紙の本
優れた著者である
2015/09/21 05:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治を切り開いた人物たちの仕事ぶりの丁寧な本である。
多くの論者に描かれつくされている分野であり、マルクス型はもうさすがにいなくなってきたが、よくある特定テーマへの拘り、通説の打破を狙ったぶつけ型ではないし、またかってな推測、仔細な私生活印象づけや実証の過剰な描写での論旨不明瞭ではない。
これらを排していけばどういうものができるか、
明治期の日本を創った人たちへの静かな畏敬と仕事を通して滲む人柄を描くことに成功している。そういう本となっている。読後感も静かに考えさえてくれるものがある。
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投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
文章は適度に区切られ飽きることはないが、非常に重厚な内容だった。
個人的に印象深いのが幕末明治期に欧米を自らの目で見た者のほとんどがその文明に圧倒されるのに対し、山県有朋にとってはむしろ西洋から離れる要因となったという点でその視点は本書を読まねば得られなかったものであった。
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幕末を生きる人々が西洋国家、文明に驚嘆しこれからの国づくりに参考したか。帝国憲法を制定するにいろんな葛藤があったかがわかります。近現代史には疎いのでちょっと理解できない部分もありましたが、幕政を終えゼロから国を作るという執念が伝わってきて、もっと知りたいと感じました。
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原文引用が当時のカタカナ文で少し読みにくい。歴史書の一種。
実働部隊については人柄を含めて詳しく書かれているが、「世界中に使節団を送り、学び、取り入れ、変革を行った真のリーダーは誰か?」は明らかにされていない。
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地元の図書館で読む。高杉の部分が興味深かった。読書人だったんですね。上海への旅は予想通りです。既に、状況は把握していた。
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明治国家の枠組み、帝国憲法をつくった人々のはなし。西洋文化の洗礼に度肝を抜かれる人たちが居る一方、明らかに上から目線で馬鹿にしている村垣範正のような人が居たのが面白い。いい加減なお世辞で喜ぶ米婦人方を見てのコメント、「愚直の性質なるべし」が笑える。西洋人のことを「欲深き人種」と称した久米邦武が現代日本人を見たら、なんと言うだろう。司馬遼太郎の世界では、パシリのような伊藤博文が、ここでは国家の設計者で、天皇さえも操れる大政治家。憲法発布式に望む明治帝のものすごい意気込み。睦奥宗光の執念。先人の偉業に感謝。
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この時代のリーダーは、どのように『国家』を創っていくべきかを考え抜き、そして行動に移していった。
本著では、それらリーダーの思想、言動について具体的に触れられ、そこに映し出される鬼気迫る気概を肌に感じることができる。
この当時の政治家の勉強量(読書量)は想像を絶する程であるし、考え抜く能力はとてつもなく高かったような気がする。
一方で、伊藤博文もその一人だが、大いに楽天的なところもあって、心にゆとりが持てた時代でもあったのだろうか。
(坂の上の雲の如く)
登場する人物は政治家、官僚、学者、思想家、知識人など多岐に亘る。
ただ、各々が重厚なキャラクターの持ち主であるが故、紙面の割き方が少なく消化不良になるかもしれない。
著者の「伊藤博文-知の政治家」(中公新書)もお奨め。
以下引用~
・高杉の上海訪問の意義のひとつは、彼の地で西欧の活字文化の洗礼を受けたこと。当時の上海は本の都だった。
高杉は上海滞留中、さかんに書店を回り、書籍の購入にいそしんでいたのである。
・榎本・大鳥らの助命に動いた黒田清隆が岩倉に対して、アメリカでは南北戦争で敗れた南軍の将を赦免し、ともに建国に協力している。榎本らをいまだ獄中においていることがアメリカで問われた時、何と申し開きするのかと訴え、それを受けて彼らの釈放が実現したと伝えられる。
・山県(有朋)が古稀庵に所蔵していた蔵書の数は、一万冊をくだらなかったという。そのうちの少なからぬ書物に、傍線や書き込みが施され、山県による旺盛な勉強の跡が偲ばれることである。そこからは、伊藤(博文)と並び立つ「知の政治家」の姿が浮かび上がってくる。
・「井上毅伝」に収められた目もくらむほどの史料の山を前にすると、明治国制の確立のためにまさに粉骨砕身して身を捧げた一人の知識人の姿が浮かび上がってくる。岩倉にせよ伊藤にせよ山県にせよ、明治の政治家たちはみなこの比類なき知性の働きに支えられて、自らの政治構想を立案し実地に移すことができたのである。
彼が目指していたのは、ドイツの歴史法学に則って日本旧来の儒教的道徳を再生させることにあったと見なし得る。法や行政という西洋的概念は、仁という東洋的価値によって解釈替えさせなければならなかったのである。
・陸奥宗光は、故国を遠く離れた異郷で、憑かれたように勉学にいそしんでいた。ベルリンから発した書簡には、毎日10時間も机に向かっているとの消息が綴られている。そのような陸奥の姿は、鬼気迫るものとして傍らにいる者を威圧した。
・かつて久野収氏は、近代日本の天皇制を、天皇主権説という顕教と天皇機関説という密教からなるという今日なお引き合いにだされる見解を提示し、そのようにしてできあがった明治国家の体制を伊藤博文の「芸術作品」と呼んだ。
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「明治国家」をつくりあげていった人たち、明治天皇、伊藤博文、井上毅などをはじめ官僚が学んだドイツやオーストリアの法学の先生…どうやって明治国家という枠組みが出来上がって、それを肉づけていったか。
それを法学、憲法、教育、明六社などの組織を通じて描かれています。
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伊藤博文に関する著書が多い瀧井一博さんの新書。
対象としている人物が著名人だけではないのが面白い。
福沢諭吉や伊藤博文までは明治本らしい。
だが、渡辺洪基という帝国大学総長なんて、全く知らなかったが、その軌跡は独特で楽しめた。
一方で加藤弘之というのは知らない上に、なぜこの人物を取り上げる必要があったのか最後までしっくりこなかった。
あと、文書が少し難解。
原文をそのまま引用するのは学者らしいが、論文ならいいが一般人向けの新書ではいかがなものか。
それによって読みにくくなっている。
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「坂の上の雲」でもそうであったが、「明治」と言う時代は実に興味深い。
この時代こそ、現代へと続く「日本」と言う国家の根幹を意図的に造った「創業の時代」であったことは間違いがないのだが、同時に昭和の「帝国の破綻」へと続く道であったし、現在でも「靖国」などで尾を引いている問題でもあるとも思う。
そういう視点から「明治国家をつくった人々」がなにを考えていたのかをより知りたくて本書を手に取ってみたが、ちょっとがっかり。
まず、内容以前に、論理構成や内容がかたく読みにくい。
文章の内容や切り口も、総花的で思考がまとめにくい。また、多くの人々を取り上げすぎていて、関係性がわかりにくいと思えた。
また、本書では当時の文書を「読み下し文」に書き改めて紹介しているが、あまり評価できないと思えた。
歴史家の「松浦玲」や「荻原延壽」がよく原文を引用しているが、文書のニュアンスや交換相手との人間関係を知るにも「原文」のほうがはるかに勝っているし、「読み下し文]
には「勝手読み」のリスクもある。
「漢字原文」は良くできたもので、漢字を現在でも引き継いでいるわれわれには、たとえなじみのない「漢字原文」であろうとも、飽きずに読んでいるうちに大意はつかめるようになってくるのであるから不思議なものである。
ともあれ、本書は、「テーマ」は興味深いものであるが内容全般には不満をもった。
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憲法発布し、議会混乱するものの、天皇の倹約陶酔生活の甲斐もあって日清戦争に勝利した結果、日本に国民が誕生した。
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一家に一冊欲しい本(評価は別)
明治国家が憲法に求めるものが
まだわからないことばかり
天皇の統治権の総覧を考える時
また読もう
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【期待したもの】
・明治を語る時によく出てくる有名人だけではなく、あまり表に出てくることがないエリート官僚を描く、ということで期待した。確かに、あまり聞いたことがない名前が出てくるが、紙数が割かれていたのは、やはり有名人。
【要約】
・明治政府における国家のグランドデザインは、やはり伊藤博文。明治天皇は伊藤の暗殺後、後を追うように、とまでは言わないまで、元気をなくしたまま崩御した。
【ノート】
・ブーランジュ
・そう言えば、なぜわざわざ¥1,000円札のデザインは伊藤博文から変わったんだっけ?
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ジュニア新書のような平易な題名に反して中身は専門的であり、政治史と思想史を架橋するような内容で読み応えがある。
中でも、「法理」に殉じる井上と「情勢」に従う伊藤との対比が興味深い。井上毅こそ明治国家の真のデザイナーであるものの、伊藤博文によってある種骨抜きにされて良くも悪くも現実的かつ中途半端な内閣制度が出来上がってしまったが、この辺は両者の天皇観の違いによるものと言えるだろう。「政治は妥協のアートである」とも言われるが、伊藤はまさにそれを体現したとも言える。
ただし、その結果として内閣も天皇も無力化し、それが軍部の暴走(≒昭和の悲劇)を生んだという因果関係に結びつけるのは少々飛躍も感じられ、詳細な検証が必要にも思える。