紙の本
音楽でいえばコンセプト・アルバムのようなもの
2016/08/25 20:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の村上春樹の短編小説集は、あるテーマに沿ったからちでまとめられている。音楽でいえばコンセプト・アルバムのようなものだと思う。長編小説とは違った味わいがある。この短編小説集は、男女の恋愛における心の闇みたいなものを描いたものが集められている。いくつかのものは、肌寒くなるような怖さを感じた。
紙の本
著者の人間を見つめる眼を通して紡がれた短編集。
2022/10/27 10:23
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「自分の小説にまえがきやあとがきをつけるのがあまり好きでなく」との「まえがき」から始まる短編集。
通勤電車のなかで、毎日一作づつ読み進めていくのが、心地よかった。そして、人生についてよく考えることができる時間をつくることができた。
〇ドライブ・マイ・カー
俳優の家福(かふく)は、ある事情から自家用車の専属運転手を探していた。
二十代の女性ドライバー渡利みさき。
無口で堅実な運転で、その仕事を着実にこなす。
妻を亡くした家福が語っていった秘密とは。
〇イエスタデイ
大田区田園調布生まれで大田区田園調布育ちなのに、ほぼ完璧な関西弁を話す木樽。
「僕」は、早稲田大学文学部二年生の時に、アルバイト先で浪人生にして同級生の彼に会った。
木樽は恋人の栗谷えりかと僕を付き合わせようとする。
〇独立器官
渡会は52歳。これまで結婚したことのない、同棲の経験すらない。麻布のマンションで一人暮らしをつづける美容整形外科医。
何不自由のない生活に、抗いようのない変化が訪れる。
〇シェエラザード
「千夜一夜物語」の王妃シェエラザードのように、彼女は不思議な話を聞かせてくれた。
「十代の頃のことだけど」とある日、彼女は打ち明けた。
「私はときどきよその家に空き巣に入っていたの」
〇木野
木野は夫婦のトラブルをきっかけに、会社を辞めバーを始めた。
店のなまえは「木野」にした。他に適当な名前を思いつけなかったからだ。
〇女のいない男たち
夜中の一時過ぎに電話がかかってきた。
「妻は先週の水曜日に自殺をしました、なにはともあれお知らせしておかなくてはと思って」
その女性は、「僕」の「昔の恋人」だった。
人生とは何か。
財産があれば幸せになれるのか。
よい環境にいれば、幸福なのか。
どんな恵まれた環境にあっても、人は宿命に翻弄される。
だが、その宿命に抗っていく力も持ち合わせている。
著者の人間を見つめる眼を通して紡がれた短編集。
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テーマを持った短編集。
◆ドライブ
それなりに仕事がある俳優・家福。若くてテクニックの高いドライバー・渡利。お互いの暗い背景と、なんとなく波長の合う感じが絶妙に書かれている。
◆イエスタディ
♪昨日は、あしたのおとといで
おとといのあしたや~♪
この意味のない替え歌を歌う男・木樽。田園調布で生まれ育ちながら完璧は関西弁を喋る奇特な男。主人公は関西から出てきて標準語を喋る早大生。木樽は自分の彼女を主人公に差し出しながらも、実はとても繊細なヤツで、勘の良い男。シュールで笑える話かと思いきや、ちょっと物悲しさががる結末。
◆独立
非の打ちどころのないプレイボーイな渡会医師。美容整形医ですご腕を持ち、あとくされない恋愛を楽しみ生きてきた。それが恋煩いでまさかの瀕死となり・・・末期に見える色々なもの。
◆シエラザード
名も知らないセフレ。千夜一夜物語の王妃の名シエラザードの名を何となく付けながらも本当のところは謎の女。主婦で子持ちでさえない容姿。でも相手の心を惹きつける話術があり、全盛はやつめ鰻という不思議な人。読みながらシエラザードの物語にドキドキしてしまった。
◆木野
どの短編集もありそうでないネーミングを付けておきながら、木野と来て、そこがツボだった。ひょんなことからバーを始めることとなった木野。なんとなく暮らしていければいいな・・くらいの感じだったが、営業する以上はお客に影響される事もある。猫がいて2品のその日のメニューがあって、手持ちのLPをかける店。お客の中でも静かに飲みながら読書をしたいという・神田。(かんだとは読まないところが、まんまの感じ)時にはチンピラを追い出してくれたり、何となく不思議な常連。そんな店から離れなくてはならなくなる。世の中から存在を消すように助言されたけれど、やっぱり寂しさがあってか叔母に自分の存在をアピールしてしまう。何故そんなことになったのか、やがてはどうなるのか・・・。小劇場の芝居の様な内容だった。
◆女のいないあなた
「ある日突然、あたなは女のいない男たちになる」
本当にこれは当たり前のようにあるし、女にも言えることだと思う。死別、別れ、もつれ・・・あらゆるサヨナラがあるだろうし、元々異性に縁がない人だっている。自分にも当てはまるし、そう思うとどの短編も他人事ではない感じがした。どれもフェイドアウトするような終わり方をしているとことも、考えさせる余韻みたいなものを残している。この最期の短編に、著者のメッセージが込められているように思えた。
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好きでも嫌いでも、ましてや最近では面白いとも面白くないとも思わなくもない村上春樹作品だけど、絶対、買っちゃう。で、そこそこのスピードで読み終わる。登場人物たちの点々とした心の闇のような部分にふれると、心地よい息苦しさを感じる。なんだかんだいって、誰よりも美しくリズミカルな文章を書くよな、と毎度思う。音楽やお酒や異性を、あんな表現で愛でてみたいものだ。実際やったらドン引きだろうけども。
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《ドライブ・マイ・カー》
「マニュアル・シフトは好きです」と彼女は冷ややかな声で言った。まるで筋金入りの菜食主義者がレタスは食べれるかと質問されたときのように。p21
《イエスタデイ》
何を言っても良い効果は生みそうになかったので、僕は沈黙を守っていた。コーヒー・スプーンを手にとって、その柄の模様を興味深そうに眺めていた。エジプトの古墳の出土品を精査する博物館の学芸員みたいに。p88
栗谷えりか「樹木がたくましく大きくなるには、厳しい冬をくぐり抜けることが必要みたいに。きつも温かく穏やかな気候だと、年輪だってできないでしょう」p93
《独立器官》
渡会医師「紳士とは、払った税金と、寝た女性について多くを語らない人のことです」p128
《シェエラザード》
おれは一人で孤島にいるわけではない、と羽原は思った。そうではなく、おれ自身が孤島なのだ。p176
愛の盗賊、と羽原は思った。まるで無声映画のタイトルみたいだ。p188
《木野》
《女のいない男たち》
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やはり春樹の短編は面白くない。
自分がいま読むべき本ではなかったかもしれない。
しばらく棚の奥にうもれてもらいます。
強いて言うなら「独立器官」が面白かったかな。
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あぁ、あのBARは、ここだったのかぁみたいな作品の微妙な繫がりもあり、面白かった。この話の続きが知りたいっと心残り感にモヤモヤする作品もあったけど、総括すると村上ワールドを楽しめたなぁと思います。
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読める、読めるぞー!
以前まで、僭越ながら村上春樹氏の作品を毛嫌いしていました。
それは処女作「風の歌を聴け」を手に取り、
読書というものを自分のものにした感覚に陥り、
その勘違いのまま「ノルウェイの森」の作品に意気揚々と突入したのですが、
これまたどっぷりの恋愛ものでして、
性描写が多すぎて過去の自分には悪心するほどのものだったので、
「もうこれ以上読まない!」と決意していたのですが、
それからだいぶ経っていたので再度挑戦してみたら、
内面描写の豊富さたるや文学的に美しいと感じました。
これは村上春樹氏にしか書けんものです。
すべての心情にかゆいところに手が届くような表現を多角的視点から取り組んでおられること妙技です。
一方では、回りくどいと批判されるやもしれません。
性描写が多いのではないかと言われるやもしれません。
そんなことはほっといて本作を読むべき。
ひとつの文学作品として面白いです。
本作に限らず世界的音楽を作品に取り込んでいらっしゃる面がありますが、音楽など知らねども大丈夫。
その情緒的世界に引き込まれます。
いい作品に巡り会えたことに感謝いたします。
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アーネスト・ヘミングウェイからとったのね。そっちは読んでないけど。
最初のと最後の話は繋がってるのかと思ったけど、どうなんだろう。
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『木野』が好き。
『ノルウェイの森』のラストに通ずる不穏な静けさ。
この感じを求めて、わたしは小説を読んでいる。
これまでの短編、特に『トニー滝谷』を読み返したくなった。
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「正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世の中にはあるのです。」
(喪失感漂うこの一冊の中でも最も難解でミステリアスな「木野」より。表紙のイラストはこの小説。BAR、柳、猫。)
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なぜか頭にひっかかる言葉を柱として書かれた一連の短編小説集。ドライブ・マイ・カー、木野。
初めからいないわけではなく、去られたり死なれたりで失っている。絶妙にシュールな。
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2021.5再読
ドライブ・マイ・カー △
イエスタデイ ▲
独立器官 △
シェエラザード ▲
木野 ▲
女のいない男たち ×
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村上春樹って死ぬまで青春してるんだろうなぁ。
好きだけど、、、、、、
いつ読んでも、、、、、
うん、ああこうだった感。
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それぞれの理由や制限によって女の人といっしょになれない男たちの短編。
ひさしぶりに、ちょっと前の村上春樹の感覚の小説でした。
切なくたゆたう。
メタファーいっぱい♪