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1891年来日したロシアの皇太子ニコライを、巡査の津田がサーベルで頭を切りつけた大津事件。事件より前のニコライの日本での過ごし方や、事件後の政府高官たちが、津田を死刑にしようと暗躍する様を描くドキュメント小説。
とっても面白かった。
ニコライが来る時に流れたデマが、実は西郷隆盛が生きていて西郷がやって来るのだというのが面白い。ロシアで西郷を見かけたという噂が流れたそうだ。西郷に帰ってきてもらっては困るので、ニコライ(=西郷?)をやっつけなくてはならないと考える輩がいるので、警戒が厳重になったとか。
ニコライは日本滞在を大いに楽しんだそうでその辺も面白い。
最大の読みどころは、松方首相や大臣の西郷従道たちが、津田を死刑にしようとするところ。ニコライは死ななかった(国に帰ると殺されちゃうけどね)ので、謀殺未遂にしかならない。その場合最高で終身刑。それだとロシアに怒られそう(世界最大の陸軍大国だし)なので、死刑にするために、刑法116条の天皇や皇太子に対する場合を適用しようとした。しかし、大審院長児島は日本の皇室にしか当てはまらないとして、政府と闘う。
結果は歴史の教科書に書いてあるけれど、それをただ読むだけと、前後のエピソードを色々読むのでは、だいぶ違うわだなと改めて思った。
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ずいぶん前から積み読になっていて、読み始めるも冒頭で挫折を何回も繰り返しやっと読破!
いや結果、面白かったし、為になった!
この事件、凄い出来事なのに、多分知られていない。こと無き得たから良かったものの、一歩間違えたら歴史が変わってたであろう。
この前に佐木隆三氏の「司法卿 江藤新平」を読んでいたので、裁判についても興味深く読めた。
法律とは、漠然と守らなければならないものという認識しか無かったけど、これを読んで法の何たるかを少し理解できたように思う☺️
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図書館借り出し
日本の転換期に起きた事件
にしてもすごい細かく記録が残ってるものだな。
まるで事件の調書を読んでるみたい。
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明治時代に起こった大津事件に関する小説。
大国ロシアの動向を気にすることで、行政府と司法府とが対立。
両者は近代国家形成期の愛国心を違う観点から共有していたため対立することとなった。
その後の日清戦争〜第一次大戦までの両国の動き、関係者のその後が物悲しい。
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読み切れるだろうか、と挫折前提でページをめくり、気づけばラストまで到着。吉村昭さんの本は毎度そのパターン。
日本史で確かに知ってはいた、大津事件。
それをタイムマシンで遡り、透明人間になってその場にいたかのような気にさせてくれる。
お蔭様で、まるで体験したかのような気持ちに。
艦船に乗り、桜島を眺め、人力車に乗り、琵琶湖を眺め、サーベルが振り下ろされるのを見て、眠れぬ天皇を見て、司法の誇りを感じ、北海道の刑務所の寒さを感じ、上野の小さな墓の前に立つ。
読めてよかった。ニコライの最期も哀しい。