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リベラルアーツに関わっているとどこかで必ず遭遇することになる有名な「モンティ・ホール問題」。これを触ったことのある人なら「変えた方が良い」の一言で済ませるように見えるところ、1冊の本に深められているのだから凄いです。
ベイズの定理を中心とした条件付き確率の話題が中心のところ、心理学的、哲学的な考察におよび、「『確率』というものの意味的な価値とは何か」について向き合うところに至ります。
適切な(厳密な)問いを立てるところから始まる数学的な態度の大切さ、数学を取り巻く科学全体の存在意義を考えるきっかけとなる良い本です。
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条件付き確率を学ぶとき(高校生時代?)に、先生に問われて間違えた経験がある(そして未だに納得がいっていない)人も多いであろう、モンティホール問題について書かれた1冊。
私はこの問題が割と好きで、たまーに自分で亜種を作って思考実験してみたり、なんでこんなに理解しにくいんだろうと考えてみたりしていて、そんな中でこの本を見つけて、購入。
内容は、この問題がなぜこれだけ有名になったかの経緯、標準的なモンティホール問題の解説に始まり、私自身が考えていた亜種問題そのものを含めた様々な亜種問題の紹介と数学的な検討、更には、人の認知の問題(なぜこの問題はこれほど人が直感的に理解できないのか?)、確率の解釈の問題、といった数学以外の論点についても書かれており、盛りだくさん。
特に様々な亜種の紹介がおもしろい。ちょっと問題設定を変えるだけで、基本形やいくつかの亜種問題についての結果を知っていたとしても、直感ではまるで答えられない結果が出てくる。
正直、本書を読む前は、モンティホール問題の基本的な部分は直感的に理解できていると思っていたのだが、これを読んだせいで、余計に分からなくなった(あるいは分かっていないことに気づかされた)。
必要な数学の知識は高校で習う確率論程度なのでハードルは高くないでしょう。
興味があれば、是非この不思議な世界を体験してみてはいかがでしょうか。
なお、翻訳がややこなれておらず、読みにくい部分がある点は注意。
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モンティ問題についての整理。
初めは確率とは何かから導入し、標準的なモンティ問題へと近づけていく。その後標準的なモンティ問題、応用モンティ問題、最後には心理学の面からも分析してる。読みやすくて面白かった。やや冗長。
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モンティホール問題がこんなに発展性のある話だとは知らなかった。数式は流し読みになってしまったけど、モンティホール問題の変種など面白いこと多々。
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「3枚の扉がある。うち1枚の裏には自動車が、残り2枚の裏にはヤギがいる。挑戦者は自動車の扉を当てれば勝ち。挑戦者が1枚の扉を選択すると、司会者のモンティ・ホールは残りの2枚のうち1枚を開けヤギを見せる。ここで挑戦者は当初の選択を維持するべきか、それとも変えるべきか?」
このMH問題、確率論が直感を裏切る一つの好例としてあちこちで紹介されているが、よもや1冊丸ごとこれを扱う本があるとは知らなかった。著者はアメリカの大学准教授でもちろん専攻は数学。MH問題については、以前読んだ”The Curious Incident of the Dog in the Night-time” (Mark Haddon著、邦訳あり。本書内でも引用されている)で明快な回答があり、個人的にはあれ以上の深掘りができるのだろうかと訝りながら読んだが、第3章でのベイズ推計を用いた詳解はなかなか説得力に富み面白かった。
しかし、数学者らしく説明の繰り返しは煩雑だとばかりに既出の説明は容赦なくスキップされるため、数学に日常的に触れることのない僕には、第4章の一般化と第5章の特殊パターンは正直荷が重かった。
本書の大きなテーマとしては、多数の試行を前提とする確率計算者と、一回性を重視せざるを得ない個別の試行者ではベストの選択が異なるというものだが、これは昨年みすず書房から訳が出た「もうダメかもーー死ぬ確率の統計学」と重なっており、これを読んでいた僕のとってはやや新鮮味には欠けた。しかしロジックを一つ一つ丁寧に追っていく作業自体はなかなかに楽しいものだった。なお揚げ足をとるつもりはないが、数式間違いがあるので注意(P127など)。