし長編。死神・千葉のキャラもいいんだけど、主人公と父親とのエピソードに出てくる「その日を摘め」という言葉が心に残った。ググってみたら元は古代ローマの詩人のもので、「今を楽しめ」とか「今という時を大切に使え」という意味らしい。人間って何千年も前から死の恐怖に怯えて、これだけ医学とかいろいろ進化した今になっても変わってないんだね。私も残りの人生悔い無きように、日々楽しく遊んで暮そう。
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主人公はこの先どうなるのだろうと、読み進めてゆくにつれ、少しずつ加速してゆく物語。
軽快に。
しまいには加速しすぎて自動車に追いついてしまう自転車。
重いテーマでも陽気さを忘れない伊坂作品は好きです。
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(作中で)25人に1人と言われる良心を持たないサイコパスによって、
娘を殺された夫婦が、そのサイコパスへの復讐を企てるという重い設定。
死神シリーズの『死神の精度』を読んだ方ならご存知だと思うが、
タイトルにも出てくる死神の千葉という独特なキャラクターの存在により、
ミステリというよりもファンタジー要素が強く、あまり重々しさは感じなかった。
あまりに不遇な立場から、最後に少し救われる展開というのは、
伊坂氏の作品に時折見られるけれど、今回もそんな感じだ。
終盤、スピード感のある展開には、ハラハラさせられた。
また、本書の中に名言がいくつか引用されていた。
フランス文学者である渡辺一夫氏の
「寛容は、不寛容に対して不寛容になるべきかどうか」
という言葉には、なるほどと考えさせられた。
パスカルの『パンセ』からの引用にも印象に残ったものがあったが、
作品のオチに使われているので、読む機会があれば直接見てほしい。
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「人はいつか必ず死ぬ」
普段はそんな当たり前の事を意識する事なんてないのに、何かの拍子に自分の死に際をあれこれと考え、ゾッとする事があるなぁ…いくら考えても不毛なのはわかっているつもりですが…。
でも、こんな風に人の寿命が定められているのだとしたら、その時は是非千葉さんに来て欲しい。そしたら、その時出来ることややりたい事が出来るような気がして、人生最後の7日間は何だか楽しめそうです。
あ…しかし、いきなり現れた人物が千葉さんだと気づくのだろうか……?
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千葉さんは相変わらず、音楽大好き。
本城ざまぁみろ。
やっぱり、寿命は寿命だし、その日を摘んでいくしかないんだな。
お父さんの感じ方がすごかった。
子どもをもつと思うようになるのかな。
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ー俺が仕事をする日はいつも雨が降るんだ。
『死神の精度』から7年。あの千葉が長編で帰ってきた。
今回の調査対象者は山野辺という作家。ある事件で愛娘を失っており、妻と共にその犯人への復讐を実行しようとしていり男だった。
仕事に手を抜くことの出来ない千葉は、その復讐計画に付き合うことになるのだが......。
2013年8月5日読了。
妙に生真面目で憎めない死神の千葉が帰ってきました。
短編集だった前作とは違い長編で、内容的にはかなりヘビー。
山野辺が復讐しようとする男が、一般の人間にはとにかく理解不能な人間で、分かりやすくいえば「人の不幸は蜜の味」な人物。
それも、生半可ではない悪意の塊で、その犯人の心理が明らかになっていく度に震撼させられました。
殺伐とした現代、実際に起こりえそうなのがまた怖いところ。
こんなんでどこで決着をつけるんだろう?と思いながら一気にラストまで読みました。
かなりブラックです。が、納得のいく決着。千葉の同僚が下した決断が思わぬ落とし前をつけるのですが、ある意味「神の下した罰」と思えるところがまた素晴らしい。
そして、それ以上に。人間らしくないようで、妙に人間くさい千葉がやっぱり魅力的。癖になるキャラクターですね。
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途中結果が覆ってほしいなあと願わずにはいられませんでしたが、本城の結末は超納得。そして自分も子供に山野辺父と同じようなことを伝えられるのだろうか、なにも怖くないってことを先に行って確かめてやれるんだろうかと自問自答しました。なんで浮力なのかがわかる個所もなるほどって感じでした。伊坂作品って本城のようなサイコパスがたくさん登場して、その都度地団太踏みたくなるような不快感に襲われるのですがちゃんと伊坂流ジャスティスで消化してくれて心の中でガッツポーズでした。あとこの数年一貫して伊坂作品のテーマとなっている真実って何?誰から見た真実?っていうのは少し怖かったな。
そしてツボだったのは「のっぴきならない」でした。今後しばらく使い続けそう・・・。
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内容紹介
『死神の精度』で活躍した「千葉」が8年ぶりに帰ってきました!
クールでちょっととぼけた死神を、今度は書き下ろし長編でお楽しみください。
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今作も見事にやられた…。
前作の短編も好きだったけど、今作の長編もそれはそれでとても楽しく読めた。
参勤交代だの大名行列だの、本当に見てきた千葉の発言がとても面白く
「あれはいい制度だった。またやらないのか」という、明後日の方向にボールを投げる感覚とかすごくよかった(笑)
まともな感覚ではない、人間とはだいぶ違うキャラだからこそ活きるストーリーなのかもなぁと思う。
物語の大筋は、とても暗澹たる雰囲気だったけれど、最後はやっぱりスッキリするエンディングでした。
これこれ、この感じ。
また続編が出ると嬉しい。
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千葉さんとの再会を心待ちにしていました。
全編通して生と死を見つめ続けることになるけれど
山野辺夫妻と千葉とのズレている会話が
不思議なおかしみを生み出していて救われます。
*ピアノに近づき恍惚の表情を浮かべる。
*床に置いたラジカセと一対一で正座をして向き合う。
*ラジオを探す。
今回もミュージックを愛する千葉さんの所作に癒されました。
『還元キャンペーン』 は怖すぎて心がざわざわします。
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私みたいなおばちゃんでも、わくわくドキドキさせてくれるもの。それが伊坂さんの小説だ。キャラのたった、ひょうひょうとしつつ魅力的な登場人物たちの、小気味いい会話に心をくすぐられる。短編集「死神の精度」の続編だが、読んでなくても、覚えてなくても(←私)問題なく楽しめる!ほんとに死神が出てくるわけだから、絵本みたいだけど…そうだ。大人のための良質な絵本といった感じだった。大人のファンタジーを存分に楽しみながらも、ところどころ胸に迫る、ピリリとスパイスの聞いた台詞や一文が、いい。とっても、いい。
——“日々を積む”
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今回の作品はマリアビートルでの「王子」のようなキャラが出てきて、本当に腸が煮えくり返る思いでした。話の重みは伊坂さんの小説の中でも1、2を争うくらいの重さでしたが、合間合間に挟まれる千葉と山野辺夫妻との少しズレた会話やそれぞれの過去話などで、伊坂作品らしさが出ていたと思います。
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「死神の精度」がすごく好きだったので、長編で再び読めるとは嬉し過ぎ!
前回は短編でしたが、長編でじっくりもいいですね☆
千葉の魅力健在です!
読み終わった後、思わず「死神の精度」も読み返しました。
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伊坂幸太郎「死神の浮力」読了。
じんわりとした余韻。千葉はやはり秀逸なキャラである。
氷を入れたコップの水に込めた死生観に柔らかな強さをもらった。また彼の仕事の話を読みたい。