シンプルに世界を説明。
2022/08/21 15:21
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投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
工学系の学者による新しい理論が全てを説明。
こう書くと、トンデモ本のようですが、紀伊国屋書店ですし多分大丈夫。
どう言った理論なのかは、序章でほぼ全て説明してあり、それを個別の事例に当てはめ、汎用性の高さを示す。
なので序章だけで十分なのかもしれない。
概ね了解可能なのですが、車輪については疑念が。
自転公転などの、宇宙で起きている動きを用いる方が、まだ車輪がデザイン済みって説明にはなるのではないのかな。
二本足コンパスの振り子運動を、車軸と車輪の工学的な構造に対比するのは、無理があると思います。
とはいえ、一つの理論で世界を説明する本としてかなり出来がいいように思います。
10年ほど前の書物ですがその後の影響はどうだったんだろう。
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デザインという言葉が、これほど広い意味で使われるようになったのはいつ頃からだろうか。僕が広告業界に足を踏み入れた時にはまだ、デザインとは特定の職群の人たちの美的関心事を指していたように思う。だが同じ頃、営業の仕事とは「絵を描くことである」と教わった記憶も残っているから、既に現在使われているような広義の意味は含まれていたのかもしれない。
この言葉がこれほど頻繁に用いられるようになった理由の一つに、創造性と能動性のイメージを伴なっていることが挙げられる。たとえば営業の仕事を「アカウントをデザインする」と表現すれば業務の意味が変わってくるだろうし、書評を書くことだって「文脈をデザインする」と置き換えると、書く内容も変わってくるかもしれない。
だが、本書はこのような「デザイン」という言葉の持つイメージを真っ向から否定する。それどころか、ダーウィン以来定説になっている「進化に網羅的な方向性がない」という考え方にも異を唱え、さらには「世界のやり直しはまったく異なる結果を生む」というスティーヴン・ジェイ・グールドの有名な主張にも立ち向かおうとするのだ。
著者によれば、デザインとは自然の中で自ずと生じ、進化している現象のことを指すのだという。要は、自発的で科学的なものとして取り扱っているのが特徴である。それだけでなく、人間を取り巻くものの一切のデザインが、たった一つの物理法則によって形作られているとまで言う。そしてその法則は、以下の2行の言葉に集約されるのだ。
”有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなくてはならない。”
コンストラクタル法則と名付けられたこの法則を最初に目にした時には、正直何が凄いのかよく分からなかった。低速での近距離の流れと高速での遠距離での流れが一緒に機能する、いわゆる樹状構造のようなものであるなら、よく知られた現象でもあるからだ。
だが、真に驚くべきはこの法則の適用範囲の広さという点にあった。これを本書の前半部では、電子機器から熱を取り除くためにデザインされた人工の冷却システム、河川流域、私たちの身体中に酸素とエネルギーを運ぶ血管の系などを地続きに見ていくことで明らかにしていく。
これらの系というのは、それぞれ別個に研究されることの多かった領域でもある。これを流動系というフレームに入れ、デザインという観点に着目することにより、共通項を見出だせる。Nature、HumanからArtまで、言わばリベラルアーツを横断するような形での視点を獲得することが可能になるのだ。
さらに驚くのは、この法則の後半に記述されている「流れを良くするように進化しなくてはならない」という一節である。つまりこの法則は、適用範囲という空間軸だけではなく、時間軸にも及ぶ3次元の法則であったのだ。本書の後半部ではこれらを示すために、スポーツの記録、道路網、メディア、社会の階層性といった領域にまで話を広げ、予測可能な進化の世界を描き出していく。
たとえば、都市のデザインというものを見てみよう。この場合、コンストラクタル法則に基づくと、遠距離を高速で移動するのにかかる時間と近距離を低速で移動するのにかかる時間との間には、均衡が存在することになる。つまり技術の進化によって、遠距離を高速で移動する速度が変わると、低速で移動するための町並みにも変化が訪れるということだ。
古代における牛が引く時の荷者の速度と、現代における自動車での移動を前提として比較してみると、はたしてどうなるだろうか?これは、地図上で古代からの町と新しい町とを重ねあわせることによって解を導くことが出来る。そして進化がまさに予測可能であったということが明かされるのだ。
このように無生物、生物、工学技術などを串刺しにして対比できることの意味は大きい。生命は動きであり、この動きのデザインをたえず変化させることと定義できるからだ。「ゆく河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず」とはよく言ったものである。
一般に地球上の生命体は、35億年ほど前に始まったとされている。だがこの定義に則ると「生命」の始まりはそれよりもはるかに古く、太陽熱の流れや風の流れといった最初の無生物の系が、進化を続けるデザインを獲得した時と考えることができる。この捉え方によって、生命の概念は生物学から切り離され、意味を拡張して考えることが可能になるのだ。
なんだか、途轍もないものを見てしまったような気がする。目の前の1個のドミノが倒れることによって、パタパタパタと音を立てて、全ての景色が塗り替えられていくような壮観さが本書にはある。生命を生物学から解き放った革命の書。読んだというより、目撃したという感覚の方が近いだろうか。
最後にコンストラクタル法則が成立する範囲についても、明示しておきたい。一見万能にも思えるこの法則が成立するためには、「効率性を追求する」ということが前提条件になってくる。裏を返せば、予測不可な結果を生み出したければ、効率性を無視したふるまいが必要であるということも意味していると思う。これはこれで示唆に富む。
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素晴らしいの一言。生物学やってた身にとって、進化の方向性、無生物の進化の話は衝撃だったよ。
僕ならコンストラクタルをどう応用するかな?まずは組織構造とプログラムかな?
新しい世界が広がった感じで毎日が楽しくなるよ。
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、「良質なポピュラーサイエンスの一冊」として買いです。熱力学のことはまったく分からなくても(極端な話どの章からでも)読み進められます。
著者は『24の専門書と540以上の論文を発表しており、「世界の最も論文が引用されている工学系の学者100人」にも選出。2006年には、熱工学分野のノーベル賞と言われる「ルイコフメダル」も受賞した』人物とのこと、大いに納得しました。
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本書で繰り返し述べられているコンストラクタル法則について、なるほどと感心する部分もあるのだが、あれもコンストラクタル法則、これもコンストラクタル法則と事例が繰り返し紹介されるのには途中から少々食傷気味であった。
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あらゆる物事は「流れ」を最適化する形を作り上げる、
というのが基本コンセプト。
植物の葉脈と川の流れ方とコンデンサーの排熱経路が同じ形なのは全てそのコンセプトに沿っている。
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あまりに捉え方が遠大でプラクティカルなレベルまで消化しきれていない。
「流れ」というレンズで世界を見ることはイノベーティブな切り口の発見につながりそう。
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シックスシグマで我々はより多くのノードと接続するハブの存在がネットワークを効率化することを知った。
この本では、熱力学の法則などの物理法則の元で進化した生物や人間と人間が作った道具は、その効率性の点から、大きさや各種比率において不連続であるということを知る。
その詳細は、「コンストラクタル法則」であるという。
時が経つに連れ、より多くのエネルギーをより効率的に使うようになることも、今までの延長である以上、予言ではなく必然であると筆者はいう。
そうなると、宇宙進出も当然我々の進む道なのだと思う。
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我々人間を含め、自然界に存在するありとあらゆるカタチのデザインは、質量の移動がしやすいものに淘汰されていく。
この明確な主張のもとに、河川や血管の形成、生物進化のプログラムそして、社会の秩序やシステムへの適用が展開される。
著者は「世界の最も論文が引用されている工学系の学者」で熱力学の鬼才とされるデューク大学の教授。著者が主張するコンスタラクタル法則は、非線型力学による散逸構造への解釈と立場を逆にする。既に存在する法則により、自己組織化は流れをより促進する報告に常に再構成され続けるとする。
人間の体格から重心の移動を予測し、ボルトの優勝を言い当てた逸話には速く走れないコンプレックスの解消を感じましたw。 人間がモノを消費し、廃棄するプロセス上での処理や、本書でも試みられている都市間移動においてコントラクタル法則の可能性が検討されるのは大変有効だと思いました。
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400ページ近い本で、かなり読み応えがある。
副題の通り、「万物のデザインを決める新たな物理法則」について説明している。
それは、生物や無機質、はては空港の設計など、大よそ関係が無いような事にも共通性を見出して説明している。
空を飛ぶ、地上を走る、水中を泳ぐと言う3種類の移動手段の進み方に共通点があると言う話を一番面白く読んだ。
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無生物/生物のデザインは流れを良くする方向に進化するという画期的な包括的法則、コンストラクタル法則を述べている。樹状、脈状のデザインは液体が最も流れやすい形で、時とともにより撹拌する効率性を向上させて行くとする。ここであげてある優れた空港のデザインも速く長い移動手法と遅く短い移動手法(少数の高速道路と多数の一般道)の組み合わせで成り立っており、そのバランスが1:1である。それは発達した交通手段すべてに当てはまり、都市の発展も交通機関の技術進歩により大きさが決まって来ているとしている。生物では、心臓の大きさが取り上げられており、ポンプ機能だけなら大きくした方が良いが、その場合は重さが人間の移動能力を損なうとしており、全体最適ではないとする。それは個々の木を見ても同じで、森の機能は水の循環を地球レベルで促進するもので、その構成は大きな木が少数、小さな木が多数で最も効率が良くなるとしている。フラクタルと違う点は予測の可否にある。
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筆者の唱える説は間違っていると思う。
淘汰を受ける構造が、流れに最適な形を取るのは当たり前であり、流れをよくするために淘汰があるのではない。
樹木の構造を予測したくらいで、生物のすべてを論ずることができるように語るのには、強い反感を覚えた。
また各論ではなく、総論に意識がいく物理学者との考え方との違いを改めて感じさせられた。
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原題を「自然のデザイン」という本書は、環境、生物、人工物、組織、文化など、無機・有機問わず、その「流れとかたち」は、マクロの視点からみると、意図や思想が介在した結果ではなく、単一の物理法則がもたらしたものであると提唱する意欲的な書。
森羅万象はすべて、流れを伴った均衡のシステムであり、その中を流れるものをより多く、より遠くへ、効率的に流すようなデザインに変化していくという。都市や経済、階級階層にいたるまですべてを支配するこの理論をもって、未来のかたちを予測することができるという楽しみ方ができる。
とても面白いのだが、こういう斬新な理論にありがちな、諸処への牽制から始まり、もったいぶった語り口で冗長的なので、読んでてたまにイラッとしてしまった。でも物事の見方が変わる良い本です。
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第1章 流れの誕生
第2章 デザインの誕生
第3章 動物の移動
第4章 進化を目撃する
第5章 樹木や森林の背後を見通す
第6章 階層制が支配力を揮う理由
第7章 「遠距離を高速で」と「近距離を低速で」
第8章 学究の世界のデザイン
第9章 黄金比、視覚、認識作用、文化
第10章 歴史のデザイン
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自然界の流路デザインを熱力学から説明しようとする試み。生物、無生物系を問わず、その「傾向」を示しているのは同意できるが、「決定論的」な理論であることの説明には失敗している。黄金比の説明は明らかに間違っているし、他の学問を否定し、差別的な表現等もあり、ちょっと不愉快である。
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デザインとは,進化している現象である,という言に始まり,形を定義するための新たな物理法則として,“Constructal” Lawを提示する.十分に理解するには至っていないが,熱力学第二法則にある抽象性に具体性を与え,あらゆる営みの設計を説明可能と説く.表層的に理解した部分を最適化に落とし込んでみるのも面白そう.