紙の本
初老の舞台俳優がふとした瞬間に
2023/02/01 07:33
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
少年の日の恋を思い出すことによって、過去へと遡っていくかのようです。「私」としか名乗らない語り手に騙されつつ、ラストでは鮮やかに伏線を回収していました。
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ジョン・バンヴィルの最新長編。
過去と現在が有機的に絡まり合い、不思議な空間を作り出している。一歩間違えば生々しい内容だが、その有機的な絡まりのせいで殆ど生々しさは感じない。
『無限』はコミカルさも見え隠れしていたが、こちらは『海に帰る日』を思わせる。
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少年の日の思い出、主人公は友人の美しい母と懇ろになり、思いかけず奔放な大人の女性との関係に溺れる日々。大人になり俳優業を引退した主人公は娘を亡くした経験を持ち、妻との関係も思わしくない。再起に挑戦した映画では、共演者の人気女優が自殺未遂をする。その彼女の提案で娘の死に場所へ旅立つが、それと平行して描かれる、かつての記憶、年上の女性との背徳の日々。さらに自殺未遂をした女優に亡くした娘を重ねることになりえるのか。いにしえの光というタイトルにふさわしく、過去の美しい記憶の光がさすような文章。
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ともかくバンヴィルの装飾的できらびやかな文体が美しい。日本語に移し替えてもその美しさは健在。
物語のプロット自体はいたって普通だが、彼の小説においては全く問題ではない。バンヴィルは恋い焦がれる思春期の青年の心情をほぼそのままに、文章で表現することに成功している。
個人的には彼の最高傑作は海へ帰る日だと思うが、間違いなく本作も秀作以上の出来なのは間違いない。